続・宮間快人生誕記念パーティ㉑
水平線にゆっくりを沈んでいく夕日を砂浜に並んで座り、シロさんの肩を抱きながら眺める。お姫様抱っこが終わった後、とりあえずシロさんの要望も叶えておこうということになり、シロさんが希望したシチュエーションを行っていた。
さすがに追いかけっこからのハプニングは難易度が高いので、並んで座って夕日を見る方である。
景色を夕日に切り替えただけなので時間が大きく経過したわけではないのだが、それでも茜色の空と海というのは哀愁のようなものを感じる。
突発的ではあったが、なんだかんだで楽しい海水浴だったと、今日の一日を振りかえ……いやいや、待て待て、違う。
そういえば、海水浴デートに来たわけじゃなくて、誕生日パーティの休憩時間だった!?
「シロさん、流石にそろそろ時間が厳しいのでは?」
「そうですね。これ以上延長するとさすがに文句が出てくるでしょうし、この辺りで切り上げるのがいいでしょうね。それでは快人さん、目を閉じてください。意識を戻しますので」
「あ、はい……ああ、でもその前に……」
そろそろ切り上げようという話になったのだが、その前にやっておくことがある。いや、やはりちゃんと最後まで要望を叶えておく方がいいだろうと、少し体勢を変えつつシロさんの頬に手を添えて……そのまま軽く唇を重ね合わせるようにキスをした。
「……えっと、シチュエーション的にはキスまでだったと思うので、いちおう最後まで」
「快人さん……満点です。快人さんは、私を喜ばせるのが上手いですね」
そういってシロさんは嬉しそうに笑みを浮かべた。多分俺の方から積極的にアプローチをしたのが嬉しいのだろう……なんというか、眩しいほどに綺麗で幸せそうな笑顔で、見ているこちらも幸せな気持ちになった。
今度こそまどろみの中から意識が浮上すると、こちらを見ているシロさんの顔と眠る前に見た休憩室の天井が見えた。
「おはようございます……で、いいんですかね?」
「難しいところですね。実際、快人さんの体は寝ていたわけですし、間違ってはいないと思います。疲労なども合わせて癒しておきましたが、体の調子はどうです?」
「あっ、凄い。かなり体が軽いですね。疲れがスッカリ取れてる感じです」
どうやらシロさんが疲労を取り除いてくれたみたいで、少しの仮眠だったはずだがそれこそぐっすり一晩寝て起きたぐらいに体が元気な気がした。
これから大量のプレゼントを受け取るわけだし、体力や気力が充実してるのはありがたい。
そう思いつつ体を起こして時計を確認すると、休憩が終わるまであと7分ほどだった。
「シロさん、ありがとうございました。おかげでいい気分転換になりました」
「それならよかったです。私もとても幸せでしたし、満足です」
休憩に入ったばかりの時は、不公平だとやや不満げだったシロさんだが、いまはすっかり幸せそうな様子であり、表情こそ大きく変化はしていないものの、いつも以上に口角が上がってるので俺でなくても上機嫌だと気付きそうなぐらいには楽しそうだった。
「そういえば、この後って俺は平行世界を利用する形でプレゼントを受け取るんですよね」
「はい。快人さんがプレゼントを受け取り終わったら、最後の余興に入る予定です」
「ああ、そういえばアリスが解説で、神界、魔界、異世界、人界のそれぞれが考えた余興をするって言ってましたね。残りは人界の代表が考えた余興ですっけ……なにするんですか?」
「三世界と異世界、それぞれ代表する珍味を食べ比べてグランプリを決めるような形式らしいです」
「へぇ、それはまた楽しそうですね」
要はご当地食材グランプリみたいな感じのことをやるらしい。どんな形式になるかは分からないが、それはそれで楽しそうだ。
俺の知らない食材とかも多いだろうし、食べたことが無いようなものにも巡り合えるかもしれないと考えると非常に楽しみである。
まぁ、その前に大量のプレゼントを受け取るんだが……。
「そういえば、また後で休憩がある的なことも言ってましたが、次の休憩もシロさんが一緒なんですか?」
「いえ、次はリリアの番です」
「リリアさんですか?」
「はい。リリアも私と同じく恋人のイチャイチャを堪能できていなかったので……しかしそうですね。私はとても幸せな時間を過ごせましたし、リリアの時も有意義な時間になるよう『力を貸しましょう』」
……う~ん、おかしいな? シロさんは間違いなく善意100%で言ってるし、別にシロさんが協力してくれるからといっておかしなことになるわけでは無い筈なんだけど……なんでリリアさんが、胃痛になってるような光景が思い浮かぶのだろうか?
シリアス先輩「余計なことするな! ステイ!! ステイだ!! ……それはそうと、マキナはなにしてるんだ?」
マキナ「うん? 和三盆作ってるんだよ」
シリアス先輩「……なんでお前は私が変化するたびに食おうとするんだよ!?」




