続・宮間快人生誕記念パーティ⑳
まず根本的な話をしよう。かつて異世界に来たばかりの頃ならばいざ知らず、俺もいろいろ人生経験を積み複数の恋人もできて、恋愛面での経験値も溜まっている。
それこそお姫様だっこだって何度もしたことはあるし、以前の遊園地のアトラクションでシロさんをお姫様抱っこしたこともあった。
だが、それだけの経験があってなお、今回はかなり心して臨まねばならないだろう。まずそもそも水着姿の相手をお姫様抱っこするということは、俺の手や腕が触れる部分はもうほぼ確実に素肌である。
いまさら素肌に触れる程度でなにをそこまで身構えるのかという話だが……シロさんはなんというか少し次元が違うというか……ともかく凄いのだ。
神様というのは細部に至るまで至高なのかとそう感じるほど、肌触りといい弾力といい凄まじい。なんならシロさんと手を繋いでいるだけでも、なんというか握ってる手が気持ちがいいような感覚がするぐらいには、シロさんは凄まじいのである。
「そ、それじゃあ、お姫様抱っこしますね」
「はい。よろしくお願いします」
そんなわけでそれなりに緊張しつつ、水着姿をシロさんをお姫様抱っこするのだが……うわっ、分かってはいたが肌はスベスベな上に指が吸い付くように柔らかいし、それでいて確かに温もりや弾力もある。
手先だけではなく、腕にシロさんの背が触れ俺の胸元にもシロさんの体が密着すると……得も言われぬ心地よさというか、触れている部分から蕩けてしまいそうな心地よさだった。
そしてお姫様抱っこというシチュエーションだと、必然的にシロさんの顔も近くなる。本当に神がかった美貌というか、改めて見ても絶世の美女という言葉がピッタリくる美しさだ。
「いいですよ。その調子で、いっぱい褒めてください。褒めると私が喜びますし、口に出すともっと喜びます」
「いや、実際凄い美人だと思いますし、そんなシロさんをこうして抱きかかえられているのは、幸せだと実感しますね」
「つまり……『シロさんは俺のもの』と言いたいわけですね」
「え? ちょっ、なんでそんな話に……」
「つまり、自分のものだと主張するように私をもっと強く抱きしめたいというわけですね?」
「……あ、はい。じゃあ、もうちょっと強く抱き抱えても大丈夫でしょうか?」
「構いません、許します」
いきなり変な流れになったと思ったら、遠回しにもっと胸元に密着するようにしてくれという要望を伝えているのだと少しして理解できたので、いちおう許可を取ってから要望通りにギュッと腕に力を込める。
シロさんの豊満な胸が俺の胸にあたり形を変えるのが目に映り、思わずそちらに視線が向いてしまう。
お姫様抱っこ……仰向けに近い状態でもまったく形が崩れたりせず、しかして触れると信じられないほどに柔らかい上にちゃんと弾力もあるという。本当に全身がチート級と言えるような方だと……。
「遠慮せずに触れてもいいのですよ? 快人さんには心の赴くままに触れ、堪能する権利もありますよ」
「……い、いや、さすがにそれはいろいろ歯止めが効かなくなるというか……」
正直物凄く揺れたというか、ガツンと頭をハンマーで殴られるような衝撃のある言葉だった。実際お姫様抱っこという形であれば、本当に手を少し動かせばシロさんの胸に触れることはできるだろう。
思わず生唾を飲んでしまいそうなほどに魅力的な誘いではあるのだが、さすがにいまは駄目だ。本当に歯止めが効かなくなってしまう可能性が高い。
これが、シロさんとふたりきりでお泊りデートとかしてる状況ならともかく、いまは俺の誕生日パーティの途中の休憩……ここは理性を総動員して、頭に思い浮かぶ煩悩を振り払う。
「……ほほぅ」
「……シロさん?」
俺が必死に煩悩と戦っていると、シロさんはなにやら興味深そうな様子で呟いて頷いた。
「なるほど、なるほど、ふたりきりでお泊りデートというシチュエーションであれば話は変わると……それはとても参考になる意見ですね」
「あ、あくまで例え的な話ではありますが……と、ともかくいまは……」
「そうですね。いまはこれで、我慢しておくことにしましょう」
「これ――んっ!?」
思わせぶりに呟いたあとで、シロさんは不意打ち気味に顔を近づけて来て俺に口付けをした……だけではなく、そのままスッと俺の口の中に舌を入れて、歯を少し撫でる様に動かした後で唇を離した。
本当に流れるように行われたため一瞬ではあったが、頭の奥まで痺れるような心地よい快感が突き抜けてきて、唖然とする俺に対し、シロさんは珍しく表情を変えて楽しそうに笑った。
「……次の機会を楽しみにしていますね」
なんというか、もう、恋愛関連ではシロさんには敵わないかもしれないと、そんな風に感じた瞬間だった。
シリアス先輩(砂糖の砂浜)「……(ぐあぁぁぁぁ!? え? うそ、この状態でもダメージあるの!? というか、いままで甘味状態だとほぼ意識なかったのに、この状態だとあるのか!! なんでぇ!?)」
???「なんか、砂糖の砂浜が脈打ってません?」
マキナ「前にシリアス先輩に付け加えた、寝てても愛しい我が子の様子が見えるやつ……あれ気絶とかにも適応されるから、我が子のイチャラブ見て悶えてるんじゃない?」
???「ナチュラルに逃げ道全部潰してるじゃないっすか……」




