続・宮間快人生誕記念パーティ⑲
シロさんの方からストレートに要望を伝えてくれたこともあるが、ここが一種の夢の中ということもあって俺の方にも行動しやすさがあった。
しばらくシロさんと抱き合ったりキスをしたあとで砂浜に戻る。全然泳いだりはしていない気もするが、海に入ってリフレッシュはできたし問題はない。
「ちなみにシロさんは、この後どうするとか要望はありますか?」
「いくつかありますね。例えば……」
シロさんがそういうと、俺の頭の中にやけに鮮明なイメージが浮かび上がってくる。なにか恋愛映画のワンシーンのようで、砂浜で追いかけっこをしているカップルが見える。
そして逃げる女性に男性が追い付くと、ふたりは足をもつらせて砂浜に倒れ込んでしまい、男性が女性を押し倒すような形になった。
そのままふたりは無言で見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけて……という内容の映像だ。
「こういうのをやってみたいです」
「いや、確かにドラマチックな展開ではありますけど、やろうと思って実行するのは難しすぎませんか?」
自然な流れでこうなるならともかく、これをしようと事前に考えて実行すると絶対ギクシャクするし、倒れ込むタイミングとかを図りながらやることになるので難易度は高い。
というか、ある種のハプニングに分類される展開を意図して実行するのは難しいとは思う。
「なるほど……ではこちらは?」
俺の言葉にシロさんが納得した様子で頷くと、再び俺の頭にイメージ映像のようなものが流れ込んできた。夕日に照らされる砂浜で並んで座って夕日を眺めるカップル、男性がおもむろに女性の肩を抱き寄せると、女性は一瞬驚いた表情を浮かべつつも男性にもたれかかる。
そして両者は見つめ合い、夕日に照らされる中でキスを……という感じの映像だった。
「……なんか、恋愛映画っぽい雰囲気のが多いですね。シロさん、恋愛映画とか見たんですか?」
「恋人同士のイチャイチャに関して学ぶ中で、恋愛映画も複数見ましたね。それに他の異世界のカップルの定番のイチャイチャイベントなども調べました……が、こちらは中々応用が難しいです」
「え? やっぱ異世界となると、こっちからじゃ想像ができないようなことをしたりするんですか?」
「異世界によるとは思うのですが、生態由来の恋愛行動なども多かったですね。互いに生体電波を響かせ合うことがキスに該当していたり、体を融合させてなんてのもありました」
「それはまた、なんとも……いや、その世界の人たちにとっては当たり前なのかもしれませんが、確かにそういうのを実行するのは抵抗がありますね」
実際に他の世界でそういうのがあると知っており、なおかつシロさんならやろうと思えばやれるのだろうが……体を物理的に融合させたり云々を実際に実行したとしても、それは俺にとって奇妙な体験であり恋人同士のイチャイチャとは認識しないだろう。
「なかなか難しいものです。逆に快人さんは例えば、恋愛映画のシチュエーションなどを参考にして、実際に私とやってみたいことなどはありますか?」
「むっ、俺の方ですか……う~ん、そうですね」
いざそう聞かれてみると結構難しい。海にカップルできていると仮定して、恋人らしくかつやってみたいこと……カップル的なことと言えば、一緒に貝殻を探したり、花火をしたりとか……レジャー的なことは思いつくが、イチャイチャかと言われるとどうだろうか?
それならばさっきシロさんがイメージを送ってきた、夕日を見ながら肩を抱いてキスとかの方がそれっぽい気もする。
でも意外と、この場ですぐにできることってのも難しいよなぁ……シロさんをお姫様抱っこしたりとかはできそうだが、別に海でやる必要は無いし、水着の状態だと刺激が強いので俺の方が変に意識してしまいそうな気がする。
いや、確かに美人でプロポーションもよく、水着状態で肌の露出も多いシロさんをお姫様抱っこしたとしたら、いろいろ密着が凄そうだし……それはそれでいいなぁと思わないわけではないが、流石に気恥ずかしさが……。
「ほぅ……」
「あっ……」
興味深そうなシロさんの声を聴いて己の失態を悟る。というか、もしかするとシロさんはすべて計算して俺に話を振った可能性もある。
俺の方がどんな風にシロさんをイチャイチャしたいかを考えさせ、それを実行するために……。
「つまり、快人さんは水着姿の私を抱き上げて腕の中に抱え込みたいと、そういうことですね」
「そんな話でしたっけ!?」
「仕方ありませんね。快人さんは私の恋人なので、当然それをする権利はあります。快人さんの要望とあれば私も応えないわけにはいきませんし、しっかりと堪能してもらって構いませんよ」
「な、なんかもうほぼ確定の流れに……って、シロさん!? シースルーの上着が無くなってるんですが!?」
「快人さんが肌の密着が多い方が嬉しいと考えていたので、要望に応えました」
いや、肌の密着が多い時と気恥ずかしい的なことを考えていたような……いやもうだめだこれ、完全に実行する感じになってる!?
マキナ「う~ん、もうほぼエッチなことする前振りのような気さえするけど、さすがに休憩時間が別の意味の休憩になったら止めるけど、いまのところはセーフかな」
???「あれ? シリアス先輩は?」
マキナ「そこで、砂糖の砂浜になってるよ」
???「……白い砂浜ってそういう……」




