続・宮間快人生誕記念パーティ⑱
まさかの夢の中での海水浴となったわけだが、海に浸かるとなんとも心地よい。
「……というか全然夢の中って感じがしませんね。実際に普通に海に入ってるみたいな感覚です」
「適切な表現が他になく夢の中と表現していますが、実際は意識を引っ張ってきて感覚なども有効にしているので、現実とそう変わりません。快人さんがイメージしやすい表現で言うならフルダイブ型のVRをプレイしているようなものかと」
「なるほど……」
確かにそれなら納得というか、一番しっくりくる表現かもしれない。現実の肉体は横になっていて意識が無く、仮想世界の中で五感もあるという状況はフルダイブ型VRと表現して間違いないだろう。
まぁ、本当に細かいことを言えばシロさんの力で作られた空間なので、仮想現実と呼ぶのが正しいかどうかは分からないのだが……まぁ、シロさんの言う通り夢の中という表現でいいとは思う。
「ああ、でも海に浸かると気持ちがいいというか、パーティではしっかりした服を着てたのもあって開放感がありますね」
「快人さんの気分転換になったならよかったです。ところで快人さん、そろそろイチャイチャイベントが発生してもいいのでは?」
「……イベントって……ぐ、具体的にはなにを?」
気分転換という意味では最高であり、雰囲気自体は緩めでワイワイしていたとしてもパーティから海水浴となると開放感が凄くて、実際にかなり楽しい気分だ。
そう思っていると、シロさんが唐突に……いや、最初から一貫してシロさんの目的はそれなので、唐突ということもないが、恋人らしいイベントの発生を求めてきた。
もちろん海水浴というシチュエーションで思い浮かぶ恋人らしい行為というのはいくつもあるが、過去の経験から考えるにこうやって切り出してくる場合、シロさんの方にはある程度具体的な要望があるはずだ。
「もちろん海水浴に来た恋人同士と考えれば、いろいろと行えることもあります。ただし、残念ながら時間は無限ではありません。無限に引き延ばせるとはいっても、長くなればクロだとか地球神だとか辺りが文句を言ってくるのは間違いないので、じっくりたっぷりとはいきません」
「ああ、マキナさんとかその辺には時間の操作も及ばないでしょうし、確かに長くなると文句を言ってくるかもしれませんね」
特にマキナさんとかは、最初のシロさんじゃないが「不公平だ」とか主張して俺とふたりで過ごす時間を求めてきそうな気もする。
そうなると本当にいつパーティに戻れるんだというレベルで時間がかかりそうだし、確かに時間を引き延ばせるといっても限度があるのだろう。
クロやマキナさん……他にもアリスやカナーリスさんとかもかな? ともかくそういった面子が「さすがに長すぎる」と判断する前に切り上げる必要はあるのだろう。逆に考えれば、ある程度であればそれが俺の休憩になるのならと見逃してくれる可能性も高いという感じで、シロさんはそのギリギリを攻めているのかもしれない。
「というわけで、あまり回りくどいことはできませんし、そういったことはまたふたりで海水浴に行った際に行いましょう。というわけで快人さん、私はハグがしたいのでねっとりたっぷりお願いします」
「なんて真っすぐな要望……いっそ清々しさを感じるぐらいです」
どうやら回りくどい要望などはせずに、ストレートにやりたいことをするつもりらしく、シロさんはストレートにハグをして欲しいと伝えてきた。
もちろん断る理由などは無く、胸辺りまで海に浸かっている状態でシロさんを正面から抱きしめた。
なんというか、海に入った状態で抱きしめるのは普通とはまた少し違った感覚だ。なんと表現すればいいか密着している部分は火照るように暑いのに、それ以外の部分は海水である程度冷やされていて、温もりとひんやりした感覚を同時に味わっているようだった。
そして互いに水着であり、シロさんがシースルーの上着を着ているとはいえ抱き合った感触はほぼ素肌と言っていいレベルであり、ドキドキ感が凄い……というか物凄く抱き心地がよくて、結構強めに抱きしめてしまっているが大丈夫だろうか?
「まったく問題はありませんよ。全力でギュッとしてくれても構いませんが?」
「まぁ、実際に俺の力だと全力で抱きしめたとしても問題はなさそうですね。ただ実際に全力で抱きしめると、そっちに意識が行ってしまいそうですし……なんと言えばいいか、いまこうしてシロさんと密着している感覚をちゃんと味わいたいというか……表現が難しいですね」
「なるほど、ではしっかり堪能してください。私も快人さんとのハグを堪能しますので、ねっとりたっぷりでお願いします」
いや実際こうして抱きしめてるだけで凄く気持ちがいいというか、柔らかいのにハリがあって、本当に癖になってしまいそうな抱き心地である。
「快人さん、とてもいいシチュエーションです」
「え? ええ、そうですね」
「ここは私の口を塞ぐべき場面では?」
「あ、あはは……なるほど、確かに……そうかもしれませんね」
海の中で正面から抱き合ってしっかり密着している状態、なるほど確かに恋人らしいシチュエーションだし、正面から抱きしめている状態とあってはシロさんの言う通り、もう一段から発展してもおかしくは無いだろう。
シロさんの要望を聞いた俺は、本当に目と鼻の先にあったシロさんの顔に近づき、唇を重ねた。
シリアス先輩「ぐあぁぁぁ!? いちゃついてる、滅茶苦茶いちゃついてる……も、もう十分だろう! たっぷりいちゃついただろ! なぁ、そうだろ、マキナ? もう時間過ぎてるんじゃない? 止めに入るべきじゃない?」
マキナ「いや、まだ全然セーフ。そもそもまだ本来の30分も経過してないし、私は延長も1時間までなら許容するつもりだし」
シリアス先輩「なんでこんな時だけ無駄に寛容なんだよ!?」




