続・宮間快人生誕記念パーティ⑯
隠し芸大会も終了し、アリスが宣言した通りにここか休憩となる。30分間なので、しっかり気持ちをリフレッシュしたいところだ。
『それでは、先ほどお伝えした通り30分の休憩となります。皆さんそのままで、5分後に各部屋に転送されますので、仮に誰かと同室がいい場合は心の中で思い浮かべてください。相手と一致すれば同室に転送されます。なので、5分の間に同室で休憩する方は相談しておいてくださいね』
ああなるほど、例えばリリアさんとかはルナさんやジークさんと一緒の部屋で休憩するほうがよさそうだし、重信さんとハンナさんのように夫婦は同室を希望するだろう。
なので5分の間にそれを話し合って頭に思い浮かべれば、その通りの部屋割りになるわけか……う~ん、俺はとりあえずひとりでいいかな、のんびり休憩するとしよう。
そんなことを考えつつ5分待つと、景色がブレて広い高級ホテルの一室のような部屋に転移した。なかなかよさそうな部屋だと、そんなことを考えつつ視線を動かし……ある一点を見て硬直した。
「……あれ? えっと……なんでいるんですか、シロさん?」
振り向いた俺の視線の先には、さも当然といった表情で佇むシロさんの姿があった。あれ? おかしいな、俺は確かにひとりで休憩しようと思い浮かべていたはずであり、シロさんと同室になることは無い筈だが……となるとこれは、シロさんの方がこちらに来たということだろう。
「大変な不公平が発生したので、その調整です」
「……不公平?」
話の意図が分からずに首をかしげると、シロさんは軽く頷いて不公平について説明してくれた。
「はい。快人さんにプレゼントに渡す際に恋人はなにか特別なことをする。その流れが途中から発生したせいで、最初にプレゼントを渡した私はなにもできていません。これは、とても不公平です」
「……あ、あぁ、なるほど……」
シロさんの言わんとすることは理解できた。確かに、なぜそういう流れになったのかは分からないが、途中から恋人は少し特別なことをするという感じになっていた。いや、クロやジークさんは特にそれらしいことをしていなかったので、絶対というわけではないのだがシロさんが不満を持つのは、いままでの経験から理解できた。
……クロに関してはプレゼントの時はともかくとして、ゲーム大会で優勝した時に頬にキスしてきたし、シロさん的にはその辺りも不満なのかもしれない。
「……えっと、つまり、シロさんの要望としては?」
「30分の休憩で、恋人らしいいちゃいちゃを行いつつ、快人さんもしっかりと休憩を行えることを望みます」
「要するに、シロさんは俺の休憩室で一緒に30分過ごすってことですかね?」
「はい」
……何か問題があるかと言われれば、別になにも問題はない。当然のことだが恋人であるシロさんと一緒に過ごすのが嫌なわけでもない。
ただひとつ気になるのは、恋人らしいことをしつつ休憩といういのは、どうするのだろうか? 少なくとも今のシロさんの発言によるところの休憩が、卑猥な意味などではなくある程度精神的な疲れもある俺のリラックスも重要視しているというのは理解できるし、そうなるとなにをするのがいいのだろうか?
「シロさんと一緒に休憩するのは全く問題ないですし、むしろ嬉しいぐらいですが……恋人らしいことをしつつ休憩ってどんな感じになるんでしょう? シロさんの方に、こうしたいって要望はありますか?」
「安心してください。その辺りはしっかりと考えてきています。快人さんが休憩しつつ、私も快人さんと恋人らしいことを出来る案を用意してきました」
俺の疑問にシロさんは力強く頷いたあとで、部屋の中にあった大きめのソファーの端に座り、自分の腿をポンポンと叩く。
「というわけで、こちらにどうぞ」
「ああ、膝枕をしてくれるってことですね」
「はい。それなら快人さんも横になって休めますし、恋人らしいイベントとして十分です」
確かにそれなら俺の休憩にもなりつつ、シロさんのイチャイチャしたいという要望にも応えられる最適な方法かもしれない。
幸いここはふたりきりの休憩室なわけだし、俺の方も気恥ずかしさとかはあまりないので素直に甘えやすい環境でもある。
「それじゃあ、せっかくなのでお言葉に甘えて、失礼しますね」
「はい」
シロさんの提案を受け入れた俺は、ソファーに移動して靴を脱いでから横になり、シロさんの腿に頭を乗せる。柔らかくほのかな温もりが心地よく、視線をあげれば少しだけ口角をあげているシロさんの顔も見えるというとてもいいシチュエーションであり、寝心地もよくてなんとも気持ちがいい。
「仮眠しても構いませんよ?」
「それは魅力的ですね。実際気持ちよくて寝てしまいそうですし」
「時間はいくらでも延長できるので、気にしなくて大丈夫です」
「なるほど、それじゃあ、少しだけ……」
確かに30分とはいっても、シロさんであれば時間の操作もお手のものだしいくらでも伸ばすことはできるだろう。それなら本当に少し寝てしまってもいいかもしれない。
シロさんの膝枕がなんとも心地よくて、寝ていいと分かったら急速に眠気が湧いてきた。
シリアス先輩「恐ろしいこと言ってる……いくらでも延長できるとか、とてつもなく恐ろしいこと言ってるし……なんなら快人の方もふたりきりだから、割と気楽にいちゃついてる気がする……危険な流れだ」




