続・宮間快人生誕記念パーティ⑪
自分がプレゼントを渡す際に快人と恋人らしいやり取りをしなかったのが不満だと主張するシャローヴァナルに対して、アリスがどこか呆れたような表情で告げる。
「いや、別にそんなに気にすることですか? いちゃつきたいなら、パーティが終わった後とかでも別に自由にすればいいじゃないっすか」
「貴女は存分にいちゃついたのでそういう感想が出るのかもしれませんが……」
「いちゃついてないっすけど!? むしろ私がなんかするというか、された側なんですけど!?」
「羨ましい以外の感想は出てきませんし……避けなかったことや、そもそも貴女なら事前に察知して阻止も可能だったことなどに関して追求すべきですか?」
「…………ま、まぁ、シャローヴァナル様の意見も一考するべきではあるのかもしれませんね」
正直シャローヴァナルは強かった。この場にいる中で、現実的に言ってシャローヴァナルに文句を言える存在は限られる。
その上でマキナはむしろシャローヴァナルに賛成、クロムエイナもアリスも窘めようにも、確かに自分たちはソレらしいことを体験しているので、そこを突かれてしまうと弱い。
するとそのタイミングで、ここまで沈黙していたカナーリスが口を開く。
「う~ん、いや話は分かりますし、不公平だと感じるシャローヴァナルの気持ちも理解できないわけでは無いですが……それで、結局どうするんですか? もう一度プレゼントを渡すとか、過去に戻って何かするとか、いくらでも方法はありますが……」
「そうですね。そこに関して意見が欲しいところです。ずばり、私とリリアが快人さんといちゃつくためにどうすべきか、それを緊急会議の議題とします」
「いや、もう別に好きにしてくれればいいんすけど……というか、この時間停止の除外にカイトさん含んでいちゃついてきたらよかったじゃないですか……」
どこか重々しい空気を出しながら告げるシャローヴァナルに対して、アリスが心底興味無さげな表情で呟く。シャローヴァナルであれば大抵の方法は実行可能であろうし、いちゃつきたいのであれば勝手にやってくれと、そんな思いだった。
とりあえずいま必要なのはシャローヴァナルを納得させられる提案だと、そういう空気が会議の場に流れ始めると、そこでマキナと話していたイレクトローネが手を挙げた。
『当機はどちらかと言えば部外者ではあるが、提案しても構わないだろうか?』
「構いません」
『では、確認を出力……《最初に確認したいのは、シャローヴァナルは別にプレゼントをもう一回渡したいとか、必ずしもプレゼントを渡すシチュエーションに拘ってるわけじゃなくて、自分たちを差し置いて他の恋人たちがそれっぽいことをしたのが不満であって、快人様の誕生日パーティってシチュエーションでそれっぽいことが出来ればいいんだよね?》……解答を求める』
「ええ、その通りです」
イレクトローネの言葉にシャローヴァナルが頷くと、イレクトローネも同様に一度頷いてから話を続ける。
『では改めて提案を出力……《なら、休憩って形はどうかな? パーティ開始からそれなりに時間は経ってるし、プレゼントを受け取るタイミングを選べたり飲食もできるとはいえ、主賓として席に座ったままの快人様も疲れがあると思うんだ。だから15分とか30分とか別室で休める時間を作って、そこでシャローヴァナルたちが一緒に過ごせば、快人様の気分転換にもなりつつシャローヴァナルたちの要望も満たせるんじゃないかな? 休憩は何回かに分けてもいいわけだし、それなら複数人でも大丈夫》……いかがだろうか?』
「……貴女は大変素晴らしい神なので、今後も定期的にトリニィアに来ることを許可します」
『!?』
イレクトローネの提案はある意味最適ともいえた。確かに、快人はまだまだ多くのプレゼントを受け取る必要があるので、どこかしらのタイミングで休憩はあったほうがいい。
その上で別室で休めるようにして、そこでシャローヴァナルなりリリアなりが一緒に過ごす。快人にとっては気を許せる恋人が一緒でリラックスしやすく、シャローヴァナルとしてもそれなりの時間快人とふたりきりで過ごせるというシチュエーションは美味しい。
ついでに畏縮気味のリリアにしてみても、他の人たちの注目を集めず快人とふたりきりというシチュエーションなら安心できる。
快人にとっても利点が大きいので、クロムエイナやアリスが反対する理由もないと、実に的確な提案だった。シャローヴァナルは非常に満足そうな様子で頷き、それによってこの提案はほぼ可決と言える状態になった。
なお的確な提案をしたイレクトローネは、突如降って湧いた望外の報酬に、今日一番の驚愕の表情を浮かべていた。
シリアス先輩「イチャラブ確定に震えが止まらないが、同時に……大丈夫これ? 覚醒のバーサークゴリラにならない?」




