続・宮間快人生誕記念パーティ⑧
快人の誕生日パーティの会場では、隠し芸などでの盛り上がりもあったが、もちろんそれだけではなく普通に歓談している参加者も多い。
そして、広い会場に多くの参加者……特に今回は、快人と知り合いであれば連絡先を交換していないような者も含めて呼ばれているので、意外な組み合わせが巡り合うこともあった。
「……」
「……」
会場の一角で、両者ともになんとも言えない複雑で苦虫を噛み潰したような表情で向かい合う二体の魔族が居た。
片方は快人の家に住む家族の一員であり、アニマの補佐などを中心に精力的に働いている猫に近い姿の獣人型魔族……キャラウェイ。
もう片方はどこか荒々しさを感じるパンクスタイルの服装に、赤銅のような色合いの髪と狼のような耳と尻尾が特徴的な犬……もとい狼のような獣人型魔族……リュコリシアン。
かつては互いに魔界で隣接した縄張りをもつライバル同士であり、久々の再会ともいえる状態だった。
「……来てたんだ、馬鹿犬」
「……私も運が無いな、寄りにも寄って馬鹿猫と遭遇してしまうとは……」
「こっちのセリフなんだけど……まさか、ミヤマ様と知り合いだったなんて……」
「軽く挨拶した程度の間柄ではあるがな……」
かつて幾度となく衝突し合った相手ということもあって、なかなかに険悪な空気が流れており、キャラウェイ、リュコリシアン共に視線は鋭い。
「フゥゥゥ……」
「グルルル……」
両者ともに無意識に威嚇し合うような声が口から出たが……少しするとほぼ同時にため息を吐いた。
「……場所が場所だからね、喧嘩は止めとこう」
「……ああ、さすがにこんなところで喧嘩しては迷惑だからな」
かつてのライバル同士であり、互いに互いを「嫌い」と称してはいるものの……実際のところこのふたりはそこまで険悪な仲というわけでは無く、互いに互いを認め合っている部分もある。
今回も快人の誕生日パーティの会場で喧嘩をするのは、快人や周囲に迷惑だと判断して互いに矛を収める程度にはしっかりと常識もあった。
「……縄張りの件に関しては、感謝してる」
「馬鹿馬鹿しい、アレは私が自分の支配圏を広げたくてやっただけだ。間違っても馬鹿な猫のためではない」
「はいはい、それならそういうことにしとくよ」
あくまで自分のためにやったことであり、決してキャラウェイの同族たちを助けようと思っての行動ではないと告げるリュコリシアンに対し、キャラウェイは苦笑を浮かべる。
「……以前のような立ち位置に戻る気は無いのか?」
「うん。あの件でハッキリと自覚したけど、私って自分がトップに立つのには向いてないんだよ。あの時もなんだかんだで無理してたなぁって、いまになって考えればよく分かるよ。無理して張りつめて、そのストレスを権力欲みたいな形で発散してた。いまの立場の方が、ノビノビやれてて気持ちが楽だし楽しいよ」
「……そうか」
快人の部下……家族として、アニマの補佐をするようになってから自覚したことではあるが、キャラウェイは己の気質が補佐向けだと感じていた。
以前自分自身が子爵級高位魔族としてそれなりに多くの配下を持っていたりした際には、常に張りつめていて余裕が無く視野も酷く狭くなっていたといまになって見ればよく分かった。
対して誰かの補佐としてサポートをする際には、いろいろ細かな部分にも気付けるし、性格的にも合っていると実感していた。
「まぁ、お前はいろいろ細かなことを考えすぎる性質だったからな」
「リュコリシアンは私と比べて上手くやってるよね~一匹狼気質だと思ってたけど、意外とトップに向いてるのかな?」
「私の場合は割り切っているだけだ。私がアレコレ気を回す気は無い。私の背中についてきたいやつだけが、勝手についてくればいいとな」
「う~ん、戦王様タイプって感じかな?」
「いや、戦王様は粗雑に見えて気配りも上手いタイプだとは思う。配下の面倒見もよく、慕われている。私などとは比べるまでもなく、他者の上に立つのが相応しいお方だ。その辺りは流石王と呼ばれるだけのことはある」
リュコリシアンの言う通り、メギドは荒々しく雑なように見えて頭もに非常にいい。無駄な手間や周りくどい言い回しを嫌うので、あえて単純な行動を取ることが多いが、考えるべきところは考えている。
そして、あくまで頭に「気に入った相手に対してのみ」という括りは付くが、面倒見もいいタイプである。戦王配下たちに関しては、下っ端でも分け隔てなく戦闘の指導を行っており、なんだかんだで配下には非常に慕われている。
「なるほど……なにせよ、いろいろ考え混んじゃうタイプの私には向かないなぁ」
「お前は奔放なようでアレコレ気を回しすぎるところがあるからな……確かに、アレもコレもやろうとしていては息も詰まるだろうさ。そういう意味では、カイトに仕えている現状はある意味では天職と言えるのかもしれないな」
「うん。毎日すごく楽しくやらせてもらってるよ」
「そうか、まぁ、それならいいさ……また機会があれば叩きのめしに行ってやるから、のんびり首でも洗っていろ」
「いまは私の方が強いけどね~」
「いまだけは、な……」
「これから先も、だよ……」
「……」
「……」
互いに無言で睨み合った後で、ほぼ同時にフイッと顔を逸らす。
「……相変わらず腹の立つ奴だ」
「……それも、こっちのセリフだよ」
シリアス先輩「ああ、そういえばハーモニックシンフォニーで知り合ってはいたけど、連絡先は交換してなかったから船上パーティには居なかったのか……なんだかんだで仲良さそう」
???「まぁ、悪友って感じの関係性ではありますね」
シリアス先輩「そうだな……むっ、ぐっ、な、なんか体が勝手に……」
???「うん?」
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「……さぁ、諸君、始めよう。次回、イチャラブ確定だ!(ふぁっ!? また口が勝手に!?)」
???「……イチャラブ限定で、次の展開を決定できるようになったんすか……」




