続・宮間快人生誕記念パーティ⑥
ブロッサムさんの隠し芸を見終わった後で、再びガラポン抽選機を回す。
『ジークリンデ』
おっ、これは、フェイトさんに続いて恋人が連続した形でジークさんだ。そして程なくしてアインさんに連れられてジークさんがやってくる。
「こんにちは、カイトさん。誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございます。ジークさんはパーティはどうですか? 楽しめてますか?」
「ええ、幸いというかなんというか、大きなトラブルもなく食事や出し物などを楽しませてもらっています。リリは、相変わらず大変そうですが……」
「いまも、審査員してますもんね。いや、でも心なしかいまは結構リラックスしてるようにも見えますね」
「たぶん、審査員をしてる間は高名な方に声をかけられたり、立場の高い方に話しかけられたりという事態が無いからではないでしょうか?」
「ああ、なるほど……」
言われてみれば、リリアさん的にはむしろ審査員をしている間は割と気が楽なのかもしれない。一緒に審査員席に居るのも、リリアさんと仲のいいクロノアさんに、社交的なクロ、俺の家に住んでてリリアさんと話す機会も多いカナーリスさんという形なので、リリアさんにしてみれば話しやすい相手が集まっている感じがする。
「まぁ、大変と言えばカイトさんも大変ですね。凄い規模のパーティですし……」
「いや本当に……これ、もしかして来年もこんな感じなんですかね?」
「わざわざ、カイトさんの誕生日パーティを行うための世界を作ったわけですし、来年もここでやるのではないでしょうか?」
「それはなんというか、胃が痛くなる気もしますが……いやでも、トリニィアで滅茶苦茶な騒ぎになったりするよりは、こっちの方がいいのかなぁとも思うので難しいところですね」
「ふふふ、そうですね。ああ、長々話していては次の隠し芸が始まってしまいますね。こちらが私が用意したプレゼントです」
ジークさんがそう言って差し出してくれたのは、少しだけ大きめの包み……服とかが入ってそうなサイズである。持ってみても軽く柔らかめな感触だったので、セーターとかだろうか?
「ありがとうございます。なんとなく手に持った感じはセーターのような気がしましたが……」
「ああ、近いですね。正直に言って私のセンスでは他の方と被らない様にプレゼントを選べる自信が無くて、あえて季節を外したものを選びました。中身はマフラーですね」
なるほど、確かに俺の誕生日は夏……この世界でも比較的暖かめの時期だ。まぁ、シンフォニア王国は年を通して気候が安定しているので、あまり寒暖差は大きくないのだが、それでもマフラーを着用したりする季節は数ヶ月先だ。
だからこそ、他の人と被りにくいというのは、確かにその通りかもしれない。
「私が付けているものと似たデザイン……作っている商会が同じなので、同じブランドのマフラーという感じですね」
「なるほど、ペアルックとかですかね? 確かにいまはまだ季節じゃないですけど、付けるのが楽しみです」
「……ああ、いや、その……」
「うん?」
俺の言葉を聞いたジークさんは、なにやら少し照れたような様子で軽く頬をかきながら視線を泳がせ、少しして苦笑しながら説明してくれた。
「……ペアルックといいますか、ペアで使う品と言いますか……ふたり用のマフラーなんですよ」
「あ、ああ、確かにそういうマフラーありますね」
恋愛ドラマとか漫画の恋愛描写とかで見たことがある、ふたり用の大きなマフラー……確かに、それならセーターと間違うサイズなのも納得だ。
存在自体は知ってるけど、なかなか実物をお目にかかる機会は無いので、なんというか興味深い思いである。
「はい。最初は普通のマフラーにしようとしていたんですが、店舗に買いに行った際にそれを見つけて……それを付けてデート出来たらなぁと思って買ってしまいました」
「俺もそういうマフラーの存在は知ってましたが付けたことは無かったので、興味ありますし……ジークさんの言う通り、一緒にマフラーを巻いてデート出来たらすごく楽しそうですね。さすがにいまの季節だとアレなので、もう少し涼しくなったらやってみましょう」
「ええ、楽しみです」
楽しそうに笑うジークさんに釣られて俺も笑みをこぼす。ほんとにその時が楽しみというか、せっかくマフラーを巻くわけだし、アルクレシア帝国とか気候的に少し寒めの国に遊びに行くのもいいかもしれない。
なんにせよ、いまからその時が楽しみである。
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「諸君、私はイチャラブが好きだ。諸君、私はイチャラブが好きだ。諸君、私はイチャラブが大好きだ……(え? なにこれ、口が勝手に)」
???「……そっすか」
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「片思いが好きだ。両思いが好きだ。告白が好きだ。混浴が好きだ。同衾が好きだ。膝枕が好きだ。デートが好きだ。ハグが好きだ。キスが好きだ……(おい馬鹿、やめろ!?)」
???「……」
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「草原で、海辺で、学校で、公園で、映画館で、遊園地で、自宅で、街中で、浴室で、寝室で……この世界で行われるありとあらゆる恋愛行為が大好きだ! 友人関係だった男女が、ふとした瞬間に恋心に気付くのが好きだ。恋心を自覚してギクシャクしたり、些細なことで意識してしまう時など心が躍る。クリスマスやバレンタインといったイベントで、友達以上恋人未満の関係が進展するのが好きだ。何日も悩んで準備をして、渡すか渡さないかで躊躇った後に真っ赤になりながらプレゼントやチョコを渡すときなど胸が高鳴る気持ちだった。関係が進展して恋人同士になってからの初デートが好きだ。何度も一緒に出掛けているはずなのに、恋人になった瞬間互いに緊張し合ってしまう様など感動すら覚えた。何度も躊躇しながら意を決して手を繋ぐ瞬間などはもうたまらない。普通に手を繋ぐべきか、恋人繋ぎで指を絡め合うべきか、互いが互いを好意的に思い進展を望むからこその駆け引きも最高だ。幾度となく会話やイベントを積み重ね、自然と高まる雰囲気が最高潮に達した時に起こるキスシーンなどは絶頂すら覚える。関係が進展してバカップルの如く甘い関係になるのが好きだ。互いに互いのパーソナルスペースを己の居場所と定め、ごく自然に密着して語らう姿はとても甘いものだ。大量の恋愛イベントを次々とこなす様が好きだ。ひとつのイベントを丁重に描くのも美しいが、次から次へと場面転換しながら様々な恋愛描写を楽しめるのは幸福の極みだ……(絶対あのイカレ神のせいだろこれ!!)」
???「……セリフ量が凄まじいのは手を加えたやつの影響ですかね?」
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「諸君、私はイチャラブ展開を望んでいる。諸君、私と共に展開を見る読者諸君。君達は一体何を望んでいる? 更なるイチャラブを望むか? とろけるような甘いイチャラブを望むか? 次から次へと畳みかける様に恋人たちの出番が続くのを望むか?」
幻聴『イチャラブ! イチャラブ!』
シリアス先輩(絶対イチャラブモード)「よろしい、ならばイチャラブだ! 次の隠し芸はダイジェストにして、即座に次の恋人に移行する! ……(ふぁっ!? やめろぉぉぉぉ、なに休憩をスキップしてんんだ馬鹿ぁぁぁぁ!)」




