続・宮間快人生誕記念パーティ⑤
フェイトさんからの誕生日プレゼントを受け取った後、続けて隠し芸大会の壇上に上がったのは……ブロッサムさんだった。
なにやらかなり本格的な着物を着ており、気合は十分といった感じだが……なにをするんだろうか? ブロッサムさんと言えば、間違った日本知識というイメージが強いが着物でいったいなにをするんだろうか?
『さて、続いてのエントリーはブロッサムさんです』
『なにするんだろうね? 意外性重視だし、実力者ほどルール的には不利な気もするけど……』
フェイトさんの言う通り、この隠し芸大会は意外性を重視して採点するという関係上、なにができてもおかしくないような伯爵級最上位の実力者たちは不利と言っていい。
逆に人族だとか、単純な能力的には高位の人たちに届かない方たちの方が有利と言ってもいいシステムである。
『界王リリウッド様の眷属であるブロッサムと申します。本日は一時ではありますが、拙者の拙い出し物を披露することをお許しください。それでは、始めます』
ブロッサムさんは集中しているのかいつもの騒がしさが嘘のように静かに一礼し、簡単な自己紹介だけをして隠し芸を開始した。
ブロッサムさんが懐から扇子を取り出して広げると、そのタイミングで和楽器による演奏が聞こえてきた……これ、もしかして日本舞踊か? 見るのは初めてだけど、雰囲気とか動き的に間違いないと思う。
美しい音楽に合わせて、時に扇子や番傘などの小道具を使いつつ優雅に踊るブロッサムさんの姿は物凄く艶やかで綺麗で……なんというか、どちらかと言えば騒がしいイメージだったブロッサムさんが、お淑やかな大和撫子に見えるというか、イメージのギャップはかなり凄い。
踊り自体も本当に見事なもので、見入ってしまって気が付いたらあっと言う間に時間が過ぎて終了していた。
『これは素晴らしい舞でしたね。それでは、審査員の方々得点をどうぞ!』
ここでの採点は少し迷った。ブロッサムさんは界王配下で、当然ながら音楽系に強い。踊りが上手いのも意外性という面ではパンチは弱い。
でも、普段の印象からのギャップという意味では日本舞踊の優雅な踊りは印象的だったので、普段とは違う一面を見たという意味で4点の札をあげた。
『おっとこれは、点数がやや割れましたね』
『時空神とリリたんが3点、カイちゃんとクロりんが4点、カナーリス様が5点……確かにここまでで一番割れたね。これは各得点の人たちに一人ずつ聞く感じがいいかな?』
『そうですね。というわけでじゃあ……クロノアさん、コメントをどうぞ』
合計は19点で、確かにここまでだと一番点数にバラつきがある感じだった。
『踊り自体は少し変わっていたが大変すばらしい物であった。だが、界王配下の幹部である彼女が、歌や踊りを得意とするのは周知の事実故、意外性という点では低く採点した』
『なるほど……では続けて、4点を出したクロさんはいかがでしたか?』
『う~ん……細かい部分で言えば似てるものはあるんだけど、初めて見る踊りだったんだよね。ボクも3点か4点で悩んだんだけど、珍しさを考えて4点って感じだね』
クロノアさんもクロもブロッサムさんの踊り自体は高く評価しつつも、意外性という点で減点という形っぽい。ただクロは、日本舞踊が珍しかったため加点したということらしい。
そのコメントには納得できるが……そうなると気になるのは唯一5点を出したカナーリスさんである。
『それでは唯一5点を付けたカナーリスさんは、いかがですか?』
『たはぁ~歴史的瞬間に立ち会えて喜ばしい限りです。ブロッサムさんが躍ったのは快人様たちの世界の日本舞踊という踊りなのですが、この踊りが過去の勇者役から詳細が伝わったという事実はありません。それもそのはずと言いますか、召喚された勇者役は10代の若い方ですし、都合よく日本舞踊を修めている方が召喚されない限り正式なものが伝わることは無い筈です。ですが、ブロッサムさんは、様々な勇者役から断片的に得た情報を長年研究し続けて、ついにほぼ完全に日本舞踊を再現することに成功し、この場で初披露したわけです』
カナーリスさんのコメント通りなら、それこそブロッサムさんは過去の勇者役からぼんやりとした日本舞踊の概要を聞き、その情報を集めて試行錯誤を繰り返して、伝わって無い筈の日本舞踊を完璧に再現して見せたらしい。
『ブロッサムさんが披露したのは新舞踊と呼ばれるやや近代的な日本舞踊で、上方舞や歌舞伎舞踊という古い歴史を持つ日本舞踊と比較すると歴史が浅く、難易度もそこまで高いものではないのですが、それでも断片的な情報から再現して見せたのは見事の一言です。本当に何度も繰り返し研究し、微調整を加えた結果でしょう。たはぁ~1から10まで教わるのではなく、考察と努力で異世界文化を再現して見せた偉業を讃えての5点という形ですね』
『さすが、素晴らしいコメントですね。カナーリスさんの言う通りで、踊りと一括りにしてしまうと気付きにくいのですが、クロさんが初めて見たと言っていた通り、いままでトリニィアには無かった踊りを完成させたのは素晴らしい。とてもいい出し物でした』
アリスがそう締めくくると、俺も含めて多くの人がブロッサムさんに拍手を送り、ブロッサムさんは静かに一礼していた。
う~ん、本当にブロッサムさんの新しい一面を見たというか、日本舞踊を再現するまでの努力とかを考えると、本当に凄いことをしたのだと、そう感じた。
シリアス先輩「くそっ、この後またプレゼント回が……くそぉぉ、モードチェンジさえ……モードチェンジさえできれば!」
マキナ「うん? シリアス先輩モードチェンジしたいの?」
シリアス先輩「はっ!? そうだ、お前が居た!! 頼む、私を対イチャラブモードにチェンジできるようにしてくれ!!」
マキナ「……よく分からないけど、任せておいて!」
シリアス先輩「ありがとう!!」
マキナ「……(なんで『絶対イチャラブモード』になりたいんだろう? あ~もしかしてアレかな? 長年いちゃらぶを見てて、なんだかんだでシリアス先輩もイチャラブが好きになったけど、いまさらイチャラブ嫌いの看板も下ろせないから、そういうモードってことで誤魔化してイチャラブを楽しみたいのかな?)」