続・宮間快人生誕記念パーティ①
隠し芸大会は一回一回の相手に10分間のインターバルを開けるらしく、アリスは次の参加者の準備や新規エントリーのための時間と言っていたが、実際は俺がプレゼントを受け取る用の時間を用意してくれているのだろう。
その気遣いに感謝しつつガラポン抽選機を回す。
『アニマ』
出たのはアニマであり、ほどなくしてアインさんに連れられてアニマがやってきた。
「ご主人様、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。アニマもパーティは楽しんでる?」
「はい。この誕生日パーティは比較的ご主人様の居た世界の文化などに関わる出し物が多いようで、自分としては新鮮に楽しめております。城内の展示室なども中々興味深いものが多かったですね」
「ああ、そういえば、他の部屋にもいろいろ作ってるんだったっけ? 俺はずっとここにいたから知らないんだけど、どんな部屋があったの?」
アリスがチラリと他の部屋に暇な時間で色んな人が改造などをしていると言っており、自由に見学してもいいという風に語っていたが、俺は今回の主賓ということもあってずっとパーティ会場に居るのでそちらに関しては全く知らない。
アリスとフェイトさんのやり取りから、クロがベビーカステラで埋め尽くされた部屋を作ってることは分かっているが……。
「この世界はトリニィアではないため、シャローヴァナル様とエデン様の契約の範疇外ということで、機械製品などのサンプルが置いてある部屋もありました。契約でトリニィアで制作禁止となっているものに関しては、トリニィアに戻った際には思い出せない様になるらしいのですが、話でしか聞いたことが無かったものが見れるのは新鮮でしたね」
「そっか、一部の技術は緩和したりしたって言ってたけど、機械製品とかは結構厳しく制限がかかってるんだったね。確かにトリニィアの人たちにとっては新鮮か……」
俺がこちらの世界に着て魔法に驚いたりしていたように、こちらの世界の人たちにとって機械製品は未知の技術であり興味深いものなのだろう。
「おっと、長く話していては時間が無くなってしまいますね。ご主人様、こちらは自分からのプレゼントです」
「ありがとう。結構大きいね? これは……」
アニマが渡してきたのは細長い箱のようなものであり、一見すると日本刀とか入ってそうな形ではある。とはいえアニマが日本刀を渡してくるわけもないし、中に入ってるのは別のなにかだろう。
「そちらは、釣り竿になります。装飾品や定番の品などでは他の方と重複してしまうかと思ったのと、またご主人様と一緒に釣りができればと思い、ご用意させていただきました」
「なるほど、釣り竿か……いいね。アニマとは何度か釣りに行ってるけど、また行きたいね。川で釣ることが多かったし、今度は海釣りとかに行ってみようか?」
「はい。その時を楽しみにしています!」
個人的に結構釣りは好きなのだが、シンフォニア王都から海までは相当の距離があるし、海に近い場所というとハイドラ王国ぐらいしか転移魔法具に登録はない。
いちおう、船上パーティをした時に魔界の海辺も登録したけど釣りに利用したことは無いな……というか、釣りって意識してやろうと思わないとなかなかやる機会が無い。
いままで一緒に釣りをしたのは、ラグナさん、リリアさん、ジークさん、アニマかな? 特にアニマとは何度か川釣りに一緒に行ったことがあるので、釣りデートと言えば思い浮かぶのはアニマかもしれない。
アニマ自身が魚好きということもあるし、のんびり釣りをしながらアニマと過ごす時間は楽しいので、是非また一緒に行きたいものだ。
「ありがとう、アニマ。嬉しいよ」
「喜んでいただけたならなによりです……あっ……えっと……」
「うん?」
「ああ、いえ、自分も恋人としてその、なにか特別なことをしたほうがいいのかと……しかし、なにをすればいいのか……」
特に恋人だからプレゼントを渡す際になにかをしなければ行けないというわけではないのだが、前回の誕生日パーティの時はアニマはまだ恋人では無かったし、恋人として初めて俺の誕生日を祝うのでなにかしたいという気持ちがあるのかもしれない。
とはいえ、急にできることと言っても限られるような……。
「……えっと、じゃあハグとか?」
「あ、は、はい! し、失礼します」
とりあえずパッと思いついたことを口にしてみたが、アニマはそれを二つ返事で了承し、椅子に座っている俺に近づいて少し身をかがめる様にしつつ抱き着いてきた。
さすがの行動力というか、思い立ったらすぐ実行に移すのがアニマらしいと、そんな風に感じつつ俺も軽くアニマの背に手を回して抱き返す。
時間的な余裕もあまりないので数秒程度ではあったが、柔らかな感触とアニマの温かい体温を感じられて、とても幸せな気持ちだった。
シリアス先輩「ぐ、ぐあぁぁぁ……こういうシンプルなやつは、地味にきつい……はぁ……はぁ……えっと、これで残る恋人は……ジーク、アリス、フェイト、イルネスか? くっ、まだ結構いる……」




