宮間快人生誕記念パーティ㊽
マキナさんが提案した企画と聞くと凄まじく不安ではあるのだが、間にアリスが入っていると思えば急に安心に思える。
アリスならダメな企画はキッチリ却下してくれるだろうし、マキナさんもアリスに対してはそれこそ我が子相手以上に甘々対応なので、アリスが言えば割と素直に言うことを聞くのでちゃんと軌道修正はできてると思う。
『というわけで、三つ目の余興は……隠し芸大会です!』
『……なにそれ?』
『本来は宴会とかでやるやつなんですが、マキナが出してきた案の中じゃ一番マシだったんですよ。本当に、最初とか上映時間87年とかいう馬鹿みたいな映画を流そうとしてましたからね。なにが楽しくて誕生日パーティしてる間に87年経過しなきゃいけないんすか……』
やっぱマキナさんは半端ないな……たぶんというか、間違いなくその映画も俺に関連したものだろう。呪いの館も普通に歩けば数百年かかるみたいだし、だからなんでどっちも俺がいままで生きてきた人生より長いんだよとツッコミたいが……まぁ、マキナさんだし……。
『凄くザックリと説明すると、あまり人前で披露したことが無い特技や芸などを披露しようって感じの催しですね。今回はエンタメ性を上げるために得点を付ける形式にしました』
『ああ、審査員が居て点をつけてそれで競い合う感じ?』
『ええ、そうなります。今回参加は我こそはって思う方にエントリーしてもらう形になりますが、それで参加者ゼロとかでも困るので、事前に何人かには声かけてます。とりあえず、先に審査員を紹介しましょうかね』
隠し芸大会と聞くと、歌とか手品みたいなイメージがあるが、果たしてどんな感じになるのか……点数を競い合うってことは上位には賞品とかもあるだろうし、これはこれでちょっと面白そうな気がする。
『審査員に関しては各界の代表者って感じです。まずは神界代表として、時空神クロノアさんです』
『あれ? シャローヴァナル様じゃないの?』
『絶対審査するのに向いてないので、一番まともに審査員してくれそうなクロノアさんにしました』
まぁ、これは納得である。というかシロさんから見れば、隠し芸は別に凄いとは感じないだろうし、高得点をつけてくれなさそうだ。たいして、クロノアさんは真面目なのでしっかり客観的に判断して点を付けてくれる気がする。
『次に魔界代表としてクロさんですね。まぁ、これは言うまでも無く安牌です』
『まぁ、魔界はクロりんが無難だよね~』
『そして人界は、リリアさんです』
「!?!?」
魔界代表の審査員はクロであり、人界は……そんな気はしたがリリアさんである。そして例によって「いま初めて聞いた」という感じのリアクションで驚愕しているリリアさんに対して、ある意味無常ともいえる言葉が告げられる。
『聞いてないみたいな顔してますが、少し前に言った通りこの手の人界代表的な時はリリアさんなので、諦めてください』
『ま、まぁ、今回はリリたん審査するだけだし、多少はマシだよね』
フェイトさんの言う通り隠し芸とかを披露するとかではなく、今回のリリアさんの役割は審査員である。他の審査員もクロノアさんにクロなので、リリアさん的にもかなりマシだとは思う。
『そして、異世界代表として……カナーリスさんです』
「異議あり! なんで私じゃないの!! 私が考えた企画なのに!!」
『そんなの依怙贔屓しまくるからに決まってるでしょうが! 地球出身者が出てきただけで満点付けそうなやつが審査員できるわけねぇでしょうが!』
「ふぐぅ……い、いや、だって、我が子に満点付けないとか……母としてはありえない訳だし……我が子は存在してるだけで100点だし……」
まぁ、この人選にも納得ではある。カナーリスさんも地球ではないが異世界出身という括りで言えばその通りだし、まともに審査してくれそうだ。
それでも若干不満そうだったマキナさんだったが、直後にポンッとマキナさんの肩にイレクトローネさんが手を置く。
『鎮静を出力……《まぁまぁ、ここはカナーリスに任せてマキナちゃんはドーンと構えとこうよ》……続けて、希望を出力……《それはそれとして、私はマキナちゃんが作った映画ってのに興味があるんだけど、よかったら見せてくれないかな?》……素晴らしい映画であると推察している』
「……イレクトローネ! やっぱり、イレクトローネは分ってくれるよね! うん、愛しい我が子の魅力がたっぷり詰まった自信作だから、きっと楽しんでもらえるよ!!」
上手いことマキナさんを宥めてくれたらしく、上映時間87年という映画を見るためふたりで移動していった。
『……イレクトローネさん、トリニィアに常駐してくれねぇっすかね……ま、まぁ、それは置いておいて審査の話に戻りますが、四人の審査員はそれぞれ5点満点で隠し芸を採点してもらいます。ただしここで重要になるのは、採点基準は意外性を重視してほしいというところです』
『うん? どういうこと?』
『例えば、私がなにかを披露してそれが凄い芸だったとします。そこで凄いけどまぁ、私ならできても不思議じゃないなって思ったなら得点は低めに付けてください。逆にまさかこの人がこんな特技を持っているとは知らなかったとか、普段のイメージからかけ離れた芸だとか、そういうのには高得点を付ける感じで』
『へぇ、それは面白いね。つまり、シャルたんとか冥王とかいろんなことが出来そうな人がやっても、高得点は付きにくくて人族の子とかが意外な凄い芸を持ってたら高得点って感じだね』
『ええ、それとギャップも高く評価してほしいですね。また一例ですが、辛い物好きとして知られるメギドさんが、甘いスイーツ特技を披露したりとか、そんな風に普段のイメージからギャップがある場合にも高得点でお願いします』
あくまで隠し芸ということで、普段は披露しない……その人からは想像できないような特技や芸を高得点で評価する感じか……それならむしろ、六王幹部とかみたいなハイレベルの人たちはなにができても不思議じゃないし、それ以外の人たちが活躍できそうでいいかもしれない。
『あと特別審査員としてカイトさんにも加わってもらいますが、カイトさんはいわゆるボーナスポイント的な立ち位置です。カイトさんは毎回必ず評価する必要は無く、時々目に付いた芸とかに1~5点を入れてくれればOKです』
『カイちゃんが興味を持つような芸だと、追加で得点が貰えて上位が狙いやすくなる感じだね』
『ええ、ちなみに最終的に得点順に5位までには賞金を用意してます。ものでは無くシンプルにお金ですね』
その説明と共に俺のすぐ横に1~5の数字が書かれた札が乗った机が出現した。これを使って時々審査すればいいって感じだろう。
誕生日プレゼントを受け取りつつ、気になる隠し芸があればそれを見て採点する。俺はかなり気軽に楽しめそうな感じである。
『さて、それではドシドシエントリーをお待ちしていますということで、まず最初に一人目に隠し芸を披露してもらいましょう。トップバッターは……教主オリビアさんです!』
……待って、もう既に5点満点出したい気分になったんだけど? すでにギャップが凄いというか、まさか隠し芸大会の最初にオリビアさんが出て来るとは、完全に予想外である。
シリアス先輩「まさかのオリビア……え? 隠し芸って、なにするんだコイツ……」




