宮間快人生誕記念パーティ㊻
クロとの夜通しベビーカステラトークがほぼ確定したような感じにはなったが……まぁ、実際のところクロが相手ならばさほど問題ではない。
これがマキナさんとかであれば、本当に延々一晩中喋ってそうな感じではあるが、クロの場合はそういうわけではない。
というのもクロの言う一晩というのは、クロがベビーカステラ型クッションの拘りポイントを語り、それに俺が反応して盛り上がり、話が盛り上がった結果脱線して他の話になったりというのも織り込んだ上での一晩である。
まぁ、ベビーカステラ関連のトークで確実に盛り上がるという想定なのは、流石ベビーカステラの悪魔といったところではあるが……でも、まぁ……実際のところ普通に盛り上がるし、一晩でも話てられるとは思う。
ベビーカステラ関連の話題の時は、とにかくクロの方がテンションが高くどんどん話を広げてくれるので、俺の方が意識したりしなくても話は盛り上がりやすい。もちろんよくそこまでベビーカステラについて語れるもんだと呆れなども混じったりはするが、それでも心底楽しそうに話すクロを見てるとこちらもなんというか楽しい気分になるので、話に付き合うのは苦痛ではない。
というか、クロ的には自分の好きなものに関する話を好きな相手とできるのが本当に楽しいのか、終始幸せそうな感じなのでいつもなんだかんだで付き合ってしまう。
今回もテンション高いクロに苦笑しつつ相槌を打ったりするんだろうなぁと考えつつ、ガラポン抽選機を回すと……。
『パンドラ』
……問題児がきたな。前回の誕生日の際に消耗品だからいくらあっても困らないとか言いながら、荒縄とロウソクを渡してきた剛の者……結局今日に至るまでひとつも消費することは無かったけど!?
「ミヤマ様、誕生日おめでとうございます。私個人としても、幻王配下としても大変に喜ばしい日……この日は、毎年幻王配下においても記念日と定めるべきですね」
「あ、ありがとうございます。いや、お気持ちだけで十分です……本当に……」
間違いなく美人ではあるのだが、ドロッとしているというかねっとりしているというか、ヤンデレってこんな雰囲気なのかってのを本能で理解できるような気配……どうやら今日は仕事モードではなくプライベートモードらしい。
十魔との顔合わせとか船上パーティの時とか、任務を与えられてキリッとした仕事モードだったし、結構久々にこの状態は見た気がする。
「前回は時間が無くあまり凝った品は用意できなかったのですが、今回はしっかりと吟味した上でご用意させていただきました。こちらです」
「……あ、ありがとうございます」
差し出されたのは申し訳程度にラッピングリボンの巻かれた鞭……そう、紛うことなき鞭である。形状的には長いやつじゃなくて、馬とかに使う感じの鞭だ。
「そちらの鞭は、以前ミヤマ様がフェニックスに使っていた神秘の道具から着想を得て制作したものです」
「え? ああ、あのピコハンからですか?」
「はい。そちらの鞭には特殊な術式を用意しておりまして、私に対してのみ防御などを無効化して強い快……痛みを与えられるように設計しています」
「……」
なんだこの変態、とんでもねぇな……対自分専用の鞭を発情したような顔して渡してきたんだけど、それに対して俺はいったいどんな反応を返せばいいのか……。
「用途は限定的となりますが、効果のほどは保証いたしますので安心してご使用ください。もちろん使用する際には対象である私が居ないといけませんので、いつでもお呼び出しいただいて大丈夫です。衣服などもご要望にすべてお応えできるとは思いますし、肌に鞭で打たれたような跡を作り出すのも得意ですから、雰囲気をしっかり盛り上げられるとは思いますし、いい声で鳴かせていただきます」
「……もうちょっとこうオブラートに包むというか……自重してください」
「はぁん!? ……あ、ありがとうございます。大変に鋭く勇ましい眼光、下腹部に響きました」
呆れ切ったかのような俺の視線を受けて涎垂らして興奮してる……駄目だこの変態無敵すぎる。わ、悪い人ではないんだ。いまも変態的な趣味を口にはしているが、無理に実行したりとかは無くあくまで判断は俺に委ねているし、こちらの言うことにもちゃんと従ってくれる。
単に俺やアリスに対してだけドM的な願望が強すぎるというだけで……いや、本当に、仕事モードの時とか頼りになるし、逆に他の十魔を諫めてくれたりもするんだけど……。
『……パンドラ、ハウス』
「あっ、そうですね。あまり長く話し込んではミヤマ様にご迷惑になってしまいますね。それでは、改めてミヤマ様の誕生日という素晴らしき日が、ミヤマ様にとっても良き日と成るように祈りつつ失礼いたします」
「はい。ありがとうございます」
……うん。いや本当に根っこの部分はちゃんといい人ではあるんだよ……性癖さえ絡まなければ……。
『……シャルたんの配下ってさぁ』
『止めてください、フェイトさんその先の言葉は私に効きます。私も結構頭抱えてるんですよ』
シリアス先輩「フェニックスやティアマトが目立ってたけど、パンドラも普通にドM四天王の一角なんだよな……というか、今回は任務与えて大人しくさせとかなかったんだ?」
???「毎回それやると、フラストレーション溜まって変なところで暴走しかねないですし、適度にガス抜きはさせないと……まぁ、変態は変態ですけど、カイトさんの言うことはちゃんと聞く……話自体は通じる変態なので……」




