宮間快人生誕記念パーティ㊸
アイシスさんからプレゼントを受け取って、少しすると次のライブが始まる様子だった。和楽器の音が聞こえてきて、なんとも珍しいと思ってそちらを見ると……ステージ上にはブロッサムさんと、界王配下の数名の姿が見えた。
以前にハーモニックシンフォニーのお茶会などで話した覚えのある方々なので、パーティの参加者であるのは間違いない。
そしてブロッサムさんは和楽器……和バンドって感じかな? なんともらしいと言えばらしいが……なんか微妙に違ってる気がした。
琴っぽい楽器をギターのように抱えている人も言えれば、お祭りとかでしか見たことが無いような大太鼓があったり、コントラバスみたいなサイズの三味線を持ってる人が居たりと……和楽器っぽくはあるんだが、なんか絶妙に間違ってる感じがブロッサムさんらしかった。
だが、意外とちゃんと考えられているのか大太鼓の音を中心にしつつも、和風でカッコいい演奏が行われ、それに合わせたブロッサムさんの歌声も見事の一言だった。
ブロッサムさんはハーモニックシンフォニーではUTA合戦の審査員をしていたので、歌を披露しているのは初めて見たが、他の七姫に負けず劣らずの上手さで、演歌っぽいようなそうでもないような感じの歌を美しく歌い上げていた。
日本人から見れば若干の違和感はあったが、歌の上手さがすべてを帳消しにしている感じでなんだかんだで凄く楽しめた。
演奏が終わった後に軽く拍手をして、片付けと次の準備の間にプレゼントを受け取るためガラポンを回す。
『フィーア』
おっ、アイシスさんに続きフィーア先生。恋人が連続した感じになった。少しすると、アインさんに呼ばれて笑顔のフィーア先生がやってきた。
「ミヤマ君! 誕生日おめでと~!」
「ありがとうございます。フィーア先生はゲームとかプレイしました?」
「したし、トーナメントにも出たんだけど……なんか開始してすぐうっかり、ギミックに引っかかりそうになって回避したら……そのまま穴に落ちちゃったよ」
「あはは、フィーア先生らしいというか……でも、初見じゃわかりにくいギミックも多いですからね」
「なかなか難しかったね。さて、それじゃあプレゼントだよ!」
ドジに定評のあるフィーア先生は、対戦でというよりはギミックに翻弄されてドジって負けているというのは、その光景が目に浮かぶようだった。
フィーア先生は苦笑しつつ、どこからともなくプレゼントの入った箱を取り出した。箱の一部が半透明になっていて中が見えるデザインであり、中にはカラフルでお洒落なロウソクっぽいものが並んでいた。
「ありがとうございます……アロマキャンドルとかですかね?」
「正解だよ。私が作ったアロマキャンドルの詰め合わせだよ」
「え? これ、フィーア先生が作ったんですか?」
「うん。ほら、私ってハーブとか好きだし、アロマキャンドルにはハーブが使われてるのも多いからね。今回はプレゼント用だから凝って綺麗な形に作ったけど、普段もちょっと雑な感じで作って自分で使ったりしてるよ」
「へぇ~俺、アロマキャンドルってあんま使ったことが無いので、楽しみです」
イメージとしては使い方とかは分かるつもりだが、お洒落な感じが強くてあまり手を出したことは無い。というか、ハーブ系はなんとなくお洒落なイメージがある気がする。
「喜んでもらえたら嬉しいよ。あともうひとつ、コレだね!」
「もうひとつ?」
「うん。これもアロマキャンドルなんだけど、こっちはちょっと特別だからね」
フィーア先生がそう言って渡してくれたのは、アロマキャンドルひとつ分ぐらいの小さな箱で、こちらは仲が見えない様になっており、箱の上に小さな封筒がくっついている。
「封筒の中身はマッサージのチケットだよ。事前にミヤマくんの都合のいい日を伝えて貰ったら、私がスペシャルマッサージの準備をするから、そのアロマキャンドルはそこで使う感じだね」
「ああ、なるほど、リラックス効果がある感じのアロマなんですね」
「ふふふ……」
アロマキャンドルを炊きながらマッサージをすることで高いリラックス効果が期待できるから、マッサージチケットと一緒に渡してきたとそう思ったのだが……フィーア先生は、なにやら妖艶な笑みを浮かべたあとでスッと俺の耳元に口を近づけ、囁くように甘い声で告げる。
「……そのアロマキャンドルね、ミヤマ君のものも同じ名前なのは確認済みなんだけど……イランイランっていうアロマを使ったものでね。少し好き嫌いは分れやすい香りなんだけど、ねっとり甘い感じの香りで……夜の香りの代表って言われてるんだよ」
「え? よ、夜の香り?」
「うん。だから、そのスペシャルマッサージは夜に行うから、使う時は泊まれる準備をしてきてね。いっぱい癒やせてあげれるとは思うんだけど、寝不足にはなっちゃうかもだから……次の日の予定も開けておいてね」
な、なんて色気たっぷりの声で……健全な男は、そういうのに大変弱く単純なので、もういまの一瞬で意識は完全に新しく貰ったプレゼントに集中してしまってる。
「ふふ、いつ使ってくれてもいいからね。気に入ってくれたらまた用意するよ」
フィーア先生はそう告げた後で、俺の耳たぶに軽くキスをして顔を話し、ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべていた。
うん。なんというか、この手の話題に関しては恋人の中でフィーア先生が最強かもしれない……まったく勝てる気がしない。
シリアス先輩「……ぐぅぅ……あぁぁ……うわぁぁ……ぐっ……ひぃ……」
???「なんか、寝てるのにやたらうなされてないっすか?」
マキナ「違うよ、うなされてるんじゃなくて喜んでるんだよ」
???「うん?」
マキナ「寝ている間、愛しい我が子の様子が見れないのは可哀そうだと思って、寝てても『夢の中で愛しい我が子の様子が見れる』ようにしておいてあげたからね! うんうん、私優しいなぁ~!」
???「シリアス先輩が寝たからシリアス展開かと思ったら、逃げ場の方を封殺するとは恐れ入った」
シリアス先輩「……ウ……ウソやろ……こ……こんなことが……こ……こんなことが許されていいのか……」




