宮間快人生誕記念パーティ㊴
登場したバースデーケーキは……なんというか、とんでもないサイズだった。それこそウェディングケーキでもまだもっと慎ましいだろうと思えるレベルの巨大さではあった。
見た目はすごく美味しそうだ。フルーツなどがふんだんに使われた鮮やかな見た目であり、流石アリスというべきかデコレーションも綺麗で見ているだけでも楽しくなる雰囲気ではあった。
ただ、サイズがとにかくデカい……あまりにもデカすぎる。
『シャルたん……大きくない?』
『いや、カイトさんひとりが食べるならサイズは小さくしましたが、参加者全員となると必然的にこのぐらいのサイズにはなりますね』
『あ~なるほど、今回は前回と比べてもかなり数が多いし、体の大きな子とかもいるしねぇ』
言われてみれば普通になっとくというか、メギドさん辺りが食べるならこのサイズでも全く足りない気もする。まぁ、メギドさんは甘いものは好きじゃないので食べるとしても少しだろうから大丈夫だが……。
『あれ? でも確か、異世界の……この世界でも人族とかはそうなのかな? ともかく、アレでしょ歳の数のロウソクを吹き消すんでしょ?』
『その辺りは結構いろいろですよ。年齢の形したロウソク吹き消すとか……まぁ、とりあえずロウソク吹き消すのは定番ですね』
『あのサイズのケーキに合わせたロウソクとか、カイちゃんに吹き消せるの?』
どうもフェイトさんは誕生日パーティに付いてあまり詳しくなさそうな感じではあるが、よくよく考えれば魔族とか神族は物凄い年齢の人が多いし、そもそも大雑把にしか自分の年齢を覚えていないという人も多い。
魔族とかには誕生日をお祝いしたりって風習はほぼないらしいので、同じように神族であるフェイトさんが詳しくないとしても不思議ではない。
そしてフェイトさんの言う通り、あのバースデーケーキのサイズに相応しいロウソクが出てきたら吹き消すのは無理だ。でも、アリスがその辺りを考えてないとは思えない。
『ああ、それは大丈夫ですよ。吹き消す用のミニサイズのケーキを用意しようかと思ったんですが……参加させろってうるさい連中が居たので……神様のパワーで解決することにしました。じゃあ、シャローヴァナル様とマキナ、ロウソク用意してください』
アリスがそう告げるとシロさんとマキナさんが手を軽く振り、巨大なバースデーケーキにそのサイズに完全見合った巨大なロウソクが現れて燃え始める。
明らかに炎のサイズが俺の顔ぐらいあるので、とても吹き消すのは無理だがどうするのだろうかと思っていると、俺のすぐ隣にカナーリスさんが現れる。
「はい。では、縮小します……はい、では快人様、こちらをどうぞ」
「……あ、ありがとうございます。なるほど、力技ですね」
「たはぁ~ゴッドパワーで大抵のことは解決出来ちゃいますからね」
巨大なロウソクとケーキをカナーリスさんが小さくして、俺の前に用意したミニテーブルの上に置く。なるほどこれなら確かに簡単に吹き消せるし、消した後で元のサイズに戻せばいいわけか……。
『では、皆さん、歌詞カードはちゃんと持ってますね? それじゃ、行きますよ~』
その合図とともに、いつの間にかライブステージ上に現れていた着ぐるみ楽団が、聞き覚えのある定番のバースデーソングを演奏し始める。
そして歌詞カードという言葉通り、会場に集まった人たちがバースデーソングを歌ってくれた。
なんというか、これは物凄く贅沢な光景というか……やっぱなんだかんだでこういうのは嬉しいもので、目の奥がジーンと熱くなるのを感じた。
歌が終わるタイミングでカナーリスさんに促されてロウソクを吹き消すと、拍手とクラッカーの音が聞こえてくる。
いろいろとんでもない部分はありつつも、定番のところはしっかりと抑えて誕生日パーティ感を出してくれているというか……本当に俺は幸せものだと実感できた。
いや、本当に……規模だけ、もう少し常識的であればいうことは無かったのだが……うん。まぁ、その辺は事前に言っておかなかった俺が悪いな、うん。
シリアス先輩「ほっこりといい話だった。だが、忘れてはいけない……まだ、シロとリリア以外の恋人のプレゼントシーンが出ていない……恋人連中は確実にあるだろうから……くっ、ここから甘くなるんじゃないのか? ケーキだけに――痛っ!?」
???「……ぶん殴っていいっすか?」
シリアス先輩「すでに殴られてるんだけど!?」




