宮間快人生誕記念パーティ㊲
ライブとライブの間の時間はそれなりに取ってくれており、俺の場合はその時間にガラポンを回してプレゼントを受け取るということが出来た。
しかし、それにしてもいい雰囲気というか……始まった時はどうなるかと思ったけど、想像以上に楽しい誕生日パーティである。
なにがいいって、名だたる人たちが集まってて会場も凄まじい状態ではあるものので、格式張った感じやお堅い雰囲気は無くて、皆割と好き勝手にワイワイ楽しんでる感じがいい。
おかげて俺の方も変に緊張しなくていいので、ゲーム大会やライブを楽しみつつ、プレゼントを受け取って雑談と気軽に楽しめていた。
進行役とかを考えるとアリスの意見が多分に入ってそうな印象なので、恐らくすべて計算の上というか、俺が肩ひじ張ったりいたたまれなさを感じない様に考えてくれたのだろう。
それをありがたく感じつつ、ガラポン抽選機を回すと……。
『メギド・アルゲテス・ボルグネス』
おっと、次はメギドさんか……熱心にテレビゲームを見ていたのが印象深かったが、プレゼントは……酒だろうな。間違いなく酒だろう。むしろメギドさんが酒以外だったら、その方が驚きである。
そう思っていると、アインさんがメギドさんを連れてきてくれたのだが……おい待て、なんで幼女の姿になってる? ちょっと前に見た時は普段の10mぐらいの魔獣の姿だったじゃないか……なんでわざわざ幼女の姿に変わった? これマジでメギドさん、幼女の姿が俺の好みだと認識してる感じか……ちょっと、メギドさんとはまた今度しっかり話をする必要がありそうだ。
「おう、カイト。来たぞ!」
「こんにちは、メギドさん。今日はありがとうございます」
「めでてぇ日だし気にすんな。つっても俺は別にたいして準備には関わってねぇけどな。いや、俺もいろいろやろうとしたんだが、シャルティアが邪魔だから大人しくしとけってな」
「あぁ……」
メギドさんは、なんというか……決してセンスが悪いわけではないのだが、任せると己の趣味全開にしそうな感じはある。パーティ会場というか宴会場みたいにしそうな印象というか……まぁ、それはそれで楽しいとは思うけど、他のコンセプトとはたぶん合ってないのでアリスも大人しくしとくように言ったのだろう。
「まぁ、この手のやつはシャルティアとかの方が上手ぇから、大人しく従ったがな……しかし、世界創造の神々連中はとんでもねぇな。この会場だけでも、俺たちの世界じゃまず再現できねぇような素材が使われまくってるしな……」
「え? そ、そうなんですか?」
「おう、カイトが座ってる椅子も、完全に未知の素材だな。間近で見てもどういう素材なのかよく分からねぇ……」
サラッというか、え? この椅子そんな凄い椅子なの? 確かに座り心地はいいし、全然疲れたりしないなぁとは思ってたけど、メギドさんが見てもよく分からない謎の素材でできてるって……絶対シロさんとかマキナさん辺りが素材から作り出しただろ。
「まぁ、別にいいか! それより、祝いだ祝い! ほれ、カイト、いい酒持ってきたぜ」
「ありがとうございます。予想通りというか、やっぱりお酒なんですね」
「こんだけいろんなやつが居るんだし、プレゼントの数も多くなるだろうから、結局消費できるもんが気楽でいいだろ? 酒なんていくらあっても困らねぇしな」
「あはは、メギドさんらしいというか……でも確かにそうですね」
予想通りのお酒だったが、実際にメギドさんの言う通り消費できるものの方が受け取る時の気楽さはある。容器などを見る限りかなりいいお酒っぽく、メギドさんは酒には本当に詳しいので俺の好みに合ったものを選んでくれてるだろうし飲むのがとても楽しみだ。
「そういえば、メギドさん。テレビゲームをかなり熱心に見てましたね」
「あぁ、ありゃよくできてるな。感心したぜ……確かに疑似遊戯って形を取って、そこに制限をかけちまえば、実力差が大きい者同士でも戦いが成立するし、かなり考えられてるって思ったな。だが、アレを魔法具で再現するのは複雑すぎて難しいな」
「形式は違いますけど、アリスが六王祭の時にVRゲームを作ってましたが……」
「アレはまたちょっと形式が違うな。俺もやってみたが、アレは原理としては……ほれ、前にカイトにやった心比べの魔法に似てるな。精神だけを別空間に引き出してる感じだが……あの手の魔法は条件が厳しいのが多いんだよ。たとえば、心比べは両者が同意しなけりゃ発動できねぇ。シャルティアの作ったゲームも似たようなもんだな」
「アリスのVRゲームにも条件みたいなのがあるってことですか?」
「ああ、恐らく事前に説明を受けて、魔水晶や術式の込められた着ぐるみを『自分の意志で着る』って行為で、術式契約上の同意を成立させてんだと思うぜ……まぁ、それを抜きにしても意識を飛ばせる疑似空間を作るのにもコストがかかりすぎるから、難しいところだな」
そういえば、アリスもあのVRはコストが高すぎて普通は作れないが、シロさんがスポンサーで素材を使いたい放題だったので作ったとか言ってた覚えがある。
ゲームはかなり複雑だし、魔法の術式でプログラムとかを再現しようとすると本当に大変なのだろう。その辺りの細かい作り込みに関しては、魔法具より機械の方が明確に優れている部分なのかもしれない。
シリアス先輩「さて、語ってもらおうか?」
マキナ「え? なにを?」
シリアス先輩「普段どういう意味で肉塊って呼び方をしてるのか……」
マキナ「いや、そのまんまの意味だよ? う~ん、なんて言えばいいのかな……まだ私が個として価値を感じてない状態? 大抵の存在は私の目から見れば、肉体の性能差なんて誤差レベルなんだよ。準全能級以下のレベルは、本当に違いが分からないレベルの差しか感じないからさ、私の認識としては準全能級以下は肉体性能において個性や差異を感じない、ただの肉の塊って感じだね」
シリアス先輩「まぁ、一般人と爵位級高位魔族とかの差でもお前のレベルから見れば誤差か……」
マキナ「人間って纏めるのは変だし、魔族だとか人族だとかその世界に合わせた呼び方をする気になるほど興味もないから、纏めて喋る肉塊って呼んでるね。まぁ、別にそれが悪いわけじゃないんだよ。喋る肉塊って状態は私にとって評価決定前って言える状態で、そこから他とは違う部分を見つけて認めれば、私の中ではその対象は肉塊じゃなくて個性という付加価値を得た存在になる。例えばリリアとかだと、喋る肉塊だったのが苦労してるところに同情したり、振り回されてるところにシンパシー感じたり、お願いを聞いてもらったりで他とは違う部分を感じて、私はリリアの価値を認めたって感じかな?」
シリアス先輩「う、う~ん。あ~まぁ、肉塊って呼び方を抜きにすれば、そっか……初期のシロみたいな考えというか、ほとんどのものは一律同じ価値にしか感じなくて興味なしって感じなのか……」
マキナ「まぁ、例外はあるよ。我が子たちに関しては最初から我が子って大きな価値が付いてるし、そもそも私は我が子を贔屓してるから、我が子たちに関しては最初からひとりひとり特別だって思ってる。その辺の贔屓による差は認めるけど、だからって別に異世界の子たちが無価値って言ってるわけじゃない。あくまで私が肉塊って呼んでる時点では、その相手に対して私は価値を見出してない評価前の状態ってだけだよ。私は一度価値を認めて名前を覚えた相手はちゃんと名前で呼ぶし、ある程度の不敬も許すくらいには寛大に接するよ? ルナマリアとかもそうだしね」
シリアス先輩「……う、うん、まぁ、ヤバい神はヤバい神なりに基準があるわけか……脅しかけた貴族は?」
マキナ「うん? 違うよ、肉塊にはちゃんと話をしたよ……それ以下のゴミに関しては、厳しく躾けたってだけだよ。特に少しでも愛しい我が子を利用しようとかって考えてたり、愛しい我が子を下に見てたりする救いようのないのは……ね?」
シリアス先輩「あ、はい……」