宮間快人生誕記念パーティ㊱
イレクトローネが穏やかかつ他世界の住人に対しても好意的だったためか、リリアたちの緊張もある程度は和らいできた。
『リリア・アルベルトは以前機神より小さな世界を貰ったと思うのだが、間違いは無いだろうか?』
「えっと……エデン様のこと、ですよね? はい、いただきました。イレクトローネ様はエデン様とお知り合いなのでしょうか?」
『肯定する。当機は以前より機神とは交流があり、リリア・アルベルトに贈る世界を作る際に当機の世界に存在する生物を展示用として使わせてほしいと要請を受けた。その際には機獣と呼ばれる種の中で貴女方の世界で竜種に該当する種類のものを提供した』
「ああ! あのとてもカッコいいドラゴンたちですね! はい、素晴らしい模型でした」
『気に入ってもらえたなら幸いだ。ただ、あれらは機獣の中の一部であり、他にも存在している。せっかくなので話題を広げる意味でも、ルナマリアやジークリンデの好みと思われる種類をお見せしよう』
イレクトローネがそう告げると、猫耳のデバイスが光を放ち、空中に小さめのホログラムが浮かび上がった。
「……とても可愛らしいですね。まるでぬいぐるみのようですが、これも生物なのでしょうか?」
『肯定する。この生物は外壁部が機械で、中に本体が存在しているタイプだ。こういった見た目の生物であれば、ジークリンデとルナマリア共に好みに合うかと考えた』
「……そ、そうですね。たしかに、ぬいぐるみがあれば欲しいぐらいです」
映し出された生物を興味深そうに見るジークリンデと、やや気恥ずかしそうながら、相手が神であれば趣味嗜好を知られていたとしても不思議では無いと、誤魔化したりはせずに素直な感想を告げる。
そのあとも少しの間、穏やかな空気で雑談を行いある程度たったタイミングでイレクトローネが告げる。
『名残惜しいが、時間は有限だ。困ったことに箱推しの当機にとって、この会場には挨拶をしたい相手が多すぎる。更なる会話は、またいずれこの世界を訪れた際の楽しみに取っておくこととしよう。当機の要請に応じてくれたこと、心より感謝する』
「こちらこそ、イレクトローネ様とお話ができて光栄でした」
「異世界の創造主様とお話しする機会などそうそうありませんし、貴重で楽しい経験でした」
「私もリリとルナと同じく、イレクトローネ様とお話ができてよかったです」
すっかり緊張が取れた様子で穏やかに微笑みながら告げる三人を見て、イレクトローネはどこか嬉しそうに頷く。
そして少しだけ間をおいて、穏やかに告げる。
『先にファンと呼称した通り、当機は貴女たちのファンであり、貴女たちのことは持ちうる能力によってある程度知っている。リリア・アルベルト……貴女はとても清廉な人物だ。多くの困難を経験し、苦い思いも幾度となく経験しつつも、貴女を取り巻く世界がそれだけでは無いと真に理解し、歪まず清く真っすぐな心を持ち続けている。覗き見た程度の当機でも、貴女の歩みは眩しく尊く感じられた』
「あ、ありがとうございます」
唐突に真っすぐな称賛の言葉を告げられ、リリアは少し気恥ずかし気な表情を浮かべつつも感謝と共に頭を下げる。
続けてイレクトローネは、ルナマリアとジークの方を向きリリアに話しかけた際と同じ穏やかな声で告げる。
『ルナマリア……貴女はとても細やかな人物だ。身近な者たちを思い、些細な変化にもよく気付き、そっと支えることが出来ることは本当に素晴らしい。貴女の心遣いに救われた者も多い筈だ』
「そ、そのように真っすぐに賞賛されると気恥ずかしくもありますが、光栄です」
『ジークリンデ……貴女は鑑往知来と表現できる人物だ。過去の経験に学び、努力を経て未来へ生かす。簡単なことのようで、それはとても難しく、勇気が必要な行為だ。本当に素晴らしいと思う。どうかこれからもその気持ちを忘れず研鑽を続けてほしい』
「ありがたいお褒めのお言葉、心より感謝します」
リリア、ルナマリア、ジークリンデを順に褒めた後で、イレクトローネは満足げに頷く。
『いずれ劣らぬ素晴らしい。短い時間ながら貴女たちと言葉を交わした一時は、実に素晴らしいものだった。心よりの感謝する。当機はこれからもファンとして、貴女たちを応援している。どうかそれぞれが、それぞれらしいまま健やかであらんことを……本当に素晴らしい一時だった。また、この世界を訪れた際には是非会話をしたいものだ』
「はい。その際には是非……」
イレクトローネの言葉に三人を代表してリリアが答え、その言葉に嬉しそうに頷いたあとでイレクトローネは他の人たちにも挨拶をしてくると告げて姿を消した。
「……な、なんというか、い、いや、その大変に失礼な物言いだとは思うのですが……もの凄く神様らしい神様でしたね」
「ええ、私もリリと同じ心境です。なんというか自然と敬いたくなるような方でしたね」
「初めに現れた際には、もっとこう、癖の強い方だと思ったんですが……全然そんなことは無かったですね」
あまりにも真っ当に上位者っぽく慈愛に満ちた雰囲気だったイレクトローネを見て、比較に誰を思い浮かべたのかは知らないが、リリアたちはなんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。
マキナ「誰を思い浮かべたんだろうね?」
シリアス先輩「まず間違いなくお前だって……問題児だし」
マキナ「……真っ当な神って難しいね。どうすればいいのやら」
シリアス先輩「とりあえず肉塊って言わなければ少しはマシに見えるのでは?」
マキナ「……肉人形とか無評価個体とか?」
シリアス先輩「むしろ肉塊がマシな方だとは思わなんだ」
マキナ「肉塊は肉塊だよ。広義の意味で言えば、私だって我が子たちだって、シリアス先輩だって肉塊だよ。まぁ、私の場合は鉄塊とかの方がシックリくるかも?」
シリアス先輩「……うん?」
マキナ「うん? どうしたの?」
シリアス先輩「……(あれ? いま我が子も広義な意味なら肉塊とか……うん? こいつもしかして肉塊って別に蔑称とかの意味合いで使ってないんじゃ……)」