宮間快人生誕記念パーティ㉝
プルートリズムの演奏はトップバッターに相応しくとても素晴らしいものだった。王道のポップミュージックというのも、会場の雰囲気を盛り上げるのに適していたと思う。
ただ、かなりハイレベルな演奏だったので次に披露する人たちはちょっとプレッシャーかもしれない。
『それでは、次は第二組目……あ~うちの幹部のひとりティアマト……クソ蛇と、フェニックス……クソ鳥です』
『シャルたんって、自分ところの配下に辛辣だよね』
『相手によります。パンデモニウムとかには優しいですもん私……』
どことなく呆れたような声色でアリスが告げると、ステージの上には巨大なラミアであるメディアさんとその肩に乗ったフェニックスさんが居た……ヤバめなコンビが出てきたな。
ま、まぁ、今回はアリスとか他にもいろいろな人がいるので大丈夫だとは思うし、メディアさんは歌詞が無い曲だったが綺麗な歌声だった記憶があるので、性癖を表に出さなければ大丈夫だとは思う。
メディアさんのサイズが5mぐらいあるので拡声魔法具はどうするのかと思ったが、そもそもメディアさんとかレベルになると拡声魔法ぐらい普通に使えるのか……。
そんな俺の考えを肯定するように、まずフェニックスさんが喋り始めたのだが、離れていても声はハッキリと聞こえてきたので拡声魔法を使っている様子だった。
『はい、こんにちは……超常者の皆様、強い力を持つ皆様、その他有象無象の皆様、そして、我が神!』
フェニックスさんは人の好き嫌いがハッキリし過ぎてる方である。俺に関しては若干例外だが、基本的に己を殺せない程度の力の相手に関しては、一切の興味が無いという態度を隠すことが無い。
別に力が弱いものは許さないとか、目にするのも不快だとかそんな感じではなく、本当に純粋に興味がないので自分には関わらないで欲しいという感じであり、興味が無い相手にはとことんドライな感じだ。
『ああ、本当に世界は悲しみに満ちています。これだけ多くの方が居て、心から仲良くなれそうな方も多いというのに親睦を深めるのもままならないとは……』
『シャルティア様居ますし、我が神の生誕祭ですから、ちょっとでも変なことしようなら即座に放り出されそうなので、今日は私もティアマトもいい子で過ごしてます』
『悲しいです。とても悲しいですが、その悲しみの多い中で貴重な喜ばしいミヤマカイトさんの誕生日です。あまり普段人前で歌を披露する機会が無い私ではありますが、ささやかながら私の歌がミヤマカイトさんの誕生日の祝いとなることを願います』
『信仰と音楽は繋がりが深いものです。讃美歌などもそうですね。我が神の生誕祭とあっては、捧げる音楽にも力が籠るというものです。まぁ、歌うのはティアマトですし、ティアマトが歌うのはいっつも鎮魂歌ですけど……』
メディアさんの方は、狂ってはいるがいちおう自制したりしているタイプではある。まぁ、発言のところどころにしっかり狂気はあるし、目もハイライトが消えてるというか病んでる感があって、体格も相まって迫力は凄いのだが……実際なんか、会場内でもそこそこ怯えてる方はいる感じがする。
『悲しきことですが、死を目にする機会が多く、その安らぎを思えば鎮魂歌が多くなります』
『あはは、性癖の発散に自分で殺すからじゃないですか、マッチポンプってやつですね』
『それもまた悲しみの連鎖ですね』
『……会場ドン引きトークかましてないで、さっさと始めなさい』
アリスがツッコミを入れたことにより、メディアさんとフェニックスさんが準備を始める。突然フェニックスさんの体が大きく燃え上がったかと思うと、次の瞬間には翡翠色の炎で出来た巨大なハープが出現しており、メディアさんがそれを手に取って、静かに演奏を始める。
……歌うのはメディアさんの方というセリフから、フェニックスさんが演奏担当だと思ったら……楽器になるのか……。
少し予想外ではあったが、炎のハープを持つメディアさんは絵になっており、どこか荘厳な雰囲気を感じた。そして歌い始めたわけなんだが……滅茶苦茶上手いなメディアさん。
物悲しい曲調で、やはり鎮魂歌っぽい歌なのだが、透明感のある綺麗な歌声と炎のハープが奏でる音色が相まって凄く綺麗な曲という印象だった。
演奏するごとにキラキラと火の粉が幻想的に散り、淡い光となって会場に広がっていく。少し疲労が回復するような感じがあったので、前にやって見せてくれた回復効果のある炎を振動で拡散させているのだろう。
演奏開始前のなんとも言えない空気はいつの間にか消え去り、皆静かに美しい演奏と歌声に耳を傾けていた。
シリアス先輩「問題児だけど、とりあえずアリスが睨み効かせとけば大人しいから、こういう場にも出てこれるのか……」
???「毎度毎度、わた……アリスちゃんの負担が大きくないっすか? 問題児対応係じゃないんですよ」
シリアス先輩「……いや、このふたりに関してはお前の配下だろうが……」