宮間快人生誕記念パーティ㉛
時間が無くて今回は少し短めです。
とりあえずイレクトローネさんは最後まで居ることが決まったらしく、本人もとても喜んでいるみたいなのでよかった。
まぁ、個性が強い人ではあるものの悪い人ではなく、距離感とかもしっかりしていたので大丈夫だと思う。
そう思っていると、イレクトローネさんがふとなにかを思いついた様子で視線を動かし、なにもない虚空に向かってダブルピースをした。
『感情を出力……《いえ~い! ∇∮◆£見てる~? わ、た、し、が、一足お先に快人様に挨拶しちゃいました~! イレクトローネちゃん完全勝利のブイ――》』
「は? え? えぇぇぇ!? な、なにが……」
テンション高めの様子で、おそらく知り合いと思わしき相手……名前の部分がなんかモスキート音みたいな異様な高音で聞き取れなかったが、たぶんこの場を見ている知り合いの世界創造主に話しかけたんだとは思う。
だが、その途中でイレクトローネさんの上半身が唐突に消えた。本当にそこだけ削り取られたかのように消えた。
いきなり目の前で上半身が消えるという事態に驚愕していると、直後にノイズのようなものが走り、イレクトローネさんが元通りになる。
『驚嘆を出力……《とんでもないよ。近いとはいえ別世界で、これだけ他に人がいる状態で周囲とか空間に一切被害を出さず、律儀に指一本こっちの世界に出現させることなく……私の顔だけピンポイントでぶん殴るとか器用な真似をしてきた? しかも滅茶苦茶痛いし……やっぱ理不尽だよあのバーサークゴリラ……》……再生に数秒かかるダメージだったことを追記する』
「……煽るからですよ」
『感情を出力……《だって、あっちはあっちで羨ましい状態なんだもん》……よくあれほど幸せそうに紅茶を飲みながら一瞬で殴ってこれるものだと感心する』
「ほどほどにしとかないと、パーティの最後まで参加できなくなりますよ」
『それは困る。これ以上は止めておこう』
いつの間にか近くに現れていたカナーリスさんがどこか呆れたような声色で告げる。なんとなく仲がよさそうな雰囲気はあるが、とりあえず全知全能級であろうイレクトローネさんが煽りすぎたらボコボコにされる的な感じで話しているので、その世界創造主は滅茶苦茶強い人なんだろう。
「……えっと」
「あ~快人様は気にしなくて大丈夫ですよ。イレクトローネが前に殴られた腹いせに煽って、もう一度ぶん殴られただけなので……たはぁ~イレクトローネの登場で会場の空気が停止してますし、改めてパーティを再開しましょう」
『賛成する。当機が少々浮かれすぎて時間を取りすぎたのは否定できない。それに関しては心よりの謝罪を……続けて、挨拶を出力……《では、快人様、私はカナーリスの近くでパーティを楽しませていただきますので、なにか協力できることがあったら遠慮せずに言ってください! 電子、電脳、コンピューター、その辺の関連は私の得意分野なのでお任せください》……それでは、改めて快人様の未来に祝福を』
「ありがとうございます。イレクトローネさんも、よかったら楽しんでくださいね……俺が用意したってわけじゃないですが……」
やっぱり個性的ではあるんだが、なんだかんだでいい人であることは間違いないと思う。テンションの落差とかは凄いけど、浮かれすぎたとか自分の行動を顧みて謝罪したりとか、そういう部分でかなりマトモな雰囲気を感じたので、安心である。
……まぁ、それはそれとして、先ほどイレクトローネさんを殴ったという世界創造主に関しては、気にはなるのだが、さすがにこれ以上騒ぎになっても大変なので今は聞かないことにした。
シリアス先輩「煽りに行ってぶん殴られてる辺り、本当に仲は良さそう」