宮間快人生誕記念パーティ㉙
登場も見た目もとにかく凄まじく派手で情報量が多いが、とりあえず名前がイレクトローネさんだということだけは分かった。
しかしこの後どうするべきかとそう思っていると、イレクトローネさんはポーズを解除して、それと同時にライブ会場だった景色が元のパーティ会場に戻る。
『……世界創造主ってのはぶっ飛んだのしかいないんすか?』
「たはぁ~まぁ、世界作ろうって考える時点である程度ぶっ飛んではいる気はしますね。でも、今回の選択肢の中では当たりの部類なんですよ。EX2の世界創造主とかだとサイズがえっと、人間の基準だと……天の川銀河の4000倍ぐらいのサイズなので、ここに来るのが大変だったりしますし……」
とりあえずこういう時に容赦なくツッコミを入れてくれるアリスの存在はありがたい。そしてカナーリスさんのとんでもない発言……世界創造主ってやっぱスケールが凄い。
そんなことを考えていると、離れた場所に居たイレクトローネさんの姿がブレたと思うと、一瞬で俺の前に出現していた。
『当機を引き当ててくださり、感謝いたします。当機の名はイレクトローネ、どうかカナーリスなどと同じように気軽にお呼びいただけると光栄です』
あれ? 登場の様子から明るい方かと思ったが、思った以上にクールな雰囲気だ。表情も微かに微笑んではいるもののほぼ無表情だし、声も淡々とした感じだ。
声の聞こえ方が少し独特で、スピーカーを通した声のように聞こえるのと、近くで見ると赤い目が……目というよりはカメラとかのレンズのようになっているので、もしかしたらイレクトローネさんはアンドロイドとかロボットとかそういう類なのかもしれない。
「初めまして、ご存じとは思いますが宮間快人です。イレクトローネさんと呼ばせてもらいますね。よろしくお願いします」
登場時のイメージとは違った雰囲気に多少戸惑いつつも挨拶の言葉を返すと、イレクトローネさんは軽く頷く。
『感動を出力……《あぁぁぁぁ!! お、推しが、私を認知して、名前を呼んでくれてる!? はぁ~尊みカーニバル開催確定! 溢れて止まらないこのパッション! この瞬間、まさにめもりー!》……こちらこそよろしくお願いします』
「!?」
え? 待って、ちょっと待って!? いま一瞬限界オタクみたいな感じにならなかった? なんか、いきなりアイドル好きの女子高生かと思うような明るい声とキャピキャピした感じの仕草になったかと思うと、その直後にスイッチが切り替わるみたいに元の表情と声に戻った。
あまりの落差に、幻覚でも見たんじゃないかと……いや、本人はごくごく普通の顔してるし、え? 本当に聞き間違えとかだった?
「……あっ、えっと……イレクトローネさん、素敵なプレゼントをありがとうございました。大切に使わせていただきますね」
『気に入っていただけたようなら当機としても喜ばしいです。感情を出力……《はぁん! 今日も推しが、尊い! こんなに近くで快人様と話せて感激です! 快人様の活躍を聞いてからずっとファンだったので、こうしてお会いできる機会が出来て本当に嬉しいです!!》……改めての発言にはなりますが、お会いできて光栄です』
「……あ、はい」
聞き間違えじゃなかった!? やっぱり途中でなんか、性格が変わったかのようにハイテンションかつ、表情や動きも滅茶苦茶明るくなってた。
え? 二重人格とか? い、いや、でもそういう感じでは無いし、単にテンションを切り替えてるだけ? 落差が凄まじすぎて、どう反応していいか分からないんですけど……。
『……もう一回言いますけど、世界創造主にはぶっ飛んだのしかいないんすか?』
「……自分の世界創造主側なので返答に若干困る部分はありますが、いやでも本当にかなりまともな部類なんです。テンションはあんな感じですけど、節度とか決めごととかはきっちり守るタイプなので、ああ見えて暴走とかは一切しないので……」
『まぁ、言われてみれば、食って掛かりそうなテンションですが、カイトさんとは一定の距離を保ってたりはしてますね』
言われてみれば、テンションの落差の凄さはあるし、強い愛情というか……俺に対して「推し」って宣言してるし、濃い部分はあるんだが、マキナさんとかみたいな狂気は感じないんだよなぁ。
テンションは凄いけど、こっちに害があったりする感じではなくて素直に俺と会ったことを喜んでテンションが上がってる感じ……いや、まぁ、そういう部分も含めてなんか……アイドルオタクみたいな雰囲気があるのだが……。
シリアス先輩「これ、つまりはアレか? 通常時は感情を表に出さないようにしてて、○○を出力って言った時だけ、感情を表に出してるのか? 快人が驚くような落差なのは、意識的にどうこうしてるとかじゃなくて、そういうシステムを構築してる感じで切り替えが一瞬だからとかそんな感じかな?」