宮間快人生誕記念パーティ㉖
プレゼントを渡し終えた香織さんが戻ると、丁度そのタイミングで第二回トーナメントの優勝者が決定したらしい。
香織さんと話していて決勝の内容は少し流し見したぐらいだったのだが、優勝はアイシスさんだった。
「アイシスさん、優勝おめでとうございます。初めてプレイしたはずなのに、凄いですね」
「……ありがとう……うん……でもこのゲームって……凄いね……死の魔力の影響がないぐらいに離れても……一緒に遊べるのは……嬉しい」
本の話題になることが多かったからか、アイシスさんとはゲームで遊んだことは無かったはずなので、今回のゲームに関してもアイシスさんは初めてのプレイである。
第一回トーナメントの時に練習していたとはいえ、勝ち上がって優勝を手にするレベルにまで上達してるのは凄いというか……決勝をチラッと見た限りでは、それこそリリアさん並みに上手くなってる気がする。
クロやアリス曰く六王はリリアさんに匹敵するレベルの才能の塊って話だったので、それがいかんなく発揮された感じだろうか?
「そんなに気に行ってもらえるなら、もっと早く一緒にプレイしておけばよかったですね」
「……そんなことない……いまこうやって……新鮮な気持ちでカイトと遊べるのも……凄く……嬉しいから……これはこれで……よかった」
そういってはにかむように微笑むアイシスさんは大変可愛らしく、本当に天使のようだった。ともあれ、このまま長々と話しているわけにはいかないので、改めてエキシビジョンマッチの開始である。
今回は第一回のクロの時ほど実力に差は無いということで、カナーリスさんは俺のキャラのステータスを2倍ぐらいに設定し、実際にかなりいい勝負になった。
経験値などでは俺が上回っているが、単純な反応速度はアイシスさんの方が上なので、なんだかんだで2~3倍ぐらいの調整が丁度いいかもしれない。
最終的には僅差で俺が勝利したものの、アイシスさんは終始楽しそうだったし、手を抜いてたりというわけではないだろうが、俺が勝利したことに関しても凄く嬉しそうだった。
『さぁ、これで第二回のエキシビジョンマッチも終わりましたので、第一回で決勝に進んだ方たちもお休み解除です。第二回の決勝進出者は同様に一回お休みなので注意してください。第三回トーナメントの受付は5分後から開始します』
エキシビジョンマッチが終わり、注目が第三回トーナメントに向き始める。なんだかんだで第一回、第二回を経て、参加者たちもこのゲームをある程度分かってきた感じで、参加者はもちろん観戦も盛り上がっているように思える。
俺はというと、エキシビジョンマッチ後に少しアイシスさんと会話をしていた。
「アイシスさんは、またゲームをプレイしに行くんですか?」
「……ううん……いっぱい集まってるから……さすがにもう……死の魔力の影響がないぐらいに距離を取るのは……難しい」
「ああ、そっか、5mってなんだかんだで広いですしね」
できればアイシスさんにはもっと楽しんでほしいところではあるが、5m以上の距離を離さないといけないと考えると、中々に難しい部分もある。
「はい。そんな時に大変便利なゴッドの登場です」
「……カナーリスさん?」
「たはぁ~自分気の利く有能部下を自称しておりまして、こちら、お悩みを解決する品です」
唐突に表れたカナーリスさんは、なにやらブレスレットのようなものをアイシスさんに手渡した。
「……これは?」
「こちらは、アイシスさんの死の魔力を体の周囲50cmほどの距離に留めるブレスレットです。こちらがあれば距離の問題はある程度解決かと思います。たはぁ~いや、自分のゴッドパワーであれば他にもいろいろできるんですが、これ以上影響を少なくするにはアイシスさん自身になんらかの手を加えなければいけないので……ネピュラさんの受け売りですが、なにもかも与えるばかりが相手のためになるわけではないんですよ。将来的にも制御できる見込みがないなら別として、アイシスさんの場合は後々死の魔力をコントロールできるようになるわけですから、安易にあれこれし過ぎると成長に機会を奪ってしまうということで、こんな感じの処置にしました」
「……え? ……あっ……じゃ、じゃあ……これを付けてれば……50cm以上離れておけば……怖がられないの?」
「はい。安心のゴッド製品なので効果のほどは保証しますよ」
「……あ、ありがとうっ……」
「お礼でしたら自分ではなく快人様へどうぞ~。快人様がアイシスさんの死の魔力をなんとかしてあげたいなぁって考えてなければ、自分が動くことは無かったですので……たはぁ~実は意外とドライな部分もあったりして申し訳ない! というわけで、自分はこれで~」
楽しげにそう告げた後カナーリスさんは姿を消して、アイシスさんは目に涙を浮かべながらそっと俺に抱き着いてきた。
「……カイト……ありがとう」
「俺というか、カナーリスさんのおかげではありますけど……でも、本当によかったです」
「……うん……カイトのおかげ……ありがとう……大好き」
もちろん完全に解決というわけではないが、50cmまでに影響の範囲を抑えられるとなると、それこそいままでは難しかったアイシスさんと一緒に街に出かけたりとか、そういうこともできるようになるので、考えるだけでも今後が楽しみだ。
本当にカナーリスさんには感謝しかないので、また改めてお礼を伝えておこう。
シリアス先輩「……なんてことしてくれたんだゴッド……アイシスに街デートとかいう選択肢を追加するんじゃない……」




