宮間快人生誕記念パーティ㉕
シロさんとエデンさんの睨み合いに関しては、本当にあまり大した内容ではなかった。というか、本人たちもそれを自覚していたので素直にリリアさんたちに謝罪したのだろう。
まぁ、謝罪された側のリリアさんたちは寿命が縮む思いだったであろうが……とりあえずは解決と言っていいだろう。
「というか、そもそもリリアさんになにを聞こうとしてたんですか?」
「誕生日プレゼントを複数回贈る行為は問題かどうかを聞こうと思っていました」
……俺に関わることっぽいな。う~ん、これはたぶんシロさんは最初に俺にプレゼントを渡したわけだけど、そのあとで他の人のプレゼントとかを見てていいプレゼントを思いついたが、誕生日パーティ的に同じ人物が二回プレゼントを渡すのが有りか無しかをリリアさんに聞きにきたらしい。
「……別に、誕生日と関係なく後日普通のプレゼントとして贈ったらいいのでは?」
「……その発想はありませんでした」
どうしても誕生日に渡さないといけない品なら別ではあるが、それ以外なら後日でも問題なさそうだと思って告げると、シロさんは短く瞬きを二回して驚いた様子だった。
ともかく、これでこの件は一件落着と言っていいだろう。早期に止められたおかげで、あまり注目も集めてないというか……アリスやフェイトさんが上手く実況で興味を引いてサポートしてくれたのか、多くの参加者はゲーム大会の方を見ている様子だった。
「では、リリアにもう疑問は解決したと……」
「あっ、俺の方から伝えときますのでシロさんとエデンさんはもう戻っても大丈夫ですよ」
「そうですか? では、よろしくお願いします」
これで追加でシロさんから声をかけられるとなると、リリアさんたちの胃が心配過ぎるのでとりあえずシロさんとエデンさんには戻ってもらって、リリアさんたちの方を向く。
「えっと、お待たせしました。なんというか、大変でしたね」
「……本当にカイトさんが来てくれて助かりました」
「というか、珍しい組み合わせですね」
リリアさん、エリスさん、香織さんという組み合わせはなんというか珍しい。いちおう香織さんはリリアさんともエリスさんとも面識があるが、リリアさんとエリスさんは……ああいや、でも、どっちも貴族だしパーティとかで面識があったと考えると不思議ではないか……。
「リリア公爵とカオリさんとは偶然お会いした形ですね。本当に少し前の話ですが……」
「うん。ただなんかいま、私だけかもしれないけど、リリアさんとエリスさんとは仲良くなれそうな……そんな予感をヒシヒシと感じたよ」
「奇遇ですね。私もです」
「私も不思議と、共に辛い戦いを乗り越えたかのような感覚が……」
どこか遠い目をしながら告げる香織さんに、リリアさんとエリスさんも同意する。なにを悟ったような表情であり、なおかつその話題に変にツッコミを入れるとリリアさんに叱られそうな気がするので、これ以上は触れないでおこう。
とりあえず三人が大丈夫ということが分かったので、カナーリスさんに再び元の席に戻してもらった。
そしてチラリとゲーム大会を見ると、もうすぐ決勝が始まるっぽいのでプレゼントをあとひとつ受け取ったら小休止してエキシビジョンマッチに備えよう。
『水原香織』
……う~ん。さっき見た気がするというか、確実に会った。
なんとも言えない気持ちになっていると、直後にアインさんに連れられて香織さんがやってきた。
「……えっと、さっきぶりですね」
「早い、なんて早い再会……ああいや、ゲーム大会の方が盛り上がってるタイミングの方が注目集めなくて、私としては嬉しいけどね」
「そういえば香織さんはゲーム大会には参加してなかったんですか?」
「私、対戦ゲーム苦手なんだよね。音ゲーは得意だよ。ゲーセンで何度か遊んだことあるしね。なにせ、私は召喚された時は華の女子高生だったからね! いまは三十路が近付いて震えてるけど……」
「正直香織さんが三十路前って聞いてもあまりそんな感じがしないですね。見た目とかもそれこそ俺より年下に見えるぐらい若く感じますが……」
「快人くん、本当にそういうとこ素敵だよ。これからもそういう感じでよろしく……あっ、誕生日プレゼント渡さないとね。はいこれ!」
というかなんか、気のせいかもしれないけど初めて会った時より若く見えるような気もする。なんだろう? 肌の艶がよくなったとかそんな感じだろうか……いや、完全になんとなくだけど……。
ともあれ気を取り直した様子で香織さんが差し出してくれたプレゼントを受け取る。
「ちなみに中身はちょっといい感じの箸だよ。快人くんは私生活でもたびたび和食食べることがあるって言ってたし、そういうときとかに使えるといいかなぁ~って」
「ありがとうございます。確かに箸って売ってる店が全然なくって、あんまりデザインとかを選ぶ余地も無かったのでありがたいです」
いちおう異世界人が米を好んでおり各国で少量栽培しているということもあって、箸を売っている店自体は存在するのだが、本当に隅っこにちょこっと置いてあるような感じだ。
思い返してみれば、香織さんの店の箸って結構和風でいいデザインのやつだったし、店を開くにあたっていろいろ探したと言っていたのでその時にいい店を見つけたのかもしれない。
シリアス先輩「これアレだよな? たぶん香織はすっかり忘れてて聞いてないだけで、オリビアが祝福っぽいことをしたってのが関係してるよな?」
???「完全に関係してますね。その影響で肌が若返ってる感じですね」




