宮間快人生誕記念パーティ㉓
時折ゲーム大会を観戦しつつプレゼントを受け取っていき、そろそろ第二回大会も決着して俺の出番があるかなぁと考えていた。
ちなみに今俺が引いたのは『EX1』であり、割と高い頻度でEXを引いている気がする。
「そういえば、カナーリスさん。このEXに振ってる番号って、俺がくじで引いた順番とかですか?」
「ああいえ、その番号は単純にプレゼントが届いた順に振ってますね。例えばEX5は快人様が2番目に引いた世界創造主ですが、誕生日プレゼントにかなり悩んでたみたいでプレゼントが届いたのは最後になりましたね。たはぁ~適当な順番決めで申し訳ない」
「なるほど、けど、わざわざ他の世界からプレゼントを贈ってくれるなんてありがた……うん?」
プレゼントを届けてくれたカナーリスさんと軽く話しつつ会場に視線を動かすと……なんというか、この世の地獄みたいな光景が目に留まった。
シロさんとエデンさんが静かに睨み合っており、なぜそこに居るのかは分からないが、リリアさんと、エリスさんと、香織さんが近くで青ざめた表情を浮かべていた。
特にエリスさんがやばそうというか、エデンさんは立ち位置的に我が子である香織さんを庇うような立ち位置で、リリアさんはシロさんの近くにいて……エリスさんはなんか、シロさんとエデンさんの中間と言っていい位置にいた。
シロさんやエデンさんの魔力は上位者のものであり、かなり強烈な威圧感を与えると聞いた覚えがある。まぁ、本人たちがある程度調整はできるだろうが、険悪さを感じる状態だと互いに威圧し合っているといってもいいかもしれない。
エデンさんが我が子である香織さんを威圧したりはしないだろうし、リリアさんはそもそも伯爵級並みに強い……そんな中で、シロさんとエデンさんの静かなぶつかり合いともいえる威圧感の中にいるエリスさんは、本当にいまにも気絶しそうな顔色というか……むしろよく持ちこたえてるものだと思ったレベルだ。
幸いだったのは、まだ周囲に騒ぎが広がったりはしておらず、本当にその一角だけという感じなので、いまの内に抑えれば大きな騒ぎにはならないだろうという点だった。
「……カナーリスさん、すみません。ちょっとあそこに連れて行ってもらえますか?」
「はいはい、お任せを。移動に便利なゴッドです」
アインさんに頼むという手もあったのだが、シロさんとエデンさんが睨み合ってる場所にアインさんが近づけるのか分からなかったので、確実に行けるであろうカナーリスさんに頼んで座っていた椅子から立ち上がる。
するとその直後に俺はシロさんとエデンさんの間に出現していた。
「……落ち着いてください、シロさん、エデンさん……いや、なにがあったかはしりませんが、とりあえず喧嘩は止めてください」
「カ、カイト様……」
丁度エリスさんの近くだったこともあり、その表情が見えたが……救世主が現れたかのような表情をしていた。うん、気持ちは凄く分かるというか、相当恐ろしかったと思うので早めに気付けてよかった。
「うん? 別に喧嘩をしていたつもりはありませんが……」
「ええ、交渉に近いものであったと認識しています」
「ふたりがそのつもりでも、シロさんとエデンさんが睨み合ったら周りの人たちはたまらないので、止めてください。どうしても交渉したいのであれば、別の場所でお願いします」
ふたりの反応でなんとなく状況は分かった。以前の新築記念パーティの時の似た状況なのだろう。あの時もエデンさんがなにかを要求してシロさんがそれを拒否しており、あくまで両者としては意見の食い違いによる交渉で落としどころを探っていたのだが、周囲にしてみれば世界の危機と言えるレベルだった。
今回もたぶん似たようなものだろう……俺の言葉を聞いたシロさんとエデンさんは視線を動かして、リリアさん、エリスさん、香織さんを見た。
「……むっ、確かにこれは……威圧する気はありませんでしたが、少々配慮が欠けていたかもしれません」
「そうですね。私も、我が子に関わることと思い熱くなりすぎていたようです」
別にふたりとも悪気があったというわけではなく、リリアさんたちの様子を見て知らず知らずのうちに周囲を威圧していたことに気付いたのか己の非を認めた。
なんというか、この辺りも含めてシロさんとかも凄く成長しているなぁと実感する。
「短絡的な行動でしたね。謝罪します」
「私も、せっかくの愛しい我が子の生誕祭にて険悪な空気を作ってしまい、申し訳ありません」
「「「ッ!?!?」」」
だからといって、シロさんとエデンさんが頭を下げると、それはそれで三人にとっては大事件になっちゃうので……できれば、その辺にも配慮してほしかったなぁ……。
シリアス先輩「颯爽とヒロインたちを救いに現れる様は、流石フラグ王と感心したが……最後に胃を消し飛ばすような一撃を喰らわせやがった。これが、胃痛のスペシャリスト……」




