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宮間快人生誕記念パーティ⑳



 冥王クロムエイナは基本的に六王の中でもリリウッドと並んで温厚であると知られており、気さくな性格や食べ歩きが趣味ということもあって、人界にも慕う者が非常に多い存在だ。

 しかしその反面、豪華な催しにはあまり興味が無いのか、それとも国家内ないし国同士のパワーバランスを考慮してか、貴族や王族が主催するパーティなどには本人が参加することはほぼ無く、代理を立てて参加している場合が多いため、クロムエイナと話したことが無いという貴族は多い。

 エリスもそれに該当し、少なくともエリスが生まれてからいままでの間に彼女が参加した夜会やパーティ等にクロムエイナ本人が参加していたことが無いため、これが完全に初対面だった。


「クロム様! この人は、カイトクンさんのお友達のエリスさんですよ!」

「ああ、カイトくんから話を聞いたことがあるよ。一度話してみたいなって思ってたんだよ」

「ッ!? ……魔界の慈悲深き王にご挨拶申し上げます。アルクレシア帝国ハミルトン侯爵家嫡子、エリス・ディア・ハミルトンと申します」


 クロムエイナの言葉を聞いて、エリスは洗練された美しい所作で最上の礼を持って挨拶を行った。だが、その内心はほぼパニックと言っていい状態だった。


(はえぇぇぇ、な、なぜ!? どうして私は挨拶を許可されたのですか……カ、カイト様の友人という紹介をされたから……ですよね。ほ、本当にあの方の影響力はなんて桁違いな……)


 相手は事実上の魔界のトップともいえる存在であり、エリスの立場ではこういった場で会っても正式な挨拶をするのは難しい。というより、迂闊に挨拶などをしてクロムエイナの行動の邪魔をしてしまっては、たとえクロムエイナ自身が気にしなかったとしても貴族としてはほぼ終わりと言っていいレベルの不敬であり、エリスやハミルトン侯爵家を蹴落としたい相手にとってのいい攻撃材料となっただろう。


 この場においてクロムエイナが「話の邪魔をしてごめんね、少しラズと話してもいいかな?」とか、ラズリアの紹介に対して「そうなんだ、よろしくね」といった簡潔な返答であったなら、エリスは正式な自己紹介や挨拶はせずに一言二言だけ言葉を交わして去るつもりだった。

 しかし、ここでクロムエイナが「話してみたい」という言葉を口にしたことにより、いわば交流を許可されたと言っていい状態であり、そのためエリスは家名も含めた正式な挨拶を行った。


「ボクはクロムエイナ、よろしくね。クロムって呼んでくれていいよ、そう呼ぶ子たちが多いしね」

「こ、ここ、光栄です。クロム様」


 挨拶を許可されるどころか、愛称で呼ぶことも許されるという状態になり、さすがのエリスも鉄壁の微笑みが崩れかけていた。

 もちろんそうなった要因は快人である。クロムエイナにとって快人は特別な存在であり、全幅と言っていい信頼を寄せる相手だ。その快人が好意的に接している友人というのであれば、クロムエイナにとっても友人と言っていい存在であり……つまるところ、現在のクロムエイナの対応としては、エリスに対して新しい友人という扱いで接していた。


 もちろん接されている方のエリスは、なぜ初めからそんなに厚遇されているのか分からず、いまにも泡を吹きそうな心境だったのだが……。











 エリスが胃を痛めつつクロムエイナとの会話を行っている時、少し離れた場所ではリリアがなんとも言えない表情を浮かべていた。


「お嬢様? どうかしましたか?」

「……いえ、なんでしょうね。話したことは無い相手なんですが……エリス令嬢とは、なにか凄くシンパシーを感じると言いますか……見ててこっちの胃まで痛くなりそうです」

「あ~言われてみれば、どことなくお嬢様に近しい状態かもしれませんね。まぁ、でも、大丈夫ですよ。お嬢様にはまだまだ、後々にミヤマ様目当てで襲来するであろう異界の神々との対面という、今後においても胃を痛め続けられる盤石な布陣が完成しておりますので……他人事のように見てられるのはいまの内だけです」

「恐ろしいことを言わないでください!? というか、その件に関しては必死に考えないようにしてるんですから!!」

「……目を逸らしたところでいずれやってくるでしょうに……」


 エリスに対して親近感を抱きつつも、同時にルナマリアが口にしたのちの己に降りかかってくるであろう胃痛を考え、リリアは無意識に軽くお腹を撫でた。

 とりあえず、束の間の平穏といえるいまの内にしっかり休んでおけと、そんな風に胃を労わるように……。




シリアス先輩「そうなんだよ。快人の好感度をガッツリ稼いじゃってるから、他の連中からの評価も上がってて初期値に物凄いブーストがかかってるせいで、アタフタしてるってのは……リリアも同じ感じか……」

???「というか厳密にいえば、クロさんにしてみれば初対面じゃないんですよね。別次元のハイドラ王国の建国祭で声かけられてますし、クロさんにしてみれば『ああ、あの時の子がそうなのか』って感じでしょうけど、エリスさんの方は記憶を引き継いでないので初対面って感じに対応してますね」

シリアス先輩「まぁ、どっちにせよラグナの場所聞いただけだし、ほぼ初対面で間違いないけどな」

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― 新着の感想 ―
やはり胃痛神リリアは別格だね
エリスさんという次世代胃痛戦士が爆誕したけど初代胃痛戦士は更なる歴戦達との邂逅が待っている…やっぱすげえぜリリアさん! いつか胃痛戦士慰労会と言う飲み会(お茶会とか優雅なのじゃないヤツ)ひらかれないか…
異界の創造神たちと対面。 リリアの影響力が本人の意図してないところで人界の三王どころか六王、最高神に並ぶくらいになりそう。特異点の近くにいたばっかりに不憫な。
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