宮間快人生誕記念パーティ⑰
ガラポン抽選機でエリスさんを引いたことで、アインさんが声をかけて来てくれ、ほどなくしてエリスさんがやってきた。
「こんにちは、カイト様。本日はおめでとうございます。心よりの祝福を」
「ありがとうございます。エリスさんはさっき、トーナメントで決勝に進出していましたね」
「組み合わせに恵まれる形でしたね。さすがに決勝に進んでしまったのは胃の痛い思いでしたが、異世界の娯楽を体験できる機会があったのは喜ばしいです。侯爵令嬢として日々知識は集めるようにしていましたが、まだまだ私が知らないものも多いのだと実感しました。カイト様の腕前は見事なものでしたね。冥王様との一戦はとても素晴らしかったです」
「あのゲームは俺の居た世界でも結構人気があって、それなりにプレイ経験があったおかげですね」
エリスさんは穏やかな微笑みで、嫌味なく自然と会話を繋げてくれる。前々から思っていたけど、エリスさんは会話が上手いというか、やはりその辺りは貴族として社交の場などで対話スキルを磨く機会が多いからか、話していて楽しいし会話が弾むと実感できる。
エリスさん自身の人柄がいいのも要因だとは思うが、とにかく話しやすい人だと感じる。
「……失礼、本題の前に話し込んでしまいましたね。改めまして、誕生日おめでとうございます。ささやかではありますが、プレゼントを持参させていただきました」
「ありがとうございます……あれ? どことなく見覚えがある形状の魔法具……これって、持ち運びできる別荘と同じタイプの魔法具ですか?」
エリスさんがプレゼントとして渡してくれたのは、大きめのカバンのような形状の魔法具だった。俺も六王祭でアイシスさんが落札してくれたものや、アニマと出かけた時に使ったコテージタイプのものなどを所持しているので、それに近い形状の魔法具に思えた。
「ええ、それに近いものです。ただ、建物というわけではありません。こちらは、ペットと一緒に遊ぶことが出来るアスレチックと、そう思っていただけると分かりやすいかもしれません」
「え? そんなのもあるんですね……」
「アルクレシア帝国ではモンスターレース場が有名なことも含めて、魔物をペットとして飼っている貴族などの数も他と比べて多いのです。なのでそういった魔物のペット向けの商品などもそれなりにありまして、こちらもそのひとつですね。以前お伺いした話で、カイト様のペットのベヒモスはカイト様を乗せて走るのが好きだと仰られていたので、そういった騎乗可能な魔物に向いた遊具が入っているものを選びました」
確かに、以前ニフティのカフェに行った時の雑談でベルの背に乗って散歩をしていると話した覚えがあるが、エリスさんはその会話を覚えていて、それに合わせたものを用意してくれたみたいだ。
「こちらは展開するのにそれなり以上に広く開けた場所が必要になるので、本来はあまり贈り物に向いた品ではないのですが……カイト様であれば、そういった場所に関しては問題はないであろうと判断しました。本来であれば騎乗して遊ぶ遊具ばかりなのですが、カイト様は白竜もペットとして飼われているとのことだったので、こちらで多少手を加えてベヒモスと白竜のどちらも遊べるように調整させていただきました」
「お、おぉ……凄い。確かにベルやリンをもっとノビノビ遊ばせてあげたいなぁって思ってたので、これは本当にありがたいです。いまから使うのが楽しみです」
「喜んでいただけたのなら、私としても喜ばしいです」
いや、これは本当にかなり嬉しいというか……ベルやリンが遊ぶ用の遊具などが市販されているというのを知れたのも大きい。
シンフォニア王国ではブラッシングなどの用品は別として、遊具類はあまり売ってなかったり、売っていたとしても小型の魔物用のものだったりしたので、アルクレシア帝国では大型の魔物や騎乗できる魔物用の遊具を売っていると知れたのは大きい。
ベルとリンも喜ぶだろうし、本当にいまから使うのが楽しみである。
「あっ、そうだ。もしエリスさんさえかまわないのであれば、また都合のいい時にでも俺の家に遊びに来ませんか?」
「ひゅっ……あ? え? えっと……カイト様のお宅にですか?」
「ええ、ベルやリンのことも紹介したいなぁと……もちろん無理にとは言いませんが……」
「それは大変に光栄ですが、私などが訪れても大丈夫なのでしょうか? ご迷惑だったりは?」
「もちろん、エリスさんのことは本当に大切な友人で、心から信頼できる人だと思っているので、遊びに来てくれると嬉しいですよ」
「あ、あの、カイト様、発言を……ご自身の発言力を……あ、いえ、ありがとうございます。カイト様が、よろしいのであれば是非」
一瞬遠い目をしたエリスさんだったが、すぐに穏やかな笑みを浮かべて頷いてくれた。実際エリスさんが遊びに来てくれたら嬉しいし、今回いいプレゼントをもらったのでその際にはいいおもてなしでもできればいいなぁとは思う。
シリアス先輩「伯爵級最上位とか、その辺の連中は別に普通にこの会話聞こえてるよな?」
???「そうっすね」
シリアス先輩「……快人からそれだけ信頼されている貴族が居るのなら、交流を持とうって思うような六王幹部とかも居るよな?」
???「居るでしょうね。特にアルクレシア帝国に関わりがあったりする方とかは……」
シリアス先輩「いや、本当に無駄に優秀というか、今回のプレゼントとかもしっかり快人が喜ぶものを選んでるんだよな。というか、ペットを溺愛する快人が喜ぶプレゼントを渡しつつ、合わせてアルクレシア帝国に対する快人の興味も高めているって凄い大正解のムーブしてるんだけど……その結果として快人からの好感度もガンガン上がって、善意による胃痛を喰らっていると……エリスがまた胃痛喰らう予感が……」




