宮間快人生誕記念パーティ⑯
順番に誕生日プレゼントを受け取りつつ、途中で第二回トーナメントの方も眺めてみると、第一回に比べて進行が遅めというか、白熱した戦いが多いように見える。
練習期間などを経て参加している人や、第一回トーナメントである程度コツをつかんだ人などがいい勝負をしているので一戦一戦が長めになっているのだろう。
その中で第一回とは別で上手さに関して目を引いたのも何人かいた。まず、アイシスさん……普通に上手い。派手な戦い方はしていないのだがとても堅実というか、遠距離攻撃が得意なキャラで距離を保ちつつ着実に戦いを進めている感じだった。
今回のゲームはワイヤレスコントローラーなので、アイシスさんも死の魔力の影響がない程度の距離を保ちつつ、普段は交流できないような相手とも一緒に遊べているので、なんだかんだでかなり楽しそうにしている。
そして、ブロッサムさんもかなり上手い。リリアさんやウルほどとは言わないが、短期間でかなりの腕前になっており、もう一端のプレイヤーと言っていいぐらいにはしっかり操作できていた。
だが、ところどころで「こ、これが伝説のイアイ!? す、すごい!!」だとか「真のサムライは斬撃に雷を纏わせる!? な、なるほど勉強になりますね……」とか、侍っぽい風貌のキャラを使って結構大げさに騒いでおり、ところどころで隙を晒していた。
というか、確かに使ってるキャラは侍系のキャラだが……刀に雷を纏わせたりしてるのは、ゲームキャラだからであり、実際の侍がそんなことをしている訳ではないのだが……ま、まぁ、ブロッサムさんにとっては貴重な本場の侍を見れる機会なのだろう。
そして意外だったのは、この手のトーナメントに熱中しそうなメギドさんが参加しておらず、ずっと練習スペースに居ることだった。しかも、コツコツ練習をしているというわけではなく、いろんな人がプレイしているのを見てしきりに感心した様子で頷いていた。
「メギドさんはなにしてるんでしょう?」
「先ほどから『なるほど、これはよくできてやがるな。肉体や魔力に差がある者同士でもかなり近い条件で競い合えるのか、面白れぇが……再現するのは難しいか? いや、疑似戦闘するような部分だけ再現できればあるいは……だが、大規模になりすぎるか?』と呟いていますね」
「あ、ああ、なるほど、ああいう競い合う感じのゲームは好きそうですし、魔法具とかで再現できないかを考えてるんですね」
「そのようですね。メギドは最近、異世界の歌合戦というものの大会を開いたり、異世界の勝負ごとに関心を強く持っている様子ですね」
……ハーモニックシンフォニーで気に入ってたUTA合戦か……どうやら本当に専用の施設を作ったらしい。メギドさんらしいと言えばメギドさんらしいし、この場の遊びで終わらせるのではなく後に繋がるようなことを考えているのはかなり凄いとは思う。
どういうものを作る気かは知らないが、アインさんが教えてくれた独り言から察するに、肉体的な強度に差がある者同士でも対等に戦えるような……ような……。
「……アインさん、俺の気のせいだと思いたいんですが、メギドさんってなんで身体能力とかに差があっても互角に戦えるものに興味をもってるんですかね?」
「おそらく、カイト様が予想している通りかと……カイト様と互角の条件で勝負したいのでしょう。どうにも以前と比べてメギドは、カイト様にかなり強い関心を抱いているというか……どうやって肉体関係に持ち込もうか画策しているというか……たびたびその件でクロム様に説教をされています」
「……な、なるほど……」
とりあえず行程を吹っ飛ばして、まずは肉体関係をという思考なのがメギドさんではあるが、度重なるクロやアリスの説教によって、メギドさんなりに作戦は考えているっぽい。
まさか、白熱した戦いをするして、互いに気分が高揚して、戦いの後の火照りをどうこう……なんてほぼ捻ってはない一直線な作戦では無いと願いたいというか……そうだった場合、またメギドさんは説教されそうなのだが……と、ともかく、真剣にアレコレ考えているためトーナメントには参加していないっぽい。
なんというか、とりあえず現実から目を背けつつ、ガラポンを回すことにした。
『エリス・ディア・ハミルトン』
あ、次はエリスさんか……これは、少しホッと息をつける時間になりそうだ。
シリアス先輩「第一回の決勝進出者だから第二回は参加しなくて済んでホッとしているところに、ボディブローを叩きこもうとしている悪魔……」




