宮間快人生誕記念パーティ⑮
さて第一回のトーナメントが終わり、次は第二回のトーナメントが始まる。最初は様子見をしていた人たちも参加し始めるので、先ほどの第一回戦よりは参加人数は多くなりそうだ。
あと、決勝戦まで進んだ人は次のトーナメントには参加できず一回休みとなるみたいで、クロ、アメルさん、ウル、エリスさんは今回は観戦である。
まぁ、クロは一度優勝して満足したみたいで、この先はトーナメントには出ずにまだ慣れてない家族たちに指導しつつトーナメントを観戦するらしい。
そして、第二回の参加者が多いということは俺のエキシビジョンマッチまでも時間がかかると思うので、ここでプレゼントのガラポンを進めていこうと思ってガラポン抽選機を回す。
『EX4』
おっと、ここでまたEXを引いた。これは別世界の世界創造主の方からのプレゼントだっけ? となればアインさんに呼んでもらうのは、カナーリスさんか?
そう思った直後、俺のすぐ隣にはカナーリスさんが出現しており、包装された包みを差し出してきた。
「EX4はこちらですね」
「あ、ありがとうございます……これは……ニット帽ですかね?」
受け取った包みを開けてみると、中には暖かそうなニット帽が入っていた。これにもなにか物凄い効果があったりするのだろうかと、そう思ってカナーリスさんの方を向く。
すると、カナーリスさんは俺の疑問を察したのか、このニット帽についての詳細を教えてくれる。
「はい。そちらのニット帽ですが、手編みで頑張って編んだらしいです……以上です」
「え? うん?」
「あ~快人様の考えていることは分かります。アレですよね。世界創造主が作ったものだから、さっきのやつみたいな人知を超えた不思議な効果があったりするのでは? と、そんな感じですよね? たはぁ~それが、世界創造主も力というのはピンキリでして、自分とかは全知全能級なんですが、中には他の能力はからきしですが、世界創造に関する能力だけは高かった。或いは、偶然に他の神が作った創造系のアイテムを手に入れて世界を創造したので、本人の能力は低かったりとかそういうパターンもあるんですよ」
「ああ、なるほど、言われてみれば力に差はあって当然ですよね」
元々アリスが居た世界を作った破滅の大邪神に関しても、本人からあまり能力が高くなく、自分の能力を代償にするような形で世界を作って大半の能力は失ったと聞いた覚えがある。
もちろん人間である俺から見れば、世界を創造できるという時点で凄い力を持っているのは間違いないのだが、世界創造主の中では能力は低めという認識でよさそうだ。
「ちなみにそのプレゼントを用意した世界創造主は後者でして、元々は別の世界創造主が作り見放した世界の生き残りだったんですよ」
「世界創造主が見放した?」
「ええ、呆れた話ではあるんですけど、とりあえず思い付きで世界を作ってみたはいいものの、管理とかに飽きたり興味を失ったりで、消すのも面倒なのでそのまま放置して他所に行ったり、新しい世界を作ったりとかってする無責任なやつも居るわけなんですよ。たはぁ~まぁ、自分も作った世界の管理は知り合いに任せちゃってるので、あんまり言えた義理ではないですが……そういう創造主に見捨てられた世界というのも、たくさん存在するわけなんですよ」
それはまたなんとも寂しい話ではあるが、でも確かにそういう世界があっても不思議ではない。
「で、今回プレゼントを贈ってきた世界創造主は、その見捨てられて荒廃した世界の生き残りが、たまたま世界創造主が残した道具を手に入れて、滅びかけていた世界自体はその子の力ではどうにもできなかったので、その道具で新しい世界を作って元の世界の住民を移り住ませたって経緯で世界創造主になった子ですね。神の作り出した道具を手にしたことで不老不死になったのと、その道具で行えることはできますが、それ以外はほとんど力のない子ですね」
「それはまた、なんとも凄い経歴ですね。それで、手編みのニット帽を……」
「ええ、他の世界創造主に頼んで快人様の世界の情報を教えてもらって、自分でも作れて材料が己の世界にも近いものがあるのを選んで作ったみたいです。では、預かっているメッセージをお伝えしますね……『お誕生日おめでとうございます。急に凄い立場になっちゃって、私がそうだったみたいにいろいろ困惑したり気疲れしてしまったりしていないか心配です。見知らぬ相手からの唐突な贈り物に困惑するかもしれませんが、その世界以外にも貴方の事を想う者がいると知ってもらえたら嬉しいと思ってプレゼントを用意しました。これからも無理をしない程度に頑張ってください』……とのことです」
「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますと伝えてください」
「はい。承りました」
きっと滅びゆく世界の中で友人や家族を守りたいと世界創造主になった方なんじゃないだろうか? メッセージからもなんとなく優しい方だと感じられる気がした。
本当に……心が温かくなるような、とても素敵なプレゼントだった。
『世界創造主になった少女』
創造主が見放し、荒廃して滅びゆく運命にあった世界で偶然世界創造主が世界を創造する際に使用し、そのまま放置した道具を手に入れた少女。なんとか元の世界を救おうとしたものの、そういった用途の道具ではなく世界を救うことはできず、代わりに新しい世界を創造して住民をそちらに避難させた。世界創造主の作った道具を使った代償により、性質だけは世界創造主に近くなり不老不死となった。その後、無断で己の道具を使ったことに怒った元創造主が襲来したのだが、たまたま近くにいたネピュラが元創造主を一蹴。少女から事情を聞いたネピュラが、その圧倒的な力によって滅びた世界を修復し、少女が作った世界と融合させて自由に行き来できるように改良し、管理を行うための道具も作り出して少女に無償で与えた。そういった経緯があってネピュラを慕うようになった世界創造主。世界の管理に必要な力は道具として所持しているのだが、素の能力は快人と比較してもほぼ変わらないレベルに低い。ネピュラ復活のきっかけとなった快人には心から感謝しているし、境遇的にシンパシーも感じている。なお、所属しているファンクラブはガチ恋勢が集まっているファンクラブ。




