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宮間快人生誕記念パーティ⑬



 天然を炸裂させてとんでもない強化をしてきたシロさんに猛然と抗議していたクロだったが、少しするとどこか諦めたような表情で溜息を吐いた。


「……はぁ、まぁ……分かってればやりようはあるから、再開しようか……行くよ、カイトくん!」

「え? あ、ああ……」


 一度仕切りなおしてステータス調整をやり直したほうがいいのではとも思ったが、クロは勝算があるらしく再び俺のキャラに向けて接近してくる。

 どうすべきかと少し迷いつつも先程と同じく牽制の攻撃を打つと、クロはガードからのステップ移動の際に発生する無敵時間を利用してその攻撃を回避し、俺のキャラに肉薄する。

 出の早い牽制に無敵回避を合わせるのはかなり難しいテクニックのはずだが、それをサラッと決める辺りクロの上手さが伝わってくる。


 そして、クロのキャラが俺のキャラに強攻撃を当てるが……ダメージは1だった。そっか、防御力も50倍になってるのか、そりゃダメージは碌に通らないに決まってる。


「……やっぱり、普通の攻撃じゃ駄目みたいだね。それならっ!」

『おっと、クロさん、ここでカイトさんのキャラから大きく距離を取って……ランダム出現の武器アイテムを拾いましたね』


 なるほど、その手があったか……このゲームは時間経過などでステージに様々なアイテムが出現するのだが、その中に武器も複数存在する。

 そしてこの武器アイテムのダメージは、キャラクターの防御力に依存しない武器ごとの固定数値なので、俺のキャラの防御力が50倍であっても問題なくダメージを通すことができる。


 武器によって強さとかも違うし、出現はランダムで武器は一定回数使用すると壊れるのだが、それでも確かにそれならクロの方にも勝算が生まれる。

 立ち回りはクロの方が上だし、俺が若干戸惑って操作がおざなりになっているのもあって、武器によって着実にダメージを与えられ、俺のキャラもHPが300ほど減った。


 うん、これなら俺も普通に戦ってもいい勝負になりそうな気がする。よし、じゃあ、本格的に動く前にクロがアイテム回収に移動した隙をついて回復スキルを使っておこう。

 俺の使っているキャラの技のひとつには少量のHPを回復するスキルがある。回復量はせいぜい50程度だし、長いモーション中に攻撃されると失敗するし、後隙も大きいのであまり使える技ではないが、クロがアイテムを回収している隙に少しだけでも回復をしておこうという算段だ。


 そして思惑通りに、クロの妨害は間に合わず回復スキルが発動し……俺のキャラのHPが『3000』を越えた。


「……シロォォォォ!! スキルも弄ったの!?」

「はい。回復量も50倍、攻撃スキルはガード貫通性能にしました」

「それやられちゃうと、完全にボクの勝率がゼロになるんだけど!!」

「それがなにか?」

「……ボクはカイトくんと戦う前に、シロの方をぶっ飛ばすべきかもしてない……」


 必死に頑張ってダメージを与えたと思ったら、一瞬でそれ以上に回復されるのは絶望的だろう。というか、HPの上限も弄ってるなこれ、999以上になってるし……。


「……シロさん、さすがにこれは不公平すぎるので元に戻してください」

「ふむ、快人さんがそういうなら戻しましょう。HPも先程の数値に戻します」

「ありがとうございます……クロ、ステータスも調整しなおしてもらおうか?」

「いや、それは大丈夫だよ。スキルが滅茶苦茶じゃなければ、戦いようはあるしね。カイトくんも、気にせずに全力できてよ!」


 明るい笑顔で告げるクロを見て、俺も先程までの迷いを消して頷く。クロとしては、凄いステータス差の俺に挑戦する現状を楽しんでるっぽいので、それなら俺も変に迷ったりせずに全力でいこう。

 三度再開された戦闘で、武器を手に持ったクロのキャラが接近してくる。いま持っているのは近接武器……となると、先ほどのように無敵回避を利用して懐に入ってくる可能性が高い。


 そう考えた俺は、先ほど同じ牽制攻撃を放った後、即座に方向スティックを逆に傾けると同時に強攻撃のボタンを押す。

 キャラの向きを変えつつ攻撃を放つことで、ヒットするタイミングをズラす裏打ちというテクニックでの攻撃は無敵時間が切れたクロのキャラを捉え、そのHPを0にして場外に吹き飛ばした。


『おっと、カイトさんの鋭い一撃が決まりました! これでクロさんは残機は1、追い込まれ……おや? ここで、クロさんが再びタイムの合図を送っています』

「……あの……やっぱ、ステータスも調整してもらっていいかな? さ、さっきまでの感じなら大丈夫かと思ってたけど、カイトくんたぶんアメルちゃんとか並みに上手いから、いまのに裏打ち合わせられちゃうなら……さすがに無理かなぁ……って」


 クロの予想外と言いたげな表情を見て、ああなるほどと思った。さっきまではステータスがあまりにも高すぎて、どうするべきかと迷いながら戦っていたこともあって操作が荒かった。そしてクロはそれが俺の実力であると誤認して、それなら50倍のステータス差があっても勝てると考えたらしい。


 だが、俺もそこそこの実力はある。なにせアメルさんと基本的に一緒にプレイしてるのは俺であり、アメルさんの方が強いとはいえ、普通に渡り合える程度の実力はある。


「……シロさん、ステータスも調整してください」

「分かりました。では、5倍で……」

「う、うん。それぐらいならいいかな……即死とかは無くなるし」

「クロ、なんなら仕切りなおすか? いま残機ひとつ減っただろ?」

「……う~ん、いや、大丈夫。このまま続行しよう。攻撃が通るようになったなら、普通に戦えるしね」


 ステータス5倍に残機1ぐらいのハンデであれば、俺のクロの実力差を考えると確かに丁度いいかもしれない。

 クロも一撃死は無くなって、無理に無敵回避とかを狙う必要もなくなるわけだし、地力はクロが上なので本気でやっても勝てるかどうか微妙かもしれない。


 まぁ、勝ち負けに拘る必要は無いし、とりあえずは全力で戦うことにしよう。




シリアス先輩「ちなみに快人の強さってどのぐらい?」

???「アメルさん相手だと勝率は3~4割、リリアさん相手には運の差で9割ぐらいは勝ってますし、ウルペクラさんとやったとしても経験値とゲーム知識の差で7:3ぐらいでカイトさんが有利でしょうね」

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― 新着の感想 ―
性能差ありすぎるとどっちも全然面白くないもんね
固定ダメでちまちまと確実に削っていったHPが回復スキルによって全回なんてされたらコントローラー破壊するわw
更新お疲れ様です!連続で読みました! 第一回のトーナメントの決勝戦はクロさんを始めとした上級者と渡り合う実力者のなかエリスさんも勝ち進んでいた!同時に胃痛の表情が目に浮かんでしまうなw クロさんが勝ち…
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