宮間快人生誕記念パーティ⑩
やはり凄い実力を持つ方々でも……というか、凄い実力を持つ方々だからこそ反応の遅さには苦戦している様子で、企画したアリスの目論見通りになかなか混沌とした様相だった。
ただ気になったのは、シロさんやマキナさんが動く様子もなく大会を見ているので、たぶんだけど優勝者に貰える記念品は先んじてアリスから渡されてるんじゃないかと思う。
シロさんやマキナさんも普通になにもせずに初見でプレイすれば反応速度に苦戦するだろうが、あの辺りはその気になればなんでもできるので、瞬時に熟達といっていい腕前になることも可能なはずだ。なので参戦を防ぐために賞品は先に渡して、ついでになんか上手く言い聞かせたのだろう。
そんなことを思いつつも、ずっとゲーム大会を見ているわけにもいかないのでガラポン抽選機を回して、アインさんに該当の人を呼んできてもらう。
大会に参加中であれば後回しにして次を回そうと思ったが、幸い引いた人は1回目のトーナメントには参加してなかったようだった。
「こんにちは、カイトさん。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。このタイミングで呼んでしまいましたが、大丈夫でしたか?」
引いたのはアンさんであり、優し気な表情で祝福してくれたのでお礼の言葉を返しつつ確認する。すると、アンさんは苦笑を浮かべながら頷いた。
「はい。というか、むしろこのタイミングで呼んでもらえて助かりました。いまは、あちらの大会に注目が集まっているので、こちらとしては凄い立場の方々の注目の中でというような感じにならなくて安心しました」
「あ~言われてみれば、あまり目立ったりしたくない人とかはむしろこのタイミングの方がいいのかもしれませんね」
「それにしても、カイトさんと知り合ってから私の常識は覆されてばかりですね。まさか、自分が異世界に来る機会があるとは、想像すらしていませんでした」
「あっ、そっか、ここっていちおうは別世界になるんですね」
言われてみれば、俺の感覚としてはシロさんとかマキナさんがまたとんでもないことをしたなぁって感じだったが、アンさんたちにとっては初めてトリニィアじゃない別の世界に来たって感じになるのか……。
「はい。この世界は私にとっては凄くいいですよ。明るいのですが、太陽光というわけではないようでして、太陽光に弱い私が肌を隠さなくても問題ないので、過ごしやすいですね」
クルーエル族のアンさんは太陽光に弱く、日に当たると皮膚が赤く焼けてヒリヒリと痛むらしいので、普段は日中は外套で肌を隠している。
ちなみにアンさんの肌は青白い……比喩ではなく、本当に薄い青色の皮膚でありそれがクルーエル族の特徴らしい。なので、トーレさんとかも一目見てアンさんをクルーエル族と判別できたのだろう。
その肌が真っ赤に焼けるとなると、想像するだけでも痛々しいので今回快適に過ごせているようならよかった。
「……改めまして、こちらが誕生日プレゼントになります。周りの方々と比較すると、あまりいい物とは言えないかもしれませんが……」
「そんなことないですよ。アンさんが俺のためにプレゼントを用意してくれたのが本当に嬉しいです」
「そういってもらえると嬉しいですね。中身は、私が採掘した宝石を加工したアクセサリーです」
アンさんが渡してくれたのは小さめの箱であり、確認を取って中を見てみると宝石の付いたピンバッチのようなものが入っていた。
礼服を着る際などに付けるとよさそうなセンスのいいデザインで、俺としてはむしろこのぐらいの派手過ぎないデザインの方が好きなのでありがたかった。
「そういえば、トーレさんとの専属契約の件は上手くいきましたか?」
「ええ、無事に専属契約が結べていままでとは環境が一変しました。組合員たちにもようやく能力に見合うだけの給料を渡せるようになって……本当にカイトさんには感謝してもしきれません」
「トーレさん関連はタイミングがよかっただけで偶然ではありましたが、アンさんの助けになれたのならよかったです」
「本当に組合員たちも喜んで……まぁ、少し飛躍過ぎたりも……」
「うん?」
「ああいえ、前のパーティの招待やゲームの景品でマジックボックスを貰ったことも相まって、私の知り合いの中ではカイトさんは謎の凄い貴族様って認識なんですよ」
直接会ったアンさんとフライングボードのメンバーはともかく、他の人にとっては確かにそういった認識になってもおかしくないかもしれない。実際俺の立場というか立ち位置みたいなのを口頭で第三者に説明するのは難しいだろうし、その辺は仕方がないとは思う。
「まぁ、それで私が貴族に見初められただとか、そんな変な噂が広まったりもしましたね。クルーエル族は横の繋がりが強いというか、皆親戚みたいなノリになることも多いので……」
「あ~そういう変な噂が広まっちゃうことってありますよね。俺も経験があります」
「ええ、カイトさんとしては私のように肌の色も違って、見た目も悪く体も貧相な女との噂が広まっていい気はしないかもしれませんが、あくまでクルーエル族の身内間で冗談めかして広まってるだけなので、ご容赦いただけると助かります」
「ああいえ、まったく問題ないというか……そもそも、俺としてはアンさんの肌は綺麗だと思いますし、見た目も可愛らしくて性格もいい素敵な女性だと思っているので、嫌な気持ちになったりはしないですよ」
「え? あっ、そ、そうですか……そ、そんな風に言われてしまうと、どう返していいか分からなくなってしまうのですが……ありがとうございます。ああ、その、長々と話しても迷惑ですね。私はこれで……」
確かに珍しい青白い肌ではあるが、普通に綺麗な色合いだと思うし、アンさん自身も小柄で可愛らしく普通に美人だと思うのでそれを素直に伝えておいた。
シリアス先輩「またフラグ立ててる……」




