宮間快人生誕記念パーティ⑦
唐突に始まるテレビゲーム大会というなんとも興味をそそられる話に、一度ガラポンを回すのを止めてアリスの説明に集中する。
『では、簡単に……そもそもテレビゲームってなに? って方も多いと思いますので、ザックリと説明しますとカイトさんの居た世界……マキナの作った世界にある遊戯のひとつです。実際に見ながら解説しましょう……こちらです』
アリスがそう告げると、解説席の後方に大きなモニターが出現し、4人まで同時対戦可能な極めて有名な対戦ゲームの画面が表示された。
『物凄くザックリ説明しますと、こちらにありますコントローラーを用いて画面内のキャラを操作する。分かりやすく言えば、魔法具を用いて用意された人形を操作して対戦するようなものと考えて貰えば問題ありません。こちら4人までまとめて対戦可能ですし、ゲーム機自体もなんでも作れるような連中が暇してたのでいっぱい作らせました。特に馬鹿みたいなミュージアムとかいう呪いの館を製造してたやつに重点的に……そんなわけで、4人ずつ複数同時に対戦を進行できるのでテンポはいいと思います』
『……シャルたんってさ、地球神様に対して割と辛辣だよね?』
『アイツは雑に扱っとけばいいんですよ。甘やかすとすぐに調子に乗って暴走始めるので……実際今回も暴走して、変な建物作ってたでしょ?』
『あ、あの、返答に困る話題は振らないで欲しいかな……地球神様はシャルたん相手には甘々対応だからいいとしても、私は変なこと言えないからね』
実際アリスはマキナさんに対する扱いは雑めではあるが、そこは親友同士の気安さというか、気心知れた仲だからこそ成立しているところがある。
というか、フェイトさんの言う通りマキナさんはアリスに対して甘々というか……アリス相手の時だけは、ビックリするぐらいチョロいので、たぶん今回もいいように言いくるめられてゲーム機量産させられたんだと思う。
『……でもさ、シャルたん。異世界の遊戯で対戦するって言っても、爵位級高位魔族とかと一般人じゃ全然違うわけだし、一方的な展開になっちゃわない?』
『おっと、流石フェイトさん、大変いい質問です。普通にガチで殴り合ったりするならそうなりますが、テレビゲームにおいては話は変わってきます。というのも、言った通りこれはカイトさんの居た世界の遊戯なんです。つまり人間を基準……もとい、魔力による身体強化無しの状態の人間族の反応速度を基準に作られているので、強ければ強いほど反応を遅く感じるでしょう』
『そういえば、カイちゃんの世界には魔法とか無いんだったね』
『ええ、まぁ、せっかくなのでちょっとフェイトさんに試してもらいましょう。操作はとても簡単なので……』
やはり息がピッタリというか、アリスとフェイトさんはワイワイと話しながらいい感じに説明をしていき、フェイトさんがテストプレイをしてみるということになった。
このゲームは有名なゲームであり、俺も葵ちゃんや陽菜ちゃんと遊んだこともあるし、それ以外にも数人の知り合いと一緒にプレイしたことがあるのだが、アリスの言う通り皆反応速度にかなり苦戦していた覚えがある。
『……え? なんで? いまガードしたよね!?』
『ボタン押すのが早すぎて、相手が攻撃してきた時にはもうガード解けちゃってるんですよ。タイミングが大事ですね』
『タイミングね。つまり相手の攻撃にしっかり合わせて……えぇ!? なんで当たるの!?』
『フェイトさん的にはばっちりのタイミングだと思ったかもしれないですが、完璧すぎるんですよ。ボタン押してから実際にキャラが行動するまでのラグを計算してないんですよね。ちなみにこのゲーム機は、ボタン押してからそれが画面のキャラに反映されるまで、おおよそ光の速度30万分の1秒ぐらいかかりますね』
『遅くない!?』
『普通の人間にはそれでも早すぎるぐらいなんですが……まぁ、ともあれそういうズレを計算しないと上手く動かせない訳ですし、連打速度も一定以上のスピードは受け付けませんし、分かっていても感覚的に反応してしまったりとかもあるので、少なくとも大会中に完全に適応するのは難しいです……まぁ、一部のバグは別として……』
なるほど、アリスの話を聞いているとそれこそ六王と一般人でもいい勝負が出来そうな感じがする。あとバグというのはたぶんリリアさんのことだろう。実はこのゲームはリリアさんとも一緒に遊んだことがあるのだが、リリアさんは最初の数回ほど戸惑っていたが……そのあとは普通にフレーム単位の操作とかするようになってきたので普通に強かった。
ただ、運が悪いのかステージにランダムで出現するようなお邪魔アイテムやギミックに滅茶苦茶当たったり巻き込まれたりするので、総合的な実力は俺や葵ちゃんや陽菜ちゃんと同じぐらいである。
俺があのゲームを一緒にプレイしたことがある中で、一番上手いのは……アメルさんである。アメルさんは異世界のゲームという時点で興味津々だったし、必殺技とかそういうのを見て目を輝かせていたし、あとなにより友達と一緒に遊ぶというのが楽しいのか、かなりの回数一緒に遊んだ覚えがあるので……たぶん経験値で言えば、この会場内でも最上位といっていいレベルだと思う。
まぁ、カッコいい魅せコンボを狙ったり、必殺技フィニッシュに拘って隙が出来ることも多いので、強いとはいっても無敵ではないので、やっぱりなんだかんだでいい感じの勝負にはなりそうである。
シリアス先輩「簡単操作の4人対戦ゲーム……いったい何乱闘なんだ……」
???「いや、ボン○ーマンという可能性も……」
シリアス先輩「必殺技もコンボもないだろ……」




