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宮間快人生誕記念パーティ④



 まず状況を整理しよう。マキナさんが渡してきたアルバムには、俺や母さんや父さんと一緒にマキナさんが映っており、なんならなにも知らずにアルバムを見たら年の離れた姉とかではないかと思うほど自然に加わっている。

 まぁ、マキナさんであればそういった写真を作ることは容易いだろうが、これをはたしてアルバムと呼んでいいのだろうかという疑問は残る。


 けど、マキナさんが映ってる以外はおかしな点はない。いま映っている写真も、記憶は朧気だが子供の頃に牧場のような場所へ遊びに行った際の写真であり、当時幼かったとはいえこうして写真を見てみると多少なりとも思い出が頭に思い浮かんで……。


――ほら、愛しい我が子、牛さんがいるよ!


――アイスクリーム食べたいの? う~ん、お腹壊しちゃわないように母と半分こしよっか?


――おっと、愛しい我が子は眠たくなってきちゃったかな? だっこしてあげるから、寝てても大丈夫だよ。


 ……おかしいな? 無い筈の思い出が滅茶苦茶鮮明に頭に思い浮かぶんだけど……なんなら、いま頭の中で映像が再生されていると言われても信じるぐらいには鮮明であり、マキナさんとの会話まで全てしっかり思い浮かべられる。


「……あの、マキナさん? 無い筈の記憶が蘇ってくるんですが……これは?」

「おっと、気付いたみたいだね! あっ、心配しないで、愛しい我が子の過去を改変したりだとか、記憶を操作したりだとかそんなことはしてないよ。もちろん、私がその気になれば実際に過去に戻って、愛しい我が子の思い出に加わることはできるけど、愛しい我が子の思い出に貴賎はなんてなくてどれも至高なわけだし、そこに変な手を加えたりはしないよ。というか、仮にそうしようとしたらシャローヴァナルとかが阻止してきたと思うしね……実際にいまの愛しい我が子も、頭に思い浮かぶ記憶が実際のものじゃないってちゃんと認識できてるでしょ?」

「い、言われてみれば確かに、滅茶苦茶鮮明に思い浮かびはしますが、本来はありえないはずの記憶ってちゃんと理解できてますね」


 とりあえず、知らないうちに過去の改変が発生していたり記憶の操作が起こっていたりというわけではないのにはホッとした。

 しかし、そうだとするとこの頭に思い浮かぶマキナさんとの思い出はなんだろうか?


「ふふふ、それこそがそのプレゼントのアルバムの効果なんだよ。そのアルバムを手に持って、写真のエピソードを思い浮かべると、そこに私が一緒にいたという可能性の光景を鮮明に思い浮かべることが出来るようになってるんだよ! つまり、その200ページのアルバムにある愛しい我が子と母の写真は、一種の可能性の世界の光景って感じで、アルバムを手に持っている時だけそれを見ることが出来るって思ってもらうと分かりやすいかな? いってみれば、母との幸せな思い出をいつでも思い浮かべられる……その幸せなひと時こそが、私から愛しい我が子へのプレゼントってわけだね!」

「……な、なるほど」


 ……洗脳用の道具かなにかかな? だが、とりあえずは納得した。つまるところ、このアルバムを手にしている間は『マキナさんと昔から知り合いだった』という可能性の世界の光景を見ることが出来るというわけだ。

 これ、思い浮かべる俺の行動の方には手を加えてたりしないよね? なんか、いまの牧場のエピソードを改めて頭に思い浮かべてみると、なんか俺がマキナさんに懐いてるみたいな感じの光景ばかり思い浮かぶんだけど……う~ん、でも、狂気じみた愛情とか暴走が無い状態であれば、マキナさんは優しくて親しみのある方だし、この可能性の世界のマキナさんが暴走をしないと仮定すると、子供の俺が懐いていても不思議ではない。


『……シャルたん、アレはどうなの?』

『……ギリギリグレーのところついてきやがりましたね。あくまでカイトさんの記憶に干渉したり、過去を改変したりしたわけでは無いわけで……捏造映像再生機みたいなものかつ、カイトさんの方も捏造の映像であると認識できているなら……ギリセーフですね』


 なんとも微妙な表情でアリスが呟いているが、確かにまぁ、とんでもない湿度の逸品ではあるのだが……その可能性の世界の光景が思い浮かぶのは、あくまでアルバムを持って思い浮かべた時なので、見る見ないも俺が自由に決めれるわけだし、なにかを強制したりしてるわけではない。


 そう考えていると、なにやらシロさんが軽く頷いたあとで呟くように口を開いた。


「……なるほど、その手段であれば快人さんの過去を改変することなく、快人さんの過去に己を登場させられるというわけですか……私の考えた案に後乗りするばかりではないと、そういうわけですね」

「ふふ、見くびってもらっちゃ困るね」


 なんというか、シロさんは「しまった、そんな手があったのか!?」と言いたげな、感心した様子であり、マキナさんもどこか誇らしげな様子でドヤ顔をしていた。


 ……うん。まぁ……マキナさんらしい誕生日プレゼントである。




シリアス先輩「つまるところそれ、写真も含めすべて捏造のアルバムなのでは……」

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― 新着の感想 ―
 ふむ、この捏造アルバムはマキナさんが写っている以外はちゃんとした実際にあったアルバムなんだ……おっと、存在しないはずの過去が思い浮かんでいるね。  あー、過去改変や記憶操作などはせずに快人さんもち…
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