宮間快人生誕記念パーティ③
二番目に俺が引いたのはマキナさん……さて、不安要素の中でも一番上ぐらいに君臨する方である。前回の誕生日パーティの際にはいきなりキスをしてくるというとんでもプレゼントを実行して、クロたちにガチ目に攻撃されていた。
「さすが、愛しい我が子はくじ運がいいよね! ここで、母を引き当てるなんて、愛しい我が子的にも私の誕生日プレゼントは楽しみだっただろうし、早めに受け取れるのは嬉しいよね!」
「……そ、そうですね」
むしろ不安要素として真っ先に思い浮かぶ相手だったので、早めにプレゼントの内容を知りたいという気持ちはあった。なので、早めの順番を望んでいたかと言えば、そうかもしれない。
『あ~いちおう言っときますけど、前回みたいなふざけたことをしようとしたら、実行する前に袋叩きにしますからね? カナーリスさんとかも協力をお願いします』
まぁ、幸いなのはマキナさんの奇行に関しては俺だけでなくアリスやクロといった面々も警戒しており、前回の優に油断も無いので、実行前に阻止してくれる可能性が高い。
そしてアリスが協力を呼び掛けた様に、今回はカナーリスさんもいるので安全度は高いかもしれない。
「ええ、その時はもちろん。あと、たまたま近くにめちゃ強な友人も来てるんで、いざという時は力を貸してくれると思いますよ」
「……やめて、あの神は私でも8:2とか9:1とかで不利とるから……というか、ガチでやっても9割がた負けるだろうし……ちゃんと今回は品物を用意してるから、あの物理で殴る系の究極進化形態みたいなのは呼ばないで」
「あの子に10%でも勝つ可能性がある時点で、マキナさんの実力は世界創造主の中でも上澄みですねぇ。たはぁ~まぁ、そういうことなので節度を守ったプレゼントでお願いします」
なんかよく分からないけど、マキナさんが本気で厄介そうな顔をしてたので、マジで凄く強い神様が近くに来ているらしい。それならより一層安全度は高くなった気がする。
そんなことを考えていると、マキナさんはコホンと軽く切り替えるように咳払いをして、一冊の本を取り出した。
「……改めて、愛しい我が子、誕生日おめでとう!! 母からの、愛情たっぷりのプレゼントだよ!!」
「あ、ありがとうございます……けど、本、ですか?」
「ふふふ、それはね、アルバムだよ! 私が厳選した幼い頃からいままでの愛しい我が子の写真を纏めたものだよ! それが、本当に苦労したんだよ!! 愛しい我が子は、どの瞬間も究極で最高に可愛いから、200ページに纏めるのが、大変で大変で……悩みに悩んだ結果だから、最高のアルバムが完成したと自負してるよ。まぁ、溜まったフラストレーションはミュージアム作って発散したけど……」
そういう経緯で出来上がったのかあの呪いの館!? つまり、この200ページのアルバムに収める写真を選ぶうちに、狂気ゲージ的なのが溜まりまくって、溢れまくって重すぎる愛と共に一切の省略無しかつ自身の思いの丈も書き綴って作り上げたのが、入った者の精神を破壊する呪いの館ということらしい。
なるほどとは思ったし、ついでにこのプレゼントは結構嬉しい。というのも、親戚の家に引き取られる際に母さんと父さんと一緒に住んでた家の荷物とかはかなり処分されており、ドタバタしていたこともあってその手のアルバムとか昔の写真とかはあまり残ってなかったのだ。
もしかしたらおじさんやおばさんがどこかに保管してくれてて、聞けば教えてくれたのかもしれないのだが……ともかく、昔を懐かしみながら見れるアルバムというのは普通に嬉しい。
「いいですね。幼い頃の事とか結構忘れてる部分も多いですし、こうやって見返せるアルバムってのは持ってなかったですし、見ると懐かしさが……懐かしさが……」
とりあえず試しに適当にページをめくってみると、そこには5歳ぐらいだろうか? 幼い頃の俺の写真があり、そこには一緒に若い母さんと父さん……そして『マキナさんが映っていた』。こ、これはえっと……う~ん、ど、どうリアクションを取れば……。
合成とかではなく、明らかに幼い俺を抱き上げている様子のマキナさんの写真とかもあって、なんとも言えない気持ちでチラリとマキナさんを見ると……ニコニコと満面の笑顔である。
どうしよう? 俺の過去の思い出が浸食されているというか、捏造されてるんだけど……このアルバム、もしかして結構湿度とか狂気とか高めのやつなのでは?
シリアス先輩「何が恐ろしいって、渡してきたやつがその気になれば過去の改変ぐらい簡単にできそうなやつってのが、なにより恐ろしい」