そして始まる生誕祭⑤
アリスと話しているうちにいよいよ門の前に辿り着いたのだが……デカい。遠くからでも大きな都市だというのは分っていたが、城塞都市とか言われても信じてしまいそうだ門のサイズである。
「……ところでアリス、素朴な疑問なんだけど……」
「なんすか?」
「参加者はもう全員会場入りしてるって言ってたよな?」
「言いましたね」
「……じゃあ、このパレード見るのって……誰?」
「お気づきになられましたか……パーティ参加者は、現地にはいません」
そう、皆が先に会場入りしているということは、この門から会場である城までの間に誰も居ないということになってしまう。そうなるとどうなるか、誰も居ない場所でパレードをする変な構図になってしまう気がした。
「その代わりに、エキストラがいっぱいいますね」
「……いや、映画の撮影じゃないんだから、エキストラって……」
「仕方ないじゃないっすか、エキストラだろうがなんだろうが用途に合わせて創造できる連中が企画してるんですし、大観衆の中を進んでいく感じです……いや、本当にパレードを盛り上げるためだけのエキストラで、一種の幻覚のような感じらしいので、芋と思っておけばいいですよ」
「……お、おぅ」
「あと、パレードの様子は中継されてます」
「……そっか……」
なんとも言えない気持ちのままで空を見上げると、空は憎たらしいほどに澄んだ青空だった。
まぁ、嘆いていても仕方ないということでさっそく城に向かうことにすると、アリスがパチンと指を弾き、巨大な門がゆっくりと開くと……それはもう視界を埋め尽くさんばかりの人の山だった。
……これ、全部幻覚みたいなものなの? 凄いリアリティなので、俺の感じる羞恥は軽減されないどころか滅茶苦茶増幅してるんだけど……。
パレードカーが進み、観衆から拍手や歓声が飛んでくる。リアリティが凄すぎて、正直事前に聞いてなければ本当に人を連れてきたのかと思うところだった。
いや、待てよ? シロさんとかマキナさんなら、パレードで歓声をあげさせるためだけに新しい生命を創造したりもその気になればできそうではある。さすがに、そんな使い捨ての生命創造は倫理的に問題なので、やってないとは思うし、やろうとしても他から止められただろうが……改めて思えば、本当になんでもありの方々なんだよなぁ。
この先のパーティへの不安が一層大きくなった気がした。
「あ、カイトさん、手を振ったりすれば反応するらしいですよ。いろんな連中が思い付きで好き勝手なこと……というかやりたいことやりまくったせいで、無駄にいろいろな演出があるらしいですからね」
「……こう?」
アリスに言われて手を振ると、歓声が大きくなり「素敵!」だとか「こっち向いて!」だとか「目線ください!」だとか「ファンサ最高! しゅきしゅきめろりー!」とか、そんな歓声が聞こえてきた……ちょっと待て、最後になんかアイドルの推し活みたいな歓声なかった? 空耳か?
「……カイトさん、カイトさん、見てください。花火上ってますよ」
「演出が本気すぎる……」
「おっと、城の上空ではカラフルな煙を出しながら、編隊飛行によるパフォーマンスも始まりましたね」
「……頼むから、世界観を統一してくれ……なんで城の上空を戦闘機が編隊飛行してるんだよ……」
ともかく派手で賑やかなのは間違いないが、アリスが少し前に言っていた通りやりたいことを全部詰め込んだみたいな感じになっていて、かなりカオスといっていい。
空に虹がかかったり、大量の風船が飛んだりと、進むごとにいろいろな演出が入ってきており……全然関係ない場所から眺めるなら、にぎやかで楽しそうだ。
自分が当事者になって、空に巨大なハッピーバースデーの文字とか、デフォルメした俺の顔っぽいのとかが出ている現状だとお腹が痛いという感想が真っ先に出てくる。
とりあえず、シロさんたちが本気であるというのは胃の痛みと共に、文字通り痛いほどに伝わった……しかも何が怖いって、まだ会場にすら入って無いところ……本番はまだこれからだという点だった。
???「パレードに様子は中継されてます(会場と……世界創造主たちのファンクラブに)」
シリアス先輩「……最後の歓声、絶対に推し活神だろ……」