そして始まる生誕祭②
その日は透き通るような青空の日だった。朝起きてカーテンを開けた瞬間から、今日はとてもいい天気だと感じた……だが、不思議と清々しいような気持ちにはならなかった。
なぜだろうか? 特に根拠は無いのだが、言いようのない不安のようなものが体の奥から湧き上がってくるように感じる。
「おはようございます、カイトさん。超絶美少女アリスちゃんの登場ですよ。いや~朝一からアリスちゃんの超絶美少女フェイスが見えて、カイトさんも喜ばしい限りでしょう」
「……なんだろう、いま不安な気持ちが滅茶苦茶大きくなった。だってこれ、明らかになにか用事があって出て来てるよな……あとなんか、気の毒そうな顔してるよな!?」
「気の毒だとは思います。でもまぁ、事前にちゃんと釘刺しとか無かったカイトさんにも悪いところがあるというか、そんな感じです」
「え? なに……いったいなにが……」
まず朝早々にアリスが登場して話しかけてくるという時点でいつもとは様子が違う。もちろんアリスはだいたい俺の近くにいるので、俺が暇していたりアリスの気が向いたりしたら、唐突に話しかけてきたりすることはある。
だが、朝起きた瞬間のこの場面で出てきたのは、明らかに雑談とかそういうのが目的ではなく、朝一で俺に伝えるべきなにかがあるということだ。
そして、どことなく気の毒そうにしているアリスの様子も不安だし、直感的な意味合いでも嫌な予感がどんどん強くなってる。
そんな俺に対し、アリスはなにやら綺麗な手紙のようなものを取り出して差し出してきた。
「というわけで、カイトさん。誕生日おめでとうございます……はい、こちら、誕生日パーティへの招待状です」
「え? あっ、ああ、そっか……今日は俺の誕生日か……招待状? パーティ? あ~なるほど、去年みたいにパーティを開催してくれるんだ。それは、嬉しいけど……えっと……どこでやるのかな? どこかのパーティ会場とか、去年みたいに天空城とか……」
「……」
「その憐れみに満ちた微笑み止めてくれないかな……ものすっごい嫌な予感がするんだよ。お前さっき、俺が事前に釘を刺してなかったのも悪い的なこと言ってたよな……これ、去年と同じ感じの規模じゃない……ってこと?」
今日が自分の誕生日であるというのはすっかり忘れていたのだが、知り合いが祝ってくれるというのはもちろん嬉しい。ただし、それは常識的な祝いの範疇である。
去年ですら、新規に天空城を王都の上空に建設し、驚くような規模で行われた。あの時も若干胃の痛い思いはしたのだが、いまはそれ以上だ。なんというか、体の奥から本能が警告してきているような気さえする。
「……まぁ、ほら、去年は準備時間数時間であれだったわけですよ。それに対して今回は、やろうと思えばなんでもできるような神々が、十分すぎるほどの準備期間を持って用意したわけです」
「……冷や汗が止まらない……アリス……会場、どこ?」
「……カイトさんの誕生日パーティを行うためだけに、世界創造の神連中が結託して新しい世界を作りました。そこが会場です」
「……おふっ」
アリスの言葉を聞いて思わず天を仰いだ。そっか……世界作っちゃったか……誕生日パーティをやるためだけに……馬鹿の発想だよ!? なんでパーティのために世界作っちゃったんだ!! 去年の天空城でも広すぎるぐらいだったし、ちょっと大きめのホールぐらいで十分じゃないか!?
しかもそれ、絶対普通に会場作ってはい終わりなわけもないよね……去年の天空城にも、俺の誕生日には関係ないような変な噴水とか木とかあったわけだし……シロさんとかマキナさんがやる気出して作ったとすると……もう想像するのすら恐ろしい。
「あ~ちなみに、カイトさんの知り合いというか、誕生日パーティの参加者はもう全員会場入りしてます。まぁ、こっちの世界とは時間の流れが違うので、カイトさんはゆっくり準備して大丈夫ですよ。去年と同じく、会場までは私が案内しますし……」
「う、うん……しかし、そっか……確かに、去年とかに次は普通の規模で大丈夫ですとか、そんなこと言っとくべきだった。いや、そうじゃないにしても葵ちゃんとか陽菜ちゃんと話していた時に、俺の誕生日の話題とかも出たわけだし、そこで気付けておけば……」
「いや、お気の毒ですが去年じゃない限り無理です。今回、最初の打ち合わせが終わって少しした辺りでシャローヴァナル様とマキナが、カイトさんが誕生日パーティの可能性とかに気付けないように細工してましたし、他の参加者もカイトさんと居る時は誕生日パーティの事を忘れてて思い出せないって制限までかけてました」
「……サプライズに本気すぎる」
本当になんという周到さ……これ完全にガチで準備してきてるよな。もう本当にいまからどんなところなのか、恐ろしくて仕方がない。
リリアさんが胃が痛いという気持ちも、分かる思いである。
シリアス先輩「胃痛を与える側と思いきや、六王祭とか建国記念祭とか、胃痛受ける側にも回ってるんだよな快人……」




