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閑話・嫉妬に狂った狂戦士



 とあるなにもない空間にフワフワと浮かび、腕を組んで思案している様子なのは世界創造主のひとりであり、電脳神の異名を持つイレクトローネ。彼女はいま、見事権利を獲得した快人の誕生日プレゼントに関して考えていた。

 当然ではあるがシャローヴァナルやマキナ、カナーリスといった面々からプレゼントに関する様々な制限は聞いており、その制限内で快人の印象に残りつつ喜んでもらうにはどんなプレゼントがいいかと考えていた。


 そんなイレクトローネの元に、唐突にカナーリスが現れた。


「どうも~イレクトローネ、ちょっといいですか?」

『構わない。しかし準備の催促であるなら即座の返答は困難である……状況を出力……《快人様へのプレゼントの催促なら、まだ考えてるところだから待ってほしいな~》……以上』

「ああいえ、プレゼントの催促じゃないです……まぁ、関係してると言えば関係してるんですが……」


 歯切れの悪いカナーリスの言葉にイレクトローネが首をかしげる。するとカナーリスは表情は相変わらず固まったままで、どこか気の毒そうな声で告げる。


「いえね。∇∮◆£が、イレクトローネと一度会って話がしたいって……あ~えっと、快人様に贈る誕生日プレゼントについて話し合ったりしないなぁとか言ってましたね」

『断固拒否する……感情を出力……《嘘でしょ? 絶対、ちょっと前に私がスタートでズルした∇∮◆£と違って、私は快人様に選ばれたとかそういうこと言ったからだよね! 絶対に嫌!》……危険地帯に飛び込む趣味はない』

「い、いやぁ、いい子なんすよ。∇∮◆£ってば優しいですし、面倒見もいいですし、実際に自分が再創造した世界の管理を頼んだ時も快く受け入れてくれましたしね。たはぁ~ただ、いまはちょっと嫉妬の炎に焼かれている感じで……」

『同意しつつも抵抗を出力……《知ってるよ! そりゃ、普段ならお菓子でも持って会いに行ったよ!! ∇∮◆£って優しいしのほほんとしてるし、でもスイッチ入ってる時は未開の惑星の猿の方がまだ理性的ってレベルで蛮族じゃん!! 絶対殴ってくるじゃん!!》……よって、当機は断固として面会を拒否する』


 カナーリスから話を聞いた瞬間全力で拒否を始めるイレクトローネに対し、カナーリスは「気持ちは分かるなぁ」と思いつつ告げる。


「ま、まぁ、そうなったら逃げればいいわけじゃないですか……」

『不可能な行動を提案するのは建設的とは言えない。続けて反論を出力……《じゃあ、そっくりそのまま返すよ! カナーリスだって、∇∮◆£にボコボコにされる前に逃げればいいじゃん?》……以上、回答は?』

「たはぁ~それができれば苦労しないというか……∇∮◆£……強いんすもん」

『同意を出力……《そうだよ! 強いんだよ!! ∇∮◆£ってネピュラ様とシャローヴァナルって例外除いたら、もしかしたら一番強いんじゃないかってレベルで強いじゃん!! しかも全部ゴリ押しでどうにかしようとするでしょ? 物理防御も概念防御も空間湾曲も次元隔離も対全能防御も……全部ぶち抜いてぶん殴ってくるじゃん!》……当機は、ネピュラ様とシャローヴァナルを除けば双極神が最強であると認識してる。よって逃走は不可能である』


 そう、ふたりが話題にあげている双極神と呼ばれる∇∮◆£は……全知全能級のふたりをして、滅茶苦茶強いと感想が出るほどに強い。

 ネピュラとシャローヴァナルという飛び抜けた例外を除いて、世界創造主の中で最強は誰かという議題が上がれば必ず候補のひとりとして名が上がるぐらいには強い。


『続けて感情を出力……《ともかく、私は絶対嫉妬に狂った理不尽バーサークゴリラの前になんて行かないからね!!》……以上、当機は双極神の元へ向かうつもりはない』

「……いやぁ……それがですね……『もう来てる』んですよねぇ……」

『……』


 気まずそうな声でカナーリスが告げると共に、チリンと鈴の音が聞こえ、イレクトローネは壊れたブリキ人形のような動きで後方を振り返る。

 するとそこには、いっそ穏やかにすら感じる微笑みを浮かべた髪の先に鈴を括りつけた少女……双極神∇∮◆£が居た。


『……弁明の時間を貰いたい。当機は決して双極神を侮辱したわけではない。感情を出力した際に少々加減を間違えてしまったことは謝罪する』

「ううん。謝る必要なんてないよ、イレクトローネの言う通りだと思う。イレクトローネは自力で順番やプレゼントの権利を勝ち取ってるわけだし、私が文句を言うのはお門違いだよね。本当にただ嫉妬に狂って逆恨みしてるだけで、なにひとつ論理的な行動じゃないし、本当に申し訳ない気分でいっぱいだよ…………うん…………でも、ごめんね。どうしても、どうしても、嫉妬の気持ちを抑えきれなくて……一発だけ殴ったら落ち着くと思うから……一回だけ、殴らせて?」

『……短絡的な行動を起こすべきではない。我々は理性ある存在だ。まずは会話によって解決策を模索すべきだと提言する』

「うん。そうだね、イレクトローネの言う通りだよ。ごめんね……そして、ありがとう、じゃあ、殴るね」

『当機は切望する。誰か、この蛮族に言語と対話を理解させてくれと……』


 どこか哀愁の漂う諦めの混じった言葉の後、嫉妬の炎に焼かれた狂戦士がイレクトローネに飛び掛かった。




双極神∇∮◆£

理不尽バーサークゴリラ。

基本的には極めて温厚で穏やかな性格をしており、面倒見もいい。カナーリスに再創造した世界の管理を頼まれてもふたつ返事で了承したり、他の世界創造主の愚痴に付き合ったりと、頼られることも多く交友関係も非常に広い。

ただし、ひとたびスイッチが入るとすべての思考の結論が『ぶん殴る』に帰結する狂戦士と化す。この状態だと基本的に話は通じない。


余談だが彼女が双極神と呼ばれるようになったのは、ネピュラの僕ではないとあるそれなりの規模の世界創造主同士の派閥が険悪となり全面戦争になった際、たまたま両派閥がぶつかり合った余波で∇∮◆£の世界がそれなりの被害を受けたため、キレて狂戦士モードとなった∇∮◆£が合計で全知全能級8体、全能級67体、準全能級213体というぶつかり合っていた派閥の世界創造主を全員叩きのめした事がきっかけで、その普段の温厚さから正反対ともいえる狂戦士モードのあまりの変貌ぶりが原因である。

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― 新着の感想 ―
蛮族が襲ってくるそんな時は究極呪文「カイトさんに報告します。」を使うんだ! こうかはばつぐんだ! だが反動で色々ヘイト買ったり告げ口するやつとカイトに思われるかもしれない。協定にも触れる可能性もありま…
 快人さんへの誕生日プレゼントを考えてるんだ。 一瞬全知で分かるのでは?って思った。まぁ、全知で調べずに考える時間も楽しいって事か、全知で調べた上でその中からどれがいいか考えてるのかな?  ∇∮◆£…
ミヤマカイト様の創造神である以上、マキナの戦闘力が双極神とネピュラの間だったら何かしら言及があるだろうし、触れられてないってことは結構下なんだろうと思われる。
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