ささやかなお祝い⑦
アリスの雑貨屋でプレゼントを購入し、これで葵ちゃんの誕生日祝いの準備は整ったので家に戻る。タイミング的には夕食のあと、場所は俺の部屋で行う予定だ。
というわけで下見も兼ねてということで、帰宅してそのまま陽菜ちゃんは俺の部屋にやってきた。
「飾りつけとかは……さすがにいいですかね?」
「さすがに飾りつけとかまで行くと大げさになっちゃいそうだし、ロウソクとかは買ってあるからそれで大丈夫だとは思うね」
「そうですね。ケーキとプレゼントだけのシンプルな感じで行くって決めてましたし、それだけあれば十分ですよね」
「まぁ、いちおう部屋の照明とかは結構弄れるんだけど……」
今回は簡単な祝いだけにすると決めてあるので、飾りつけなどは行わない。ただし俺の部屋の照明は結構いろいろな感じにアレンジできるみたいなので、多少雰囲気がいい感じにはできるかもしれない。
とりあえずは物は試しということで、壁を特定のリズムでノックすると、壁の一部がスライドして照明を操作する魔法具が現れる。
「……快人先輩? なんで、部屋の壁がスライドして変な装置出てくるんですか? 秘密基地かなんかですか?」
「いや、俺もこの部屋にいったいどれだけ隠された機能があるか詳しく知りたいんだけど、アリスに聞いても適当にはぐらかすんだよなぁ……いちおう何個か教えてもらったうちのひとつがコレだね。俺の部屋なのに、俺の知らない機能が多すぎる」
「な、なるほど?」
困惑した様子の陽菜ちゃんだが、俺も正直この部屋の隠し機能に関してはよく知らない部分が多い。少なくともなんか隠し部屋みたいに繋がる機能とかもあるっぽいし、己の部屋ながら謎が多い。
壁をスライドさせて収納棚とか、一部の魔法具が出てくる機能に関してはアリスから聞き出した。特定のリズムでノックしたり、壁に触れた状態で決められた回数魔力のオンオフを繰り返したりすることで、一部の機能が使える。
「まぁ、アリスの事だから本当に俺が嫌がるような機能は搭載してないと思うし……搭載してないよな?」
「アリスちゃんのこの超絶美少女アイを見てください。澄んで綺麗な目でしょ? 邪な事なんて考えるわけないじゃないですか……」
「……いまのところはいいけど、今後なんか変な悪ふざけを加えてそうな気配を感じたら……カナーリスさんにクリアリングしてもらおう」
「……ガチゴッドを投入するのは反則じゃないっすかね……」
まぁ、アリスのことは信頼しているので本当に俺が嫌がるようなものは搭載していないとは思う。だが、それはそれとして悪ふざけとか悪ノリはしそうなので、釘は刺しておくことにした。
たぶん実際にカナーリスさんに頼めば、部屋内の機能は全部丸裸に出来るだろう。
(……私もできますが? 私も、できますが?)
……じゃあ、いざ実行することになったらシロさんにお願いします。
若干、というか、明らかに不服そうな……フィーア先生の件でエデンさんを頼った時と同じ雰囲気を感じたので、実際にそうなった時にはお願いするとシロさんに返事をしておいた。
まぁ、少し脱線してしまったがとりあえず、簡単な打ち合わせは終わった。
「……まだ夕食時までは時間があるけど、どうしようか?」
「あっ、それなら私、快人先輩とゲームしたいです!」
「ゲーム?」
「はい! 前に葵先輩と一緒にやったんですよね? 葵先輩ばっかりズルいですし、私も快人先輩と一緒にゲームで遊びたいです」
「ふむ……」
ゲームで遊ぶこと自体は問題ない。用意もすぐできるし、陽菜ちゃんとゲームをするのは楽しそうだ。問題はどのゲームで遊ぶかという点だ。
まず大前提として、ネットゲームとかはあまり陽菜ちゃんの好むジャンルではないと思う。というか、陽菜ちゃんはゲームはかなりカジュアルな感じというか、家族や友達とワイワイ遊ぶものであると認識している感じなので、いまも間違いなくその手のパーティゲームで一緒に遊びたいという申し出だろう。
「……じゃあ、なんか定番のすごろくゲームみたいなので遊ぼうか?」
「いいですね! でも、そういうのって快人先輩滅茶苦茶強そうですね」
「まぁ、その手のゲームにはシロさんの祝福は影響しないようにしてもらってるし、勝ち負けが目的じゃないから気楽に楽しもう」
「はい!」
こうして夕食までの間、俺と陽菜ちゃんは元の世界で定番ともいえる日本全土を盤面として、総資産を競うタイプのゲームで遊ぶことになった。
途中で帰宅した葵ちゃんも加わって三人でワイワイ楽しんだのだ……なお、結果としては俺が圧勝だった。
バグった幸運値「大丈夫です。自分、空気の読める補正でやらせてもらってるので、いい感じに競いつつ最終結果だけはご主人が圧勝する感じに調整しときます!」