ささやかなお祝い③
陽菜ちゃんと一緒に道を歩きつつ、ケーキに関して質問する。俺や陽菜ちゃんが料理が得意なのであれば自作という手もあったが、残念ながら双方ともにケーキ作りができるほどの腕はない。
まぁ、そもそもお祝いは今夜実行する気なので、どちらにせよケーキ作りは間に合わないかもしれない。いやまぁ、別に無理に今日する必要は無いし、別に今日が葵ちゃんの誕生日というわけでもないのだが、なんかもう今日実行するって感じのノリになったのでいまさら別日にという気分にはならないだろう。
「三人で食べるならホールケーキは大きすぎるよね。普通にカットしたケーキを何種類か買っておいて、葵ちゃんに食べたいのを選んでもらう形がいいんじゃないかな? 余ったやつは、マジックボックスに入れておいて後日食べてもいいわけだし、目に付いたものはいろいろ買っておいてもいいかもね」
「いいですね! というか、マジックボックスが本当に便利ですよね。劣化させずに保存できるので、こういう時には大助かりです」
「確かに……でも、保存しておけるからってついつい多めに買っちゃって、なんだかんだで処理するのに時間がかかっちゃうパターンとかもあるよね」
「買い過ぎちゃうことはあるかもしれないですね。特に快人先輩の場合だと、お金もいっぱいありますし……」
まぁ、実際とりあえずマジックボックスに入れておけばいいやと多めに買って、まだ食べてない菓子類とかも結構ある。
意外なタイミングで役に立ったりもするのだが、質の低いマジックボックスだと結構容量を圧迫したかもしれない。俺の場合はクロが作った物凄い容量のマジックボックスなのでまったく問題ないどころか、容量はあまりまくりではあるが……。
「この辺りのケーキ屋だと、どこがいいかなぁ?」
「……そのクロム様のガイドブック、凄いですよね。本当に王都中の飲食店が乗ってますし、解説とかもわかりやすいです。私も欲しいなぁ~」
「クロに言えば貰えると思うよ。本人が趣味で書いてるだけで、売り物にしたりする気が無いってだけで、家族とかで欲しがった相手には上げてるみたいだし、今度俺が頼んでおいてあげるよ」
「ありがとうございます!」
実際この食べ歩きガイドは本当に便利で、俺もしょっちゅう活用してるし……単純に読み物としても面白いのでおススメではある。それこそ本として出版すれば物凄い売れ行きになるんじゃないかって感じではあるが、クロにその気はなさそうだ。
いろいろな商会を持つクロは当然いろいろな商品開発などもしているが、食べ歩きはそれとは別の趣味という感じで切り離してる感じがするので、今後も食べ歩きガイドを販売することは無いと思う。
「あっ、ココなんていいんじゃないですか? フルーツケーキが豊富らしいです。葵先輩フルーツとか好きですし、店の雰囲気も……あれ? この、食べ歩きガイドって写真使ってましたっけ?」
「ああ、クロが定期的に更新してるから、いまの最新バージョンは店の外観の写真付きだね。そのうち食べ物の写真も合わせて載せたいとか言ってたけど、ページ数が多くなりすぎるからどうするか考え中だとか……」
俺の持っている食べ歩きガイドは、しょっちゅう遊びに来るクロが定期的にアップデートしているので基本的に常に最新版である。
閉店した店などが省かれ、新店舗なども掲載されている。ちなみにこの最新版にはニフティの店舗も載っており、クロは星十と最高評価を下していた。なお、店の説明欄はベビーカステラに関する感想でビッシリだった。
「場所も結構近いしここでよさそうだね。まぁ、結構人気店っぽいしよさそうなのが全部売れてたっりって場合は、他の店に行こうか……」
「ですね……はっ!? 快人先輩、見てください! その隣のページ! パフェがオススメって書いてありますよ!!」
「書いてるね……いや、ケーキ買ってついでに簡単なプレゼントとか探すだけだから時間は十分にあるけど、夜にケーキ食べるのにいまパフェ食べるの?」
「パフェは別腹なんですよ! ……カロリーも別腹だといいんですが……あっ、そういえば快人先輩、全女の子が羨む……というか、私が羨む凄い効果が祝福にあるって聞いたんですが……本当ですか?」
「え? あ、ああ、そういうことか……確か、ライフさんの祝福に太ったりしない効果があって、シロさんの祝福にも同様の効果があるらしいね」
正確に言えばライフさんの祝福の効果は、本人が理想とする肉体になり自然それを維持できるっていう感じのものであり、六王祭の時の仮祝福でいろいろな人が若返ったのも、その時に思い描いた理想の年齢の肉体に変化したからである。
そして仮祝福とは違い本祝福は常にその効果を発揮しているため、常に肉体が本人にとって最良の状態になるらしい。シロさんの祝福は全神の祝福の上位ということなので、その効果もあり、大量のカロリーを摂取したとしても俺が太ったり病気になったりすることは無い。
「パフェ食べ放題じゃないですか、羨ましい……」
「パフェ基準なのが陽菜ちゃんらしいというか……まぁ、陽菜ちゃんが行きたいならケーキを買った後はその店に行ってパフェを食べようか?」
「はい!!」
嬉しそうに笑顔で頷く陽菜ちゃんは可愛らしく、俺は一人っ子だがなんとなく妹とかが居ればこんな感じなのかなぁと、そんな風に思った。
シリアス先輩「シロの祝福だけでも十分チートなのに、他の祝福も山ほどあるんだよなこいつ……」
???「そう思うと普通にカイトさんってチートみたいなもんですよね。特に防御面はいろんな意味で鉄壁ですし……」