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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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クロノアさんの期待に応えられる存在で在り続けたいと思ったよ


 フェイトさん、ライフさんとの話が終わり、次はクロノアさんと二人で話をする訳だが……なんだろう、この、いいようのない安心感は……
 フェイトさんやライフさんのように、色仕掛け的なアレコレをしてこないと分かるだけでも、桁違いの安心感がある。

 ゆっくりと……かなり時間をかけながら俺の隣に来たクロノアさんの頭はかなり低い位置にあった。
 クロノアさんの身長は180cm程と非常に高く、普通に座っていれば頭はそれなりに高い位置に来る筈だが……先に述べた通り、クロノアさんの頭の位置は低い。
 それはクロノアさんがこれでもかという程、肩はおろか首すら浸かる程深く湯に浸かっているから……余程恥ずかしいらしい。

「……み、ミヤマ……こ、こちらを見るな! 絶対に見るなよ!」
「わ、分かってます。見ません」
「くっ……何故、我が、このような目に……」
「な、なんか……すみません」
「あっ、いや、すまぬ。お前を責めた訳ではないのだ」

 クロノアさんが現在羞恥心に耐えている原因の半分位は俺なので、謝罪の言葉を口にしたが、やはりクロノアさんは優しい性格をしており慌てた様子でそれを否定する……ちなみに、もう半分の原因はシロさんだ。
 クロノアさんの姿は見えないが、たぶん今は真っ赤な顔で慌てているんだろう……普段とのギャップもあってか、物凄く可愛い気がするが、それを言うと絶対怒るので黙っておく。

「……しょ、正直に言うぞ……わ、我は、このように男と風呂に入った経験など無いのだ。故に、どうすればよいか分からん」

 うん。でしょうね……分かります。こういう経験が無いというのは、先程までの反応見てれば余裕で分かります。

「そ、そもそも、お前も、我と風呂なんぞに入っても、なんの益も無かろう?」
「……」
「なぜ黙る?」
「……あ、いや、え~と……俺も正直に言いますよ。勿論戸惑ったり慌てたりはしてますが……クロノアさんみたいな美人と一緒だと、えっと、嬉しいって気持ちもやっぱりあります」
「なぁっ!?」

 そりゃ、俺だって健全な男だし、照れと緊張で大変と思う反面、こんな美女達と混浴できて嬉しいって気持ちもある。
 いうならば、目の前に極上の餌をぶら下げられて、喰いつきたくても喰いつけない状況というか……まぁ、大変な事は大変だけど……

 そんな俺の言葉を聞いて、クロノアさんは驚愕したような声をあげた後、しばらく沈黙し、そして小さな声で呟く。

「……ほ、本気なのか?」
「なにがですか?」
「だ、だから……お前は、前々から我を美人だとか……か、可愛らしいだとか言っておったが……そ、それは、我をからかっている訳ではなくて、本心で言っているのか?」
「……流石にそんなからかい方する程性格は悪くないつもりですよ。俺がクロノアさんに言った事は、全部本心です。クロノアさんは本当に美人で、素敵な女性だと思います」
「……そ、そそ、そうなのか……う、うむ……礼を、言うべきか?」
「さ、さぁ?」

 な、なんだこれ、なんか滅茶苦茶恥ずかしいんだけど!? く、クロノアさんもなんだかいつもと違ってしおらしいというか、妙に女性っぽい感じで物凄く意識してしまう。
 か、顔逸らしておいて良かったかも……この状態で顔なんか見たら、恥ずかしくってまともに喋れそうにない。

 甘酸っぱいとでも表現するべきか、そんな沈黙が俺とクロノアさんの間に流れ、少ししてクロノアさんがゆっくりと声を発する。

「……なぁ、ミヤマ。折角の機会だ。我の本心を伝えておこう」
「本心、ですか?」
「あぁ……我はな……お前が『恐ろしい』……」
「……え?」

 静かに告げられたその言葉は、予想していなかったものだった。
 俺の事が恐ろしい? 時を司る最高神であり、この世界でも屈指の実力を持つクロノアさんが、俺の事を恐れている? なんでだろう?

 頭に浮かんだ疑問に答えるように、そのままクロノアさんは静かながらどこか重々しい声で言葉を続ける。

「……お前が、この世界に来て……まだ、たった数ヶ月だ。なのに、お前は、何百何千何万年と変わらなかったものを、いとも簡単に変えてしまった」
「……」
「お前はこの世界に変革をもたらしている……それは紛れもない事実であろう。過去にも、世界に大きな変革をもたらした者は居た……初代勇者、奴もまたその一人だ」

 クロノアさんの口から出た初代勇者……ノインさんの話。
 ノインさんはこの世界にとても大きな変革をもたらした存在であり、今も尚語り継がれる英雄だ。
 三つの世界の垣根を取り払い、世界を紡いだ存在……正直、比較するのすらおこがましい存在だと思う。だけど、クロノアさんの口振りはまるで俺をノインさんと同格に感じているような……いや、或いはそれ以上に……

「……それでも、奴は10年かかった。時間が早ければ上だなどと言うつもりはないが、それでもミヤマ、お前は初代勇者より遥かに早く、そしてより大きな変化をこの世界にもたらしている」
「……」
「お前と関わった者は、皆変わっていく……シャローヴァナル様も、運命神も、生命神も……だからこそ、我は、お前が恐ろしい……お前と話していると……長い年月揺るがなかった己が、抗う術もなく変えられていくようで……それが、どうしようもなく恐ろしい」

 変わっていく事が恐ろしい……それは人間である俺にも、ある程度は理解出来る気持ちだった。
 変革とは必ずしも良い事ばかりでは無い、自分自身が変わる事……ある意味それは、過去の己を失う事でもあり、ある意味それは、未知との遭遇でもある。
 だからこそ、クロノアさんの意見は尤もであり……文句を言う気にもならなかった。

 しかし、クロノアさんはそこで話を終えず……微かに苦笑しているような声で言葉を続ける。

「……だが、同時に……我は、お前を、お前を好ましく思っている」
「……え?」
「お前のもたらす変化は、どれも悪いものではない……シャローヴァナル様も、運命神も、生命神も……神界の在り方も、良い意味で変化していると感じる。だからこそ、変わっていく事が怖いと思う反面、訪れる変化を楽しみにもしている」
「……クロノアさん」
「なぁ、ミヤマ。我はな……お前が、この世界をどう変えていくのか、怖くも感じるが……その先を見てみたい、見せてほしいと願っている。お前に期待している」

 そこまで告げると、クロノアさんはおちょこを手に持ち、俺にそれを渡してから、お酒を注いでくれる。
 自然と動いた視線の先には、優しく穏やかな微笑みを浮かべ、左右で色の違う瞳で俺を見つめる……美しく力強い女神の姿があった。

「……だからな……ミヤマ……」
「はい」
「これから先も、お前は今のままの……我の期待に応えてくれるお前であってくれ。そうであるならば……我は、この先もずっと、お前の味方だ」
「……俺はそこまで立派な人間じゃないですし、出来る事なんて本当に些細な事だと思います……けど、そうですね……叶うのなら、この先も……クロノアさんの期待を裏切らない俺で居たいと、そう、思います」

 正直、買い被りも良いところだと思う。俺はそんなに凄い存在なんかじゃなくて、ほんの少し周りの人に恵まれただけの、どこにでもいる平凡な人間だと思う。
 だけど、こんなちっぽけな俺にも、期待を持ってくれる相手が居るなら……俺は、それに応えられるように、全力で頑張りたいと思う。

「……お前は、暖かいな。皆が、お前を好む気持ち……我にも、分かる気がする」
「え、えっと……ありがとうございます?」
「ふふふ……ミヤマ、我にも注いでくれるか?」
「あ、はい。どうぞ……」

 あまり今まで見る機会が無かった、クロノアさんの笑顔……それはとても美しく、どこか神々しさを感じた。

 クロノアさんの要望を聞き、互いにお酒を注ぎ合い、軽くおちょこを合わせて乾杯する。
 いつの間にかクロノアさんの緊張も薄れたのか、スレンダーな美しい体が少しだけ見え、湯の雫で煌く肌に思わずドキッと心臓が高く鳴った。

「……折角の機会だ。もっと、お前の事を教えてくれ、些細な事で良い……お前という人間を、もう少し詳しく知りたいのだ」
「分かりました……じゃあ、代わりに、クロノアさんの事も教えてください」
「そう来たか? ふふふ、ああ、構わないが、面白い話など期待するなよ?」
「いや、そこはたっぷり期待しておきます」
「……まったく、お前という奴は……」

 おどけたように告げると、クロノアさんは楽しそうに苦笑を浮かべる。
 腹を割って話し合ったとでもいうのだろうか? なんだか、今日の会話でクロノアさんの印象が大きく変わったような気がする。

 拝啓、母さん、父さん――クロノアさんの本心を聞けて、本当に良かったと思う。買い被り過ぎだと思う事もあったけど、それでもその期待は嬉しく、決して重荷になるようなものでは無かった。難しい事だとは思うけど、これからも頑張って――クロノアさんの期待に応えられる存在で在り続けたいと思ったよ。



シリアス先輩「皆、騙されるな! 甘酸っぱい真面目な感じにしておいて、良く見たら物凄くいちゃついてるだけだから!! 砂糖なのには変わりないから!!」

【シリアス先輩、次回出番】

シリアス先輩「ふぁっ!? え? ちょっ、え? まって、そんなの台本に……え? まだ、準備が……」
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