懐かしきMMO⑦
葵ちゃんと共に挑戦したイベントダンジョンだが、葵ちゃんの言葉通り最初は非常に簡単でありサクサクと階層を進めることが出来た。
ただやはりというべきか20階辺りから厳しくなってきた。葵ちゃんはある程度装備のそろった四次職で30階層と言っていたので、ある程度の装備の三次職では30階層に辿り着くのも一苦労なわけだ。
ただし、葵ちゃんは四次職でレベルも高く装備もしっかりしており、20階層以降は葵ちゃんが無双しているような感じだった。
三次職とは言え耐久力は高い俺のキャラが敵を集め、葵ちゃんが高火力の範囲魔法で一掃という戦法がかなりハマった。
だが、30階層を越えると葵ちゃんの魔法に耐える敵も出始め、俺も耐えるのが難しくなっていった。
「……さすがにこれ以上は難しそうですね。この35階層をクリアしたら戻りましょうか」
「確かにこれ以上は時間ばっかりかかるね。俺のキャラも25レベルぐらい上がったし、経験値はかなり美味しかったね。限定ボックスは……最後かな？」
「ええ、ダンジョンを出る際にクリア階層に応じて貰えるみたいです」
俺の質問に答えながら葵ちゃんがペアダンジョン内のNPCに話しかけて、この階層でダンジョンを終了することを選択する。
すると次の階層に向かうのとは違う扉が現れ、中に入ると戦果確認用の小部屋に到着した。そこでNPC
に話すとクリア階層に応じたアイテムがもらえ、限定ボックスが50個といくつかの課金アイテムを貰った。
「ひとり50個か、結構もらえるんだね」
「イベントデイリークエストを全部こなしても20個ぐらいなので、やっぱりこのダンジョンの効率が圧倒的ですね」
「せっかくだし、限定ボックスは開けちゃおうか？」
「そうですね。売って快人さんの装備を整えることを提案しようと思いましたが、倉庫のアイテムで纏まったお金が手に入ってたので、イベントを体験って意味でも開けるのがよさそうですね」
買取に出せばそれなりの金額にはなるが、それでも俺や葵ちゃんの装備を更新できるような額ではないので、ここは普通に開けてみることにした。
とりあえずアイテム欄にある限定ボックスを選択して、使用を……。
『シ○○さんが、限定ボックスより天神のアクセサリーを獲得しました』
……うん？ いま、ネットゲーム全体に告知されるワールドアナウンスが唐突に表れた。最初の一文字以外は伏せられたキャラクターネーム……そして俺のゲーム画面に表示されている『天神のアクセサリーを獲得』の文字……え？
「か、快人さん！？ そ、それ、さっき言ってたアクセサリーのひとつですよ！！」
「え？ マジで？ い、いや、ワールドアナウンスが流れた時点でもしかしてって思ったけど……えぇぇぇ！？」
「……快人さんの幸運って、ネットゲームにも適応されるんですね」
「あ、ああ、そうか、もしかしてこれシロさんの祝福のおかげか？」
まさかの一発で超激レアアイテムを引き当てるという豪運を発揮してしまったが、よくよく考えるとこれはシロさんの祝福による幸運ではないかと思い至った。
（いえ、そのゲーム空間は厳密にいえば別の世界なので、私の祝福『は』影響がないように調整してあります）
え？ あ、そうなんですね。
「……いまシロさんから連絡が来たけど、このネットゲームにシロさんの祝福による幸運の補正は影響しないようにしてるらしいよ」
「じゃあ、素の運で引き当てたってことですかね？ とてつもないですね。そのアクセサリーは何種類かあって、どれも凄まじく強いんですが……天神は、どんなこうかでしょう？」
「えっと……うわっ、つよっ……全ステータス+20にHPが100％上昇、物理魔法両ダメージを30％カット、被弾時に5％でダメージ無効化って、アクセサリー一枠でこの性能は……なるほど、トップ層が必死になって狙うわけだ」
とんでもない低確率で手に入る激レアアイテムというだけあって、その性能は凄まじかった。どれかひとつでも強力な効果が4つも付いてるわけだし、特にタンク職にとってはなんとしてでも手に入れたいと思えるような性能である。
「凄いですね。これ仮に売ればたぶん、最前線級の装備を買えるぐらいに金額になりそうですね」
「見るからに強いことしか書いてないもんね。まぁ、俺の職とも相性がいい効果だし、このまま使ったほうがいいかもね」
「ですね。それを装備するとかなり強くなると思いますよ……というか、その装備があるなら、いっそタンク系にステータスやスキルを調整してもいいかもですね」
「確かにそれもありだね。まぁ、それは追々考えるとして、残りを……」
三次職に転職した際に、一回だけステータスとスキルをリセットして振りなおせる権利を貰えたので、葵ちゃんの言うようにタンク型のスキル振りにすることも可能だ。実際にダンジョンに行ってみた感じだと、火力は葵ちゃんが圧倒的だったので、俺がタンクに徹して葵ちゃんが攻撃の形がバランスはいいと思う。
とりあえず思わぬ幸運で凄いアイテムを手に入れることが出来た。レアドロップとは少し違うが、こういうハイレアの装備を手に入れるのは嬉しい。
楽しく遊んでいたころの気持ちを思い出しながら、残る限定ボックスを開ける。
『シ○○さんが、限定ボックスより魔神のアクセサリーを獲得しました』
そして再びワールドアナウンスが表示された……んんん？
～限定ボックス開封時の快人に幸運値の補正がかかっているもの～
創造神の寵愛（影響を及ぼさないよう調整）
運命神の寵愛（影響を及ぼさないよう調整）
大邪神の愛（ほんのり影響している）
機神の狂愛（滅茶苦茶影響してる、というかほぼこれの影響）
究極神の加護（若干影響している）
NEW流転神の祝福（影響している）
NEW電脳神の祝福（大きく影響している）
NEW双極神の祝福（影響している）
NEWその他複数の神々の祝福『超大量』（カナーリスも本名を名乗る前にやってたし、祝福するだけならセーフという判断の元、まだ挨拶に来れてない快人ファンの神々が祝福した）
シリアス先輩「……また変なとこから大量に補正貰ってる。アリスが頭抱えそう……」
