懐かしきMMO⑥
葵ちゃんのいう通り三次職の転職クエストは、指定されたNPCに順に会話していくだけの形式で簡単に終わり
三次職に転職することが出来た。
そして、予定通りブライダルイベント限定のペアダンジョンに向かうこととなった。
「ちなみに、ペアダンジョンってどんな感じなのかな?」
「私も入ったことは無いのでネットの情報だけですが、50階層あるダンジョンですね」
「50!? それはまた結構長丁場になりそうな……」
「ああいえ、ダンジョンと言っても形式的にはモンスターハウスみたいな感じで、小さめのMAP内にたくさんのモンスターが湧いて、それを全滅させると次の階層に進めるってシンプルな形です。ネットの情報だと30階層ぐらいまではモンスターも弱く、ある程度装備の整った四次職なら15分程度でたどり着けるとか……ただそこからかなり難易度が上がっていって、40階層以上は最新ダンジョンレベルの難易度で、さらに45階層以上は最前線級の装備で固めた4次職かつ、互いに役割を理解して立ち回らないと厳しいって話です」
「なるほど、初心者とか中級者でもある程度の階層は進めるけど、完全クリアするには相当のレベルじゃないと難しいわけか……」
とりあえず三次職に転職したての俺ではそんな階層は絶対に無理なので、30階層辺りまで行けたらいい感じだろうか?
「まぁ、それでも報酬がすごく美味しいので回しているプレイヤーは多かったみたいですよ。報酬は主にふたつで、階層クリアごとに貰えるボーナス経験値ですね。三次職になりたての快人さんなら、30階層まで行けば10か20ぐらいレベルが上がってると思いますよ」
「そんなに? じゃあ、このダンジョンを周回すればすぐに四次職になれたりするのかな?」
「いえ、このペダンジョンはキャラクターごとに一日一回しか入場できない制限があるので、同じキャラで集会はできないですね。あくまでキャラクターごとなので、複数キャラクターで何度も入場したり、廃人とかだとゲームアカウントを複数用意して毎日何十週もしていたみたいです」
「……それってつまり、もうひとつの報酬が物凄く美味しいってことかな?」
このゲームはひとつのアカウントに10キャラクターまで作成することが出来る。複数アカウントを持つことも禁じられてはいなかったので、複数アカウントで何十キャラも……というのも廃人と呼ばれるトップ層ならやるだろう。
ただこのゲームはアカウントごとに月額課金制なので、複数アカウントがある場合はそれだけお金がかかるのだが……とりあえず、廃人がそれだけ周回をしたがるような報酬があるということだろうか?
「そうですね。トップ層にとってはその報酬がメインですね。このダンジョンは階層をクリアするごとに参加しているペアそれぞれにイベント限定ボックスがもらえるんですよ。もちろん上の階層に行けば行くほど個数は多くなります」
「イベント限定ボックス?」
「ああ、えっと、快人さんに分かりやすく言うなら古びた宝箱みたいな感じです」
「ああ、なるほど……ランダムでアイテムが獲得できるのか……」
古びた宝箱というのは、様々なモンスターが落とすレアドロップであり、使用するとランダムにアイテムを獲得できる。
大半は二束三文の売却用アイテムや安い消耗品とかなんだが、低確率で装備や高値で売れる換金アイテムなどが出ることもあるギャンブル性の強いアイテムだった。
「というか基本的にこのブライダルイベントのクエストとかでもらえるのは、そのイベント限定ボックスですね。このダンジョン以外にもデイリークエストとかをこなせば貰えますよ。このダンジョンが一番効率よくたくさん集めることが出来るって感じですね」
「それで、その限定ボックスから凄いアイテムが出るって感じかな?」
「ええ、基本的にはちょっとした小遣いになるような換金アイテムだったり、それなりに優秀な消耗品だったりって感じで、低確率でイベント限定装備や衣装装備なんかがでますね。でも、もっとさらに凄い低確率……それこそ100万分の1だとか1000万分の1だとかって言われてますが、滅茶苦茶強いアクセサリー装備がでるんですよ。それこそトップ層が血眼になって欲しがるような性能の逸品です」
「なるほど、それで、その超レアアイテムを求めてトップ層は滅茶苦茶な周回をしてるってわけか……でも、あくまで確率だから低階層までしかクリアできない初心者や中級者でもゲットできるチャンスはあるわけだね」
「はい。あとイベント限定ボックスは売り買いもできるので、市場の買取に持って行って売るのも手です」
あくまで運次第ではあるが、初心者や中級者にとっては安定してお金を稼げたり一攫千金のチャンスがあり、上級者にとっても超強い装備を手に入れられるかもしれないイベントってわけだ。
「まぁ、あんまり気にせず、快人さんは久しぶりの戦闘を楽しんでください。私こう見えてけっこ強いですから、ある程度のモンスターまでならソロでも全然平気ですしね」
「了解。ブランクも長いし、とりあえず昔を思い出しながらプレイすることにするよ」
そんな風に会話をして微笑み合い、俺と葵ちゃんはイベント限定ダンジョンに入場した。
シリアス先輩「おっと、その幸運値がバグりちらかしてるやつの前に、確率系のイベントを出すのはフラグでしかなさそうなんだが……」