懐かしきMMO⑤
ゲーム内の結婚に必要な手順はそう多くない。ふたりパーティを組んだ状態で専用NPCに話しかけ、結婚資金となるお金を払えば成立する。
現在はブライダルイベント中ということもあって結婚費用は無料になっており、すぐに結婚の手続きは終了した。
結婚した場合は結婚指輪というアクセサリーがもらえるのだが、特に効果はなくアイテム説明欄に互いのキャラクターの名前が記入されているだけの記念品のようなものだ。
「なんだかんだで、この結婚指輪のアイテム初めて見たかも」
「ああ、快人さんは基本ソロっていってましたしね。ギルドとかには入って無かったんですか?」
「一時期入ってたこともあったし、攻城戦とかにも参加してたことはあったけど、対人コンテンツはやっぱ疲れるから、なんだかんだでソロに落ち着いた感じだったね」
「あ~その辺の攻城戦ギルドは、ガチ勢って感じはしますよね」
ギルド……冒険者ギルドとかそういうのではなく、プレイヤー同士が集まって作るチームのようなものがあり、俺もそれに所属していたことはあった。
ただ俺の居たギルドは攻城戦……いわゆるギルド同士の戦い的なものにも力を入れており、攻城戦は週に1回なのだが結構長時間戦うことになるし、準備とかも忙しくて大変なのでかなり疲れる。
もちろん買った時の恩恵は大きく、攻城戦でしか手に入らないアイテムなんかもあってトップ層ほど対人戦に力を入れていたイメージだ。
「とりあえずこれで結婚は完了だけど、さっそく限定ダンジョンに行くのかな?」
「……その前に快人さんのキャラを三次職に転職させちゃいませんか?」
「ああ、確かに……葵ちゃんに教えてもらったアイテムを売ったおかげで資金は結構あるし、ダンジョンに行くにしても転職が先か……ちなみに、俺の職の三次職ってなんだろ?」
葵ちゃんが言っていた通り、俺の倉庫に入っていたレアアイテムは買取募集をしているチャットがあり、そこに売った結果かなりの額のお金を入手できた。
これである程度の装備を新調できるが、新調するにしても方向性は決めておく必要がある。ちなみに俺のキャラの職はナイトであり、高い耐久力とそれなりの攻撃力のある前衛向きの職だ。
俺は基本ソロだったのでステータスやスキルはタンク向けにしていないが、パーティプレイでの需要はタンク役が圧倒的なのでタンク職といっていいだろう。
「快人さんはナイトですよね? 三次職はみっつですね。ナイトから正当に進化する感じで高耐久なロイヤルナイト、攻撃的なスキル構成になるドラゴンナイト、ステータスとかが中衛向きになりますが魔法が使えるようになる魔法剣士です」
「結構波形するんだね。う~ん、葵ちゃんが魔法職だし、一緒に遊ぶなら前衛向きの方がいいよな……となるとロイヤルナイトかな?」
「そうですね。ロイヤルナイトはナイトの上位互換って性能なので、久しぶりの快人さんにもやりやすいかもしれません。四次職になればタンク特化のロイヤルガードとか、回復魔法が使える聖騎士とかになれますし安定感は抜群ですね」
「じゃあ、とりあえずロイヤルナイトになる感じでいいかな……三次職の転職って時間かかるかな?」
このゲームの転職はクエストをこなすことで完了するので、それにあまり時間がかかるようなら葵ちゃんを待たせてしまうかもしれないと思って尋ねると、葵ちゃんは微笑みながら言葉を返してきた。
「いえ、三次職の転職クエストはどの職も簡単で会話をこなすだけです。四次職は結構時間がかかったり必要アイテムがあったりしますけどね」
「それなら、葵ちゃんを長く待たせなくて済むからよさそうだね」
「ふふ、まぁ、待ってる間もこうして話ができるので退屈する心配はないと思いますけどね。こうやって隣に並んでプレイできるのは、思った以上にやりやすいですね」
「意思疎通とかも簡単だし、確かに一緒にプレイする分にはかなりやりやすいね」
当たり前ではあるが普通にチャットで会話するよりもこうやって隣同士で会話したほうが、意思の疎通はスムーズだし互いの状況も分かりやすい。
葵ちゃんも俺に説明しやすいというのもあるだろう。まぁ、強いて問題点を挙げるとすれば、本当に今日の葵ちゃんはテンションが高く、距離感が近いので不意にすぐ近くに顔があったりしてドキッとする。
……まぁ、その辺りはゲームに集中することで対応しよう。
シリアス先輩「ちなみに小ネタだが、快人たちがプレイしているMMOのモデルはラグ○ロクオンラインだ。もちろんあくまで参考にしてるだけなので違う部分は多いが、描く際に思い浮かべているのはソレらしい」