懐かしきMMO③
時間が無くて少々短めです。
葵ちゃんに教えてもらいながら装備を整えるために市場に移動している途中で、ふとあることを思い出して葵ちゃんに尋ねてみた。
「これ、ちなみにゲーム内の時期っていつなんだろ? こっちの世界と向こうの世界のどっちの基準なんだろ?」
「……えっと……ああ、なるほどそういう感じになってるんですね!」
「うん?」
「ああいえ、季節的には6月のイベントをやってるみたいなので、こっちの世界の季節に合わせてますが、そうなると私の場合は少し過去になるんですよ。それでよくよく見てみると、一部のアイテムとかが無いので……私たちの居た世界の6月時点のこのゲームにログインしてる状態って感じですかね?」
ああ、もしかしたらこのネットゲームの電脳空間は一種のパラレルワールドみたいな感じになってるのかもしれない。本来俺や葵ちゃんたちは夏前ぐらいの時期に召喚されたので、葵ちゃんはすでにこの6月のイベントをプレイ済みであるはずだ。
だからおそらく建国記念祭の時と同じように、俺たちの居た世界で6月のタイミングで葵ちゃんがひとりでプレイしている世界線と、俺と一緒にこうしてプレイしている世界線に分岐してる感じなのだろう。
「……たぶん快人さんの推測であってると思います。そうなるとたぶんですが、私が元の世界に戻ってログインすると、私がひとりでプレイしていた。正規の時間の流れのプレイデータに繋がって、こちらの世界でログインした場合はこちらの世界の時間に合わせた世界線にログインしてる……まぁ、時間のズレとかいろいろ疑問はありますが、その辺りツッコミ出すとキリが無いので、その辺は常識が通用しない神の力ということで納得しておきましょう」
「そうだね。まぁ、深く考えてドツボにハマるよりは割り切ったほうがいいよね。けど、それだと葵ちゃんはもうこのイベントはプレイ済みってわけだ」
「……ああ、いえ、それが……この6月のイベントってブライダルイベントで、メインの内容がペアでしか入場できない限定ダンジョンだったんですよ。ソロでこなせるイベントもあるんですが、一番のメインはソロじゃできなくて……私はソロだったので、あんまりしっかりやってなかったですね」
ああ6月でブライダルイベントだから、そういう制限があるのか……俺もネットゲームしてた頃は基本ソロだったし、ペアイベント的なのはあんまやったことが無い気がする。
「ゲーム内結婚とかしてないと入れないってわけではないんだね」
「ええ、流石にそこまでは制限は無いです。ただ、結婚したペアでダンジョンに入るといろいろなバフがあったり、そのダンジョン内だけで使える強力なスキルが仕えたりっていろいろ有利になるみたいで、結婚して入るのを推奨されてましたね。イベント時期だけの野良結婚相手を募集するチャットとかも結構立ってましたよ」
「あはは、それはまたなんとも言えない光景だね」
「ですね。まぁ、私はゲーム内とはいえ、そんなに簡単に結婚とかは……」
「……葵ちゃん?」
「……快人さん、やっぱりせっかくのイベントですし体験してみましょう。快人さんのキャラは私に比べればレベルが低めで苦戦するかもしれませんが、そこはシステムの補助を最大限に活用すればなんとかなると思います!」
「……えっと、つまり?」
「私と快人さんでゲーム内結婚してイベントダンジョンに行きましょう!」
グッと拳を握って力説する葵ちゃんの言い分は……確かに一理はある。イベント限定スキルがどのようなものかは分からないが、ダンジョン内でバフがかかるなら葵ちゃんのキャラに比べて弱い俺のキャラもなんとかなるかもしれない。
……だが、ひとつここで重大な問題がある。葵ちゃんの使用キャラはもちろん昔俺と一緒に遊んでいたハイビスというキャラであり、俺は葵ちゃんから詳細を聞くまでハイビスくんは男だと思っていた。
……うん……葵ちゃんのキャラは……男性キャラであり、俺のキャラも男性なんだけど……大丈夫なのか?
シリアス先輩「よくない流れ……なにが悪いって、6月って明記されたところがよくない……これ、葵の誕生日に関する話題にならない?」