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特別商品⑫



 トーレさんに案内されて辿り着いた部屋のドアを開けて中に入ると、そこはまるでホテルのロビーかと思うような広い空間だった。

 かなり広い空間ではあるが、家具があって生活してるような感じではなく、よく見るといくつもの扉が見えた。


「滅茶苦茶広いですね。ここが部屋なんですか……」

「うん。まぁ、私たちは三人の部屋を繋げた上で空間魔法で拡張してるからね。広さはかなりのもので……ちなみにここは玄関だね。まぁ、私は空間魔法なんて使えないからチェントとシエンがやってくれたんだけどね!」

「貴族の屋敷の玄関って言われても納得するぐらいの広さですね」

「……カイトの家の玄関の方が広い気もするけど……まぁ、結構いろいろな部屋があるんだよ。チェントとシエンがそれぞれ趣味用の工房持ってるし、料理とかもこの部屋で出来るようにキッチンとかもあるしね」


 そういえばチェントさんとシエンさんは、それぞれ自分で陶磁器とかガラス細工を作ったこともあるって言ってたっけ……工房自体もあるなら、部屋が広いのも納得である。


「向こうのドアが応接室だね。チェントとシエンもそこでお茶の用意して待ってるから、さっそく行こう!」

「分かりました。そういえば、チェントさんやシエンさんの工房みたいに、トーレさんの趣味用の部屋もあったりするんですか?」

「いい質問だね。私は移り変わる流行に鋭いアンテナを持って接してるから、趣味も流動的で多角的かつ革新的な感じだから、コレっていうメインの趣味は無いんだよ。その時々で、流れに身を任せるのさ……」

「……興味を持った物にとりあえず手を出すけど長続きしないって聞こえたんですか?」

「そう聞こえた? じゃあ、カイトの耳は正常だね。どうだ、まいったか!」

「いやいや!? なんで誇らしげなんですか!?」


 流行りものにはとりあえず手を出すけど、ある程度で飽きるみたいなことをそれっぽく言っていたトーレさんだが、俺が突っ込んでも否定しないどころかなんか誇らしげだった。


「いろいろなことに興味を持って手を伸ばせる私って、経験豊富でカッコいいよね」

「自己評価たっか……」


 ドヤ顔をしているトーレさんに苦笑しつつ、応接室に入るとチェントさんとシエンさんが居て、俺を見て笑顔で会釈してくれた。


「こんにちは、カイトさん」

「ようこそ、歓迎します」

「こんにちは、チェントさん、シエンさん、今日は急に訪ねてきてすみません」


 応接室もかなり広くお洒落な雰囲気だった。トーレさんがこんなに綺麗に部屋をコーデできるとは思わないので、たぶんチェントさんとかシエンさんが整えたのだとは思う。

 ああいや、でも仕事モードのトーレさんはしっかりしてるし、応接室となると仕事関係で使用することもあるだろうから綺麗に整えられてもおかしくはないかもしれない。


「……うん? どうしたの、カイト? 熱い視線で見つめて――はっ!? そうか、ついにコーカンドってやつが溜まったんだね!!」

「いや、凄い部分もちゃんとあるはずなのに、不思議となんか絶妙に信用が無いなぁって……」

「おっかしいなぁ? 唐突な流れで貶されたぞ? 気安さは感じるからコーカンドは上がってそうだけど、お姉ちゃんへの尊敬の念は地を這ってる気がする……気のせいかな?」

「ノーコメントで……」


 仕事ができるところも見ているし、なんだかんだで洞察力とかもあってふざけてるようでも要所要所で的確な行動を取ったりするのは分かってるし、間違いなくいい人だし凄い人でもあるとは思う。

 だけど、なんか変に愛嬌があるというか……絶妙なダメさがあるというか……まぁ、そういうところもトーレさんの魅力ではあるのだが……。


 トーレさんとコントのようなやり取りをしつつ促されて席に座ると、チェントさんとシエンさんがお茶と茶菓子を素早く用意してくれる。


「それで、今日はどうしたの?」

「ほら、前にシンフォニア王国の建国記念祭の時にネピュラの焼いた陶磁器をチェントさんに見せる約束をしたじゃないですか、少し遅くなりましたがそれを持ってきたんです。あああと、ガラス作りも始めたみたいなのでその作品も持ってきました」

「それは、わざわざありがとうございます。たしかネピュラさんは、ニフティのカップの初期ロットを作ったんでしたよね? 私は初期ロットは見ておらず店頭で販売されていた販売物を見ただけですが、量産用にやや質を落としていながら素晴らしい完成度だと感心しましたので、そのネピュラさんの作品が見れるのは楽しみですね」

「……ガラス作りも始めたのですか? かなり多芸な方ですね」


 どうやらチェントさんはニフティの店舗に足を運んでくれたみたいで、そこで量産品のカップは見たことがあった様子だった。

 そしてシエンさんはネピュラがガラス作りも始めたと聞いて少々驚いていた。いや確かに、カナーリスさんが来るまでは設備的な部分で有毒物質などを懸念して作らないようにしていたと言っていたから、カナーリスさんの能力あってこそではあると思うが……。

 あとトーレさんは、なんかわかったような表情で頷いていたが……たぶんなにも分かって無いと思う。


「とりあえず最初に陶磁器を出しますね。シンフォニア王国の五色焼きを元にして、新しい製法と釉薬で作ったみたいです」

「……うん? え? 新しい製法と釉薬……え? いえ、そんな簡単に開発できるものでは……五色焼きはかなり完成された焼き物ですし、過去に六色を同時に出そうと挑戦して失敗した職人が数えきれないほど……」

「ああ、今回の作品には十色使われてるみたいです」

「………………ううん?」


 取り出す前に簡単にネピュラに伝えて聞いた情報を話したときに、チェントさんが浮かべていた鳩が豆鉄砲を喰らったような顔が、なんとも印象的だった。




シリアス先輩「胃痛になりそうであるふたりと……たぶん胃痛にならないであろうつよつよメンタルお姉ちゃんの対比……驚いて慌ててるふたりの横で、のほほんとよく分かってない顔してそうなのが目に浮かぶ」

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― 新着の感想 ―
陶磁器は新製法で作り上げ、硝子細工は基礎の部分の仕事で熟練者を驚かせた絶対者…。
 自分の趣味用の工房が別の部屋にあるのか。やっぱり空間拡張出来るとそうなるよね。 トーレさんの趣味は特になく流行には手を出すけど続かない……つまり、散財するような趣味はなく流行には鋭くて多方面に興味を…
今回は見せるところまでいくかと思ったのにまだなのか…
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