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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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フェイトさんの魅力なんじゃないかって思えてきたよ



 しょっぱなから理性の限界に挑むような事態に遭遇しつつ、シロさん達と一緒に温泉に入る。
 神界は絶対的な縦社会という言葉に偽りはなく、クロノアさん、フェイトさん、ライフさんの三方は、シロさんが湯船に浸かるまで微動だにせず待機しており、シロさんが湯に入って数秒経ってから動きだす。

「……成程、温泉とは良いものですね」
「え、ええ……」

 長い髪を湯につけながら、どこか楽しそうに語るシロさんの言葉を受け、そんな些細な一言でも緊張が高まるのを感じつつ頷く。
 出来るだけ視線を向けないようにと気を付けて入るが、それでも微かに見えるシロさんの肌は、どうしようもないほど美しい。

 そしてシロさんは少し何かを考えるように顎に手を当てる……顔は相変わらずの無表情だったが……

「皆、快人さんとゆっくり話したいでしょうね。のぼせないようにして……」
「……」

 なんか恐ろしい事言い始めてるんですけど!? 気絶出来ないようにした上に、のぼせる事も封じられるの!?
 シロさんが告げた言葉に唖然としていると、シロさんは指を軽く振り、お湯の上にお盆と……熱燗? 日本酒らしきものを出現させる。

「時空神、運命神、生命神」
「「「はっ!」」」
「皆、それぞれ快人さんと話したい事もあるでしょう。よって少しずつ時間を与えます。あちらの景色の良い位置で、順に快人さんと一対一で話す事を許します」
「……い、いえ、我は別に……」
「ありがとうございます! シャローヴァナル様の御厚意、ありがたく頂戴いたします!」
「勿体ない配慮、痛み入ります」

 三者三様の反応……クロノアさんはやや戸惑い、フェイトさんは分かりやすいほど喰いつき、ライフさんは淡々とシロさんの配慮に従うって感じだ。
 後、当人の俺の意見は完全に無視!? もう順番に二人きりで話す事決定!?

「はい」
「……」

 うん。分かってた、分かってたんだけどね……シロさんにこんな抗議が通用しないのは……
 ともあれ、俺は最高神の三方……そしてシロさんと順に二人きりで話す事が決定した。








 大体予想通りではあるが、順番はフェイトさん、ライフさん、クロノアさん、シロさんのとなり、まずはフェイトさんと一緒に温泉の端、木々と景色が一望できる場所に移動する。
 木々の隙間からは空中に浮かぶ神域らしく空が見え、これはまた新鮮な絶景だ。

「やったね! カイちゃん、二人きり……じゃないけど、二人きりだよ!」
「そ、そうですね」
「ちなみに、さっき言った通り、私はおさわりOKだからね! ちょっと景気付けに、二~三揉みしとく?」
「しません」
「ちぇ~」

 本当にフェイトさんはグイグイ来るので心臓に悪い……てか湯船から、胸を出そうとしないで!! わざとだろうけど、絶対止めて!!
 フェイトさんはかなり俺の近くに来て、そしてお盆に乗った熱燗を手に持つ。

「はい、カイちゃん。注いであげるよ」
「……あ、ありがとうございます」

 おちょこに酒を注いでもらい、フェイトさんにお礼を言ってから飲む。
 日本酒を飲むのは初めてだったが、清涼感のある喉越しで辛みが心地良い。

 そんな俺の様子をフェイトさんはどこか楽しそうに眺めながら、ゆっくりと口を開く。

「ほんと、カイちゃんはつれないよね~私くらいの美女に迫られてるのに」
「それ、自分でいうと台無しですからね」
「あはは、かもね~」
「そういえば、前々から聞こうと思ってたんですけど……」
「うん?」

 予想していた程フェイトさんが接触してきたりしなかったおかげもあり、少し余裕が出来た。
 そして折角フェイトさんとゆっくり話す機会なので、前々から疑問に思っていた事を尋ねてみる事にした。

「……フェイトさんは、運命を操れるんですよね?」
「そだよ」
「それって、俺の考えてる通りなら……この世界の殆どのものは、フェイトさんの思い通りに動かせるって事ですか?」
「うん、そんな感じだね……私はシャローヴァナル様を除いて、神界最強の神だからね~えっへん!」
「え? そうなんですか!?」

 フェイトさんがシロさんを除いて神界最強? って事は、最高神の中で一番強いのはフェイトさんって事か……ってきりクロノアさんが一番強いんだと思ってた。

「私はシャローヴァナル様から、世界の理に干渉できる権能を与えられてるからね。神族の中で、私が一番シャローヴァナル様に近い力を持ってるんだよ……だから、私が本気を出す時は、『目』がシャローヴァナル様と同じものに変わる……こんな感じでね」
「……本当ですね」

 フェイトさんがそう告げると同時に、普段は赤紫色の目が、シロさんと同じ金色に変わる。

「コレが私の持つ権能。シャローヴァナル様と同じ、運命を……過去と現在と未来を見通す瞳だよ。凄いでしょう? 惚れた?」
「惚れてません」
「ちぇっ……まぁ、そんな訳で私は神族の中ではシャローヴァナル様に次いで強力な力を持つよ。カイちゃんの言葉通り、その気になれば殆どのものは思い通りに動かせる……私の力が通用しない存在は、この世界には片手で数えるほどしか存在しないね」

 そう告げた後でフェイトさんは湯の中から手を出し、それをパーにしてから一本ずつ指を折っていく。

「まず、当然だけどシャローヴァナル様には通じない。んで、なんでか分からないけど冥王にも通じないね……やっぱ、シャローヴァナル様と互角の力を持ってるからなのかな?」

 クロがシロさんの対存在……半身とも言える存在である事は、どうやら最高神であるフェイトさんも知らないらしい。
 フェイトさんは不思議そうに首を傾げながらも、続けて指を折る。

「後は、シャルたんにも通じないね」
「アリスにも、ですか?」
「うん。まぁ、シャルたんの場合は少し違ってて……シャルたんは『運命そのものを切り替える術』を持ってて、それで対抗されたね……んで、最後にカイちゃん」
「……やっぱり、俺にも効かないんですね。それは、シロさんの祝福があるから?」
「正解、その通りだよ」

 そう、コレに関しては前々から予想していた……俺にはフェイトさんの運命を操るという、あまりにも強力な権能が効かない。
 だからこそ、ずっと疑問に思っていた事がある。

「……フェイトさん、質問に戻りますが……じゃあ、なんで、俺なんですか?」
「なにが?」
「フェイトさんが誰かに養ってもらいたいだけなら、それこそ、フェイトさんなら簡単にそれが出来るんじゃないですか? なんで、わざわざ能力が効かない俺を?」

 そう、コレがずっと疑問だった。
 フェイトさんは物凄くだらけていて、常に働きたくない、俺に養ってくれと言ってきている。
 初めはその勢いに戸惑って考える暇もなかったが……改めて考えてみれば、それは運命を操れるフェイトさんにとっては、簡単に実現できる事の筈……いや、仮に運命を操れなくても、最高神であるフェイトさんが頼めば無条件で養ってくれる相手はいくらでもいそうな気がする。

「……だって、つまんないじゃん」
「……え?」

 それは、本当に普段のフェイトさんからは想像も出来ないほどに冷たい声だった。

「私はさ、カイちゃんも知ってると思うけど面倒な事が嫌い。でも、それ以上につまらない事が嫌いなんだよね~」
「……」
「私の思い通りに動く相手、思い通りに喋る相手……そんなの全然面白くない。ただ人形で遊んでるのと同じじゃん……これっぽっちも、楽しくないよ」
「わ、分かるような……分からないような……」

 言われてみれば納得もできる。
 この世界の大抵の存在はフェイトさんにとって思い通りに動かせる……だからこそ、つまらない。それは絶対とも言える力を持つ最高神だからこその感想であり、フェイトさんの本心からの言葉だと思った。

「だからさ、カイちゃんは楽しいんだよね……全然私の思い通りにならないから、どうしようって、こうやってアプローチすればいいのかな? こうやれば仲良くなれるかな? って考えるのが凄く楽しいよ」
「……フェイトさん」
「カイちゃんに養ってもらえば、私はきっと退屈しないし……甘やかしてくれそうだから、思う存分ニートが出来そうだしね!! 働かずに済んで、退屈もしない! 最高だね!! パーフェクトだよ!!」
「……台無しです」
「ありゃ?」

 思い通りに出来る相手はつまらないというのも本心だろうが、やはりニートになりたいという駄目な目標の方も本心らしい。
 おどけたように話すフェイトさんの言葉を聞いて、不思議と俺の口からも笑みがこぼれた。

 そんな俺を見て、フェイトさんは満面の笑顔を浮かべた後、本当に楽しそうに宣言する。

「まぁ、覚悟しといてよ……私はめんどくさがりだけどさ、一途でしつこいよ? 絶対、カイちゃんの事を諦めたりなんてしないからね~」
「……恐ろしい話ですね」
「あはは……まぁ、最近はちょっと……ほんのちょっとだけど……カイちゃんの為になら、少しぐらい働いても良いなぁ~なんて思ってるけどね」
「……え?」
「なんでもないよ! ささ、じゃんじゃん飲もう! そして酔った勢いで、私に手を出すんだ!!」
「あっ、俺酔わないらしいですよ?」
「……なんっ……だって……」

 拝啓、母さん、父さん――フェイトさんと話をしたおかげで、普段は飄々としている彼女の事が少しだけ分かった気がした。グイグイ来るのもめんどくさがりなのも相変わらずだけど、それもまた――フェイトさんの魅力なんじゃないかって思えてきたよ。



砂糖フェイズ

先鋒:フェイト
次鋒:ライフ
副将:クロノア
大将:シロ

鉄壁の布陣である。
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