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特別商品⑧




 アイシスの居城にあるテラスに今回の参加者が全員集まりお茶会がスタートする。もちろんメインはMKロイヤルであり、アインがさっそくそれぞれの前に完璧に淹れたMKロイヤルを置き、自分自身も席に座る。

 普段であれば席に座ることのなくクロムエイナの後方に控えるアインではあるが、今回は事前に同じ席につく許可を前もってクロムエイナにとってある。

 もちろんクロムエイナとしては、許可なんて取らなくても同じテーブルに付けばいいと思っているのだが、その辺りはやはりメイドとしての拘りがあるようだった。


「……色、香り、共に素晴らしい」

「……同感ですよ、同感ですよ。これってば、これってば、間違いなく超一級品の紅茶……」


 MKロイヤルが飲みたくて仕方なかったアインとジュティアは、それこそ目を皿のようにしてMKロイヤルに注目しており、色合いなどを目に焼き付けようとしている様子だった。

 そんな光景に苦笑しつつ、アイシスがカップを手に取り、他の者たちもそれに続いて一口MKロイヤルを飲み……まるで時が止まったかのように、全員一瞬硬直した。


「……はぇぇ、凄いっすね。紅茶はまだあんまりたくさん飲んでないっすけど、こんなに美味しいものもあるんですね」

「……ホンマやねぇ。ウチもウルと同じで、紅茶はあんまりいろんな種類は飲んだことないけど、これが物凄く美味しいってのは分かるわ~」


 感動した様子で目を輝かせるウルペクラと、それに同意するスピカ……ウルペクラはまだ幼く、スピカは最近まで精霊体として顕現することが無かったので、両者ともに飲んだことのある紅茶の種類は少ない。

 だがそれでも、このMKロイヤルが圧倒的に美味しいというのは理解できた。


「これはまた、凄まじい味わいだな。深みや香りもそうだが、それ以上に美味という感想が湧き上がってくる。思わず一瞬思考が停止してしまった」

「あア、これは他とはレベルが違うナ。月に一名のみに限定当選という形を取るのも頷けるほド、まさに圧倒的な美味という言葉がしっくりくる一品に感動すら覚えル」


 シリウスとラサルもMKロイヤルのあまりの美味しさに圧倒されていたが、それは他の者たちも同じであった。


「いやはや、私も紅茶は好きでよく飲むが……これほど味は初めてだね」

「ああ、これはある種の究極系であろうな。むろん紅茶には様々な味の系統がある故、一概にどれが最良の味であるとは言えぬが、ひとつの味わいとして究極の域まで高められているのは疑いようもない」


 比較的よく紅茶を飲むポラリスや、料理が得意で紅茶などもよく淹れるイリスもMKロイヤルの味には驚愕しており、イリスはこの味を紅茶としてのひとつの究極系と評していた。

 同じようにクロムエイナも感心したような表情を浮かべて、隣に座っていたアイシスに話しかける。


「これは凄いね。いままで単純な味って意味では、グロリアスティーが一番上だと思ってたけど……これは明らかにそれを越えてるよ。まぁ、グロリアスティーに関してはシロが割と適当に作ったらしいから、シロもその気になればこのレベルの味は作れそうではあるけど……どっちにせよ、神の奇跡とか呼ばれてもおかしくないレベルだね」

「……うん……凄く……美味しい……さすが……カイトの名前が冠してあるだけある」


 そんな風に口々に感想を言い合う者たちの中で、このMKロイヤルを切望していたアインとジュティアは、共に目を閉じて涙を流していた。


「……凄いよ、凄いよ……ボクってば、心の底から感動しましたよ。紅茶にはまだまだボクにとって未知と言えるような味があるんだって、それを知れたことがなにより嬉しい……アイン様も同じじゃないですか?」

「ええ、全面的に同意します。拘り学び、様々な工夫を行い……それこそ、極めつくしたとすら感じていた紅茶の更なる可能性を垣間見た思いです。メイドだけではなく、紅茶にもまた限界などというものは無く、我々が極めたと思っていた先にもまだ道は続いていたのですね。これから先の紅茶の進化が楽しみになるような、言葉に出来ぬほど素晴らしい体験でした」


 アインとジュティアは共に紅茶を極めているというレベルの知識と技量を持っており、それこそ現存する紅茶は全て学び尽くしていると言えるレベルだった。

 だが、ネピュラの作る茶葉はそれまでとは違う新しい可能性をふたりに見せてくれる。最初の雑味を加える茶葉もそうだが、それ以外の茶葉も型破りかつ画期的で、紅茶の可能性がどんどん広がっていくようであり、紅茶好きのふたりにとってはまだまだ先があるというのは本当に喜ばしいことだった。


「……でもでも、でもでも、決してこれは紅茶の究極では無い。ひとつの味としては現状では、頂点といっていい完成度ですけど、紅茶にはいろいろ風味の種類がありますし、他の茶葉にもまだまだ数えきれないほどの可能性があるって、そう思いますね」

「ええ、今後も紅茶は進化していくでしょう。そして我々も、それに恥じぬように技術や知識を常に更新し、磨き続けていかなければなりませんね」


 両者揃って未来を見据えるかのような輝く目をしており、そんなふたりの心境を他の者が理解できるかどうかは定かではないが、とりあえず両者にとってMKロイヤルを飲めたことは本当に素晴らしい経験になった様子だった。





シリアス先輩「他の連中が皆味について感想を言ってる中で、ふたりだけ紅茶界の未来について語ってる辺りがガチ勢っぽさがあるな……」

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です!連続で読みました!最初はアイシスさんとジュティアさんが会話でほのぼのしてる様子がほっこりしました アイシスさんの笑顔も増えて本当に良かった そしてアイシスさんの所で招待した方達と一緒…
 アインさんやジュティアさんから見ても、色や香りも超一級品なんだね……あまり紅茶を飲まない人飲んでない人や世界一紅茶に詳しい人も全員共通で一瞬硬直するのは確定なんだw  紅茶の美味しさに驚愕してる…
紅茶の効果や効能は、無しかぁ〜!! 主要メンバーの王達の名前や由来のある 飲食物シリーズも面白そうだね。 女子会〜バレンタイン企画とかかな? 毎日最高だね。
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