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特別商品⑤



 魔界の中央大森林の一角にある大樹姫ジュティアの家では、たまたま遊びに来ていたティルタニアがジュティアが出してくれたミニクッキーを食べつつ、対面で机に伏して項垂れているジュティアに声をかけていた。


「ジュティア、元気出すですよ」

「……これさ、これさ……冊子では抽選済みって書いてるけどさ、抽選はすんでるけど当選者への通達はまだで、ボクが当選してる可能性とか無いかな?」

「普通、冊子より前に当選者に教えると思うです。そうじゃなかったとしても、冊子と同じタイミングでは教えるんじゃないですか?」

「……だよね……うぅ……MKロイヤル……とっても、とっても、気になるんだぜぃ」


 アインがそうであったように、ジュティアもまたニフティの冊子に書かれていたMKロイヤルの記事を見て強い関心を持つのと同時に、己が初回当選者でないことに絶望していた。

 もちろん商品の意図は理解しているため、快人の元に突撃したりなどということはしないのだが、MKロイヤルが飲めないことに深く絶望はしており机に顔を伏していた。


「ティルも当たらなかったですけど、毎月ひとりに当たるってことですし100年ぐらいの間には一回ぐらいあたるんじゃないですかね? 気にせずのんびり待てばいいと思うですよ~」

「ふぐぅ、ボクが飲んだことのない紅茶が存在している事実が、とってもとっても辛いんだぜぃ……」


 時間間隔が非常に大らかなティルタニアにとっては、抽選に外れたのはまったく気にするようなことではなく、本人が言っている通り「100年以内ぐらいに当たればいいなぁ」程度の考えであった。

 まぁ、ティルタニア自身がジュティアほど紅茶好きというわけでもないため、そこまで紅茶に対して強い関心が無いからというのもある。

 ティルタニアにとっては冊子の後半に書かれていた、ニフティのカフェの新メニューのフルーツタルトの方に興味があるくらいだった。


 そんなやり取りをしていたのだが、不意にジュティアが机から顔を上げ、ティルタニアもパァッと表情を明るくして入り口の方向を向く。


「リリウッド様ですね!」

「そうだね、そうだね。なにか用事かな? それとも、顔を見に来てくれたのかな?」


 そう呟きながらジュティアが家の入口の方に向かうと、ノックの音が聞こえてきてふたりが察知した通りリリウッドが来訪した。


『こんにちは、ジュティア……おや、ティルタニアも居たのですね』

「いらっしゃい、リリウッド様。どうぞ、中に……」

「こんにちはですよ、リリウッド様~」


 リリウッドの来訪を笑顔で迎えるジュティアとティルタニア……リリウッドは配下や眷属とのコミュニケーションも大切にしているので、たまに眷属たちの家を訪問して、雑談をしたりすることがある。

 七姫として緊急に動く必要がある事態などであれば、直接の訪問ではなく特殊な魔法などで知らせてくる。訪問時の雰囲気などからも特に緊急の用事があるわけではなさそうだと判断し、ジュティアはリリウッドを家の中に通して、マジックボックスから高価な水を取り出してコップに注ぎ、リリウッドの前に出す。


 基本的にリリウッドは紅茶などは飲まずに水のみを飲むため、リリウッドが訪れた際にもてなせる様にと七姫を始めとした眷属は、マジックボックスなどに質のいい水を用意している。


「どうぞ、リリウッド様……今日は、ボクの様子を見に来てくれたんですか?」

『ありがとうございます。そうですね、それもありますが……別件で貴女の予定を確認したくて来ました。カイトさんの紅茶ブランドが、MKロイヤルという茶葉を抽選で一名のみに販売しているという情報は知っていますか?』

「え? あ、はい。丁度いま、丁度いま、その話をしていたところですよ」


 ジュティアがMKロイヤルについて知っていることを確認したリリウッドは、一度頷いてから本題を切り出す。


『実はそのMKロイヤルの初回抽選にアイシスが当選したのです』

「え!? ア、アイシス様が初回当選者なんですか!?」

『ええ、それでMKロイヤルに関して一杯分余裕があるらしく、私が誘われたのですが……貴女もよく知る通り、私は水以外をほぼ飲みませんので、代わりに紅茶好きの貴女に飲ませてあげて欲しいと頼んだところ、アイシスが快く了承してくれたので、日程などの予定を確認に来ました』

「リ、リリウッド様ぁ……あ、ありがとうございます!! いつでも大丈夫です!!」

「ジュティア、おめでとうですよ~よかったですね!」

『ふふふ、お礼はアイシスに言ってあげてください。配下が出来ていろいろ精神的にも余裕ができたのか、アイシスも今回のように積極的に他の陣営とも関わろうとしているのは……なんとも喜ばしいものですね』


 先程までの絶望はリリウッドの言葉で消え去り、ジュティアは光り輝くような一目見て大喜びと分かる表情に変わり、それを見たティルタニアも嬉しそうに祝福する。

 リリウッドはそんな光景を微笑まし気に眺めつつ、己が頼んだこととはいえ六王以外と関わることにも積極的になりつつあるアイシスの変化を心から喜んでいた。




シリアス先輩「ジュティアだけ羨ましいとか、そんな風にならずに自分の事のように喜んでる辺りに、ティルの性格の良さが出てる気がする。まぁ、ジュティアほど紅茶に拘りもないってのも大きいんだろうが……」

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― 新着の感想 ―
本来ならこれだけ他人を想えるアイシスを人間不信に変えた孤独の永さも凄ければその孤独を一瞬で溶かす快斗の運命力の高さよ
女子会だぁ~!!恋バナだぁ~!!紅茶には、特殊作用や効果は、無いのかな?
 ジュティアさんはアインさんみたいにどうやって当選者を見つけるかとかは考えないし、暴走気味にはならなくて偉いよね〜。 アイン「…………」  い、いや、アインさんが非常識とか悪いとかではなく、暴走し…
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