特別商品②
パラパラと手元の冊子をめくって確認する。この冊子はニフティが月に一度希望者に配っている冊子であり、新商品やキャンペーンの情報に、季節ごとのラインナップ変更などのお知らせ、オススメの商品などが記載されており買い物の際に参考になる作りになっている。
MKロイヤルに関しても、この冊子に情報を乗せて告知する予定だ。
「どうっすか?」
「うん。相変わらず文章も上手くて読んでて面白い。まぁ、若干紹介とかが大げさな気もするけど……」
「いやいや快人さん、こういうやつは多少オーバーなぐらいが丁度いいんですよ」
「そういうもんかな? まぁ、俺が見る限りはまったく問題ないし、カナーリスさんとかに最終確認してもらうよ」
俺の前で軽くドヤ顔を浮かべているのは、メモリーズで実体化した有紗であり、実は毎月の冊子は有紗が作成していた。
元々メモリーズの訓練も兼ねて毎日誰かしらを実体化させていたのだが、その際に有紗から本とか新聞を作りたいと要望を受けた。ジャーナリスト志望であり、記事を書いたりするのが好きな有紗の要望を叶えてあげたいとは思うのだが、現状はまだ俺の練度不足で長時間の実体化はできない。
どうしようかといろいろ相談した結果、ニフティの広報用の冊子を作ってもらうことになったわけだ。
「快人さん、約束通り給料代わりに記録魔法具の新型が出たら絶対すぐに買ってくださいよ」
「分かってるよ。けど、いまのそれが最近出たばっかの最新型だから、しばらくは新型は出なさそうだけどな」
「う~ん、まだデカいんすよねぇ……」
冊子には記録魔法具による写真なども掲載しており、有紗がカメラを欲しがっていることもあって、冊子作りの報酬として記録魔法具の新型が出た際はすぐに購入する約束をしている。
クロにも新型が出るときは教えて欲しいとお願いしているので、いま有紗が持っている映像魔法具もまだ世間にはあまり出回ってない最新型だ。
とはいえ、俺たちの居た世界のカメラと比べればまだまだ大きく、持ち運びができないとは言わないが、かなり大きいので大変だ。
「まぁ、この世界だと記録魔法具はまだまだ新技術だし、今後発展していけばもっと小さくなってくるだろ」
「ですね~まぁ、私も早くジャーナリストとしてカメラを持って取材に行きたいところですが……現状は時間制限の問題もありますからねぇ。まぁ、そっちに関しては、快人さんの成長に期待ですね」
「あはは……いちおう5分は伸びたんだけど……とりあえず当面の目標は1時間越えかな」
現在の俺のメモリーズの発動時間は20分ほどであり、最初よりは若干伸びたのだがまだまだ短い。ただ本当に特別なことはせずに、毎日使うだけで少しずつ使用可能時間が伸びているので、今後も続けていけばいずれは長時間でも実体化させることができるようになるだろう。
「おっと、体が透けてきましたね。そろそろ時間ですか……じゃ、快人さん、修正があるならまた明日教えてください」
「ああ、了解。ありがとうな、有紗」
「いえいえ、私も記事書けるのは楽しいですからね~では、また明日~」
笑顔で手を振る有紗に俺も手を振り返し、メモリーズを解除する。使用時間の制限はあるが、メモリーズを使うこと自体には結構慣れたので、疲労感は全然ない。
まぁ、逆に言えば効果時間は気力や体力とは関係ないので、本当に時間をかけて練度を上げるしかないということでもあるが……。
とりあえず、これでMKロイヤルの告知の準備はほぼ完了した。まぁ、告知とはいっても「こういう形で抽選しますね~」という紹介と、セットで付いてくるオリジナルデザインのカップとスプーンの紹介ぐらいだ。
初回に関してはすでに当選者も決まっている。まぁ、その人が購入しなければ再抽選になるのだが、財力的に考えてもまったく問題の無い人なので、たぶん購入するんじゃないかと思ってる。
まぁ、引いた時は少し意外だったというか、一瞬いつの間に買い物をしていたんだろう? と疑問に思ったが、よくよく考えてみればタブレット型魔法具での購入も対象なので、俺が知らないうちに買い物をしていても不思議ではない。
そんなことを考えながら、俺は部屋を出てカナーリスさんのところに向かった。
シリアス先輩「ふむ、当選者はまだ明かさない感じか……そして、これ、エリスが候補から消えたよな? 快人がニフティで買い物や食事をしていたのを知らない相手になるわけだから、クロ、アイン、ジュティア、カミリア、ロズミエル、エリアル、ティルタニア辺りも候補から外れたか……てっきり胃痛パンチかと思ったが……」
???「今回のはあくまで『購入する権利』の当選なので、例えばエリスさんが当たったとしても、購入を辞退して再抽選にしてしまえば胃痛を喰らうことは無いっていう逃げ道がありますからね……別の方法でぶん殴るんじゃないっすか?」
シリアス先輩「……ぶん殴るのは確定なのか……」