表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2147/2396

香織とオリビアとのデート㊱



 程なくして香織の店に辿り着いたふたりは、裏口に回って店内に入る。当たり前ではあるが、家主である香織が外出している間に店内に明かりなどはついておらず、真っ暗の状態だった。


「えっと……全体はいいかな、カウンターだけ明かりを付けるね」

「分かりました」


 行動としてはこれからハグをして終わりであり、それほど時間がかかるわけでもない。店内全てに明かりを付ける必要は無いと考え、香織はカウンター内の照明魔法具だけを付ける。

 そして快人の元に戻ってきて、薄暗い店内でやや緊張した面持ちで快人の正面に立った。


「えっと……それじゃあ、ハグしますね?」

「ど、どーんと来い……」


 とりあえず引き伸ばしても恥ずかしさが増すだけだと考えた快人がハグを提案し、香織も緊張しながらも頷く。快人は過去に恋人をハグしたことは何度もあるが、だからと言ってこのシチュエーションで緊張しないというわけでもない。

 とはいえ、完全にハグが初めての香織よりははるかにマシであり、リードはやはり快人が行うべきだろう。


 快人は緊張した表情で直立する香織に手を伸ばし、出来るだけ優しく包み込むように抱きしめた。


(ほ、ほあぁぁぁ……こ、これが、ハグ……密着度が凄いというか、お、思った以上にえっちというか……す、凄いなぁ……物凄く快人くんを傍に感じるよ)


 背中に感じる快人の腕の感触に、それ以上に快人の体に己の体が密着している状態。いまは緊張で神経が研ぎ澄まされていることもあって、感触がやけに鮮明に感じられた。

 そして、ここで再び快人と香織の間に認識のすれ違いが発生することとなった。快人としては、香織がかなり緊張していたこともあり軽く短時間でハグを済ませて離れようとしていたのだが……。


(あ、えっと、これ、私も抱き返すんだよね? こうして……背中に手を回して、うぉぉ……さらに密着して、これは、ちょっとヤバいなぁ……)


 丁度快人がそろそろ離れようと考えたタイミングで香織が快人の背に手を回したため、快人は離れるタイミングを見失う。

 そして香織の方もハグ自体が初めてということ、恋愛物の本などの知識などにより、ギュッと快人に強く密着するように抱き着いた。

 そうなってしまうと快人も判断に迷うところで、一生懸命というか……それなりに強く抱き着いてきている香織を見て、ここで中断するのは香織の意向に反するかと思い、香織の背に回していた手に少し力を込めて先程までよりしっかりと香織を抱きしめた。


(……うわぁ、これは、なんていうか、すごいえっちだよ……快人くんの体温とか凄く感じるし、滅茶苦茶ドキドキするし……だ、大丈夫かな? 私の心臓の音とか聞こえてないかな? あ~でも、恋愛漫画とかにもそういうシーンあったよ! 心臓の音が聞こえたらどうしようって、そっか、こんな感じの心境なんだ……でも、恥ずかしいだけじゃなくて、安心感も凄いというか……なんていうかその……気持ちいいかも)


 ハグの温もりは香織にとって心地よいものであり、口元に少しだけ笑みを浮かべて目を閉じ、快人とのハグを堪能していた。

 しかし、ほどなくして香織の頭にとある疑問が思い浮かぶ。


(……あれ? これ、いつまで続ければいいの? か、快人く~ん、これ、まだ続ける感じなのかな? ドキドキが凄くて、あんま長時間やってると頭が茹っちゃいそうなんだけど……)


 どちらかと言えば離れるタイミングを潰したのは香織の方なのだが、ハグの経験が浅い香織はどのタイミングで終了していいか分からず、快人の動きを待っている状態だった。

 そして快人の方も、香織が強く抱き着いている状態なので、とりあえず香織が満足するまで……すなわち香織の手の力が緩むまでは続けようと考えていた。


(な、なんか、少し落ち着いてくると恥ずかしさがどんどん増してくるというか……いまさら考えて私凄いことしてない!? ど、どこで離せばいいんだろう? か、顔を上げて快人くんの様子を見る? い、いや、いまこの感じで顔上げると、完全にキス待ちみたいな顔になっちゃわない? ど、どど、どうすれば……)


 時間経過によって強い緊張が落ち着いてくると、気恥ずかしさがどんどん増してきており、香織の顔はかなり赤くなっていた。

 そしてそのまましばらく離れるタイミングを失ったハグは続き……しばらくして、さすがに長く続け過ぎと感じた快人が回していた手を緩める。


「……香織さん?」

「はひぃ!?」

「あ、いや、えっと、そろそろ離れます?」

「そ、そそ、そうだね! な、なんかタイミング分からなくて、長くなっちゃったね!!」


 快人の提案でハグを止めて離れるが、香織は自分自身でも顔が真っ赤になっていることを自覚しており、まともに快人の顔が見えずに顔は俯き気味だ。

 幸いにも店内が薄暗いこともあって、茹でダコのようになっている顔は快人の位置からでは見えにくく、気付かれにくい状態だった。


「あ、ありがとうね! な、なんか、変なことに付き合わせちゃってごめんね!!」

「いえ、俺の方も離れるタイミングを逃しちゃって長くなっちゃいましたね。改めて今日は一日ありがとうございました」

「ううん、こっちのほうこそ、快人くんと一緒で凄く楽しかったよ。ま、また機会があったら一緒に遊びに行ったりしたいね」

「ええ、是非またどこかに遊びに行きましょう……それじゃあ、俺はそろそろ帰りますね」

「うん! ありがとう、またね!!」


 香織がともかく気恥ずかしくてたまらない状態であることを察し、快人は早めに話を切り上げ、簡単に別れの挨拶をしてから転移魔法具で去って行った。

 快人が完全に消えたのを確認してから、香織は真っ赤な顔のままで戸締りをしてカウンターの明かりを消し、やや急ぎ足で階段を上がって二階の寝室に向かった。


「うぁぁぁぁぁ……完全に思考が乙女になってた……は、恥ずかしぃよぉぉぉ……」


 そして、そのまま布団を被って恥ずかしさの余り呻きながら転がりまわっていた。




シリアス先輩「と、糖度たかぁ……滅茶苦茶青春してるじゃないか……これ、恋人になったりしたら、さらに……ひぇ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう付き合っちゃえよ\(°∀° )/
更新お疲れ様です!連続で読みました! 香織さんと快人さんが香織さんの店に入っていきそのままハグする流れになった! お互いタイミングで解散の流れであったが香織さんが塞いでしまうw 香織さんが最後まで甘…
香織さんの反応みてると、いかにアリスやリリアが恋愛雑魚キャラなのか際立つなー あの2人はそれが可愛い所だからいいんだけど 香織さんは恥ずかしがりすぎて動けないとか言う事もなく、いきなり合体しようとか押…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ