香織とオリビアとのデート㉞
残業で22時帰宅だったので今回は短めです。
レストランで食事を終えたことで、ひとまず今日のデートの日程は全て消化し終わったと言っていい。あとは帰るだけなのだが、帰りに関してはオリビアさんの転移魔法ですぐに戻れる。
友好都市のどこに転移するかという話になり、オリビアさんは最初香織さんを店に贈った後再度転移で大聖堂に戻ることを提案したのだが、香織さんが大聖堂から店までのんびり歩いて帰りたいので、大聖堂前で解散で大丈夫だと伝えたことにより、大聖堂前に転移してそこで解散することに決まった。
「それじゃあ、オリビアさん。今日は一日本当にありがとうございました」
「いえ、お礼を申し上げるのはこちらの方です。ミヤマカイト様の貴重な一日を共に過ごすことができ、光栄の極みでございました。もし、ミヤマカイト様にお許しいただけるなら、いつかまたこうした機会に巡り合わせていただけると幸せです」
「ええ、機会があれば是非また一緒に遊びに行きましょう」
「はい」
転移での移動は一瞬で終わり、大聖堂前で軽くオリビアさんに挨拶をする。俺の言葉にオリビアさんは穏やかながらどこか嬉しそうに見える表情で頷き、俺の前で軽く両手を合わせて数秒祈りを行った。
そして、そのあとで香織さんの方を向いて口を開く。
「ミズハラカオリも今日一日、ありがとうございました。貴女はまだこれから大きな行いが残っているので、すぐに気を休めることはできないとは思いますが、ミヤマカイト様の慈悲に深く感謝して実行してください」
「こちらこそ、ありがとうございました。楽しかったですよ……って、うん? え? 大きな行い?」
「ええ、貴女はこれから店に戻るのでしょう?」
「はい。えっと、まぁ、店が自宅ですからね」
「先に宣言した通り、そこでミヤマカイト様より抱擁をいただくかと思います。その際にはミヤマカイト様への深い感謝の気持ちを忘れないようにしてくださいね。ただ、私の経験からの忠告ですがあまりにも幸福感が強すぎて意識が飛んでしまう危険がありますので、相応の覚悟と強い意志を持って臨んでください」
「…………はえ?」
オリビアさんがどこか真剣な表情で告げた言葉に、香織さんは唖然と表情を浮かべる。たぶんだけど、香織さんの言った開店前の店とかでハグというのは、また後日機会があれば~という意味合いだったのだろうが、オリビアさんはそれをここで解散した後に香織さんの店で行うと思っているらしい。
「それでは、ミヤマカイト様、ミズハラカオリをよろしくお願いします」
「え? あ、はい」
「それでは、私はこれで失礼します。改めまして、本日のお付き合いに心よりの感謝を……」
「あ、あの、ちょっ、オリビア様……」
オリビアさんは微笑みながら軽く頭を下げた後で大聖堂の中に入っていき、この場には俺と香織さんが……なんとも言えない空気の中で取り残される形となった。
シリアス先輩「……あの、ちょっと? 夜に自宅兼店舗でふたりっきりでハグとか、もう恋人……それも付き合ってから結構経つようなのがやる行為なんですが……あの……」