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香織とオリビアとのデート㉚



 並んでベンチに座り夕日が沈む街並みを見る。赤レンガ造りの街並みは夕日に映えており、生活感がありつつもどこか不思議な雰囲気の光景であり、それほど長い時間ではないが快人たちは美しい絶景を目に焼き付けた。

 そして日が沈んで周囲が暗くなり、公園に設置された照明魔法具に光が灯ると、当然ではあるが街に戻って最後の予定であるレストランに向かう話になる。


「予約の時間まではまだ結構余裕がある感じですか?」

「はい。上る際以上に時間をかけたとしても問題なく、少しであれば道中の店舗などを見る余裕もあります……」

「……オリビアさん?」


 快人の返答に答えた後オリビアはなにかを考えるような表情を浮かべ、なんどか快人の顔を見る。なにか言いたいことがあるようですではあるが躊躇しているような、そんな雰囲気を感じ取った快人が声をかけると、オリビアは意を決したような表情で口を開く。


「……ミヤマカイト様。大変に無礼かつ不敬な行為ということは重々に承知の上で、ミヤマカイト様に叶えていただきたい願いがあります。後ほどいかような罰でもお受けいたしますので、どうかご慈悲を賜れればと……」

「うん? いや、そんな大げさな話にしなくても大丈夫ですよ。俺に出来ることであれば、いくらでも言ってください」


 オリビア側からなにかしらを快人に願い出るというのは非常に珍しく、快人も一瞬面くらったように首をかしげたが、そもそも基本的に人の良い快人が親しい相手からの願いを無下にすることは無い。

 驚きこそしたがオリビアの願いを叶えるのはまったく問題ないと微笑みながら、詳細を話すように促すとオリビアは深く頭を下げる。


「寛大なお心に感謝を……改めてミヤマカイト様への願いの詳細ですが、さきほど私が賜りましたお姫様抱っこという行為……その栄誉を、どうかミズハラカオリにもお与えいただけませんか?」

「……へ?」

「うぇっ!?」


 オリビアが告げた言葉は完全に予想外だったのか、快人も驚いた表情を浮かべていたが、それ以上に香織が驚愕していた。


(えぇぇぇ!? な、なんでここでいきなり私!? そんな話にはまったくなってないよね? オリビア様滅茶苦茶真剣な顔してるし……え? えぇ? なんでぇ?)


 なぜそんな話の展開になったのか困惑する香織だが、オリビアの表情は真剣そのものである。そしてオリビアは驚愕する香織に気付いたのか、香織の方を向いて少しだけ微笑みを浮かべる。


「……ミズハラカオリ、さきほど登りの際に貴女が私を気遣って提案してくれたことに、私は心から感謝しています。以前からたびたびお姫様抱っこという行為に憧れがあると口にしていたにも拘らず、己に臨むのではなく私を優先してくれた貴女の厚意。私を優先するあまり押し込めた貴女の願いを叶える一助になればと、そう思います」

「……は? え? あっ……」


 聖母のような穏やかな笑みを浮かべつつ告げるオリビアの言葉を聞いて、唖然としていた香織だったが……少ししてなにかを思い出したような表情を浮かべる。


(……あ、あぁ、言った。確かに、デートの相談とか受けてる時に「お姫様抱っことか憧れますね」とか「一度体験してみたいものです」とか、そんな話をした覚えがある!?)


 まず根本的な話としてオリビアは純粋無垢な性格であり、さきほどのお姫様抱っこに対して香織が提案したせいで恥ずかしい思いをしたなどというような悪感情は欠片も抱いていない。

 体力的に劣る自分を気遣いつつ、デートらしいことを行える機会を後押ししてくれた発言であると、心の底から感謝していた。

 だからこそ、オリビアにとっては極めて大きな行動……快人に対してお願いをするという行為を、香織のために一大決心で実行した。


「下りであれば、前回の勇者の丘の際も疲労こそすれど降りきることができましたので、今回もミヤマカイト様の手助けなくとも下までたどり着けると思います。なので、ミヤマカイト様さえかまわないのであれば、どうかミズハラカオリに慈悲をお与えください」

「……えっと、俺は問題ないですが……香織さんは?」

「……」


 戸惑いながら尋ねてくる快人に対して、香織はなんとも言えない表情を浮かべていた。正直に言ってしまえば、確かにお姫様抱っこに対する憧れはあるし、一度体験してみたいという思いもある。だがそれ以上に恥ずかしさが強いので、通常であれば遠慮していたはずだった。


 だがしかし、現在の香織は少々バツの悪い思いが胸の中にあった。というのも、登りの際にお姫様抱っこを提案した時、確かにオリビアを気遣ったりサポートするという気持ちもあったし、そちらの方が大きかったのは間違いない。間違いないのだが……香織がお姫様抱っこを間近で見たいとか、青春的な恋愛風景を近くで見たいとか、そんな己の欲望に起因した思いも多少は含まれていた。


 だがそんな香織の提案をオリビアは純粋すぎる思いでおけ止めており、善意100%の気持ちで同じ機会を香織にも与えてもらえるように快人にお願いしていた。

 そうなってしまうと、少なからず罪悪感というか提案に邪な感情を混ぜてしまったことが申し訳なく、心の底から己を気遣ってくれているオリビアの思いを無下にすることなどできるわけもない。


 香織はしばしの沈黙ののちに……呆れた様子で頷いた。




シリアス先輩「こういうところは若干アイシスにも似てるというか、本当に善意100%で本人にとっては滅茶苦茶覚悟が必要だったであろう、快人に対してお願いをするってことまでしてってなると……香織も拒否はできないか……くそっ!? つまり、お姫様抱っこ確定じゃねぇか!!」

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です!オリビアさんが香織さんにもお姫様抱っこの提案をされて香織さん自身も断り辛い内容と自身もまんざらでは無いので抱っこしそうな流れになったなw 次も楽しみに待ってます!
 オリビアさんが快人さんに頼み事、お茶に誘うだけであれだけ緊張していたのに……あぁ、香織さんのお姫様抱っこを頼むためか。  ふむ、香織さんの方は気遣って提案したのもあるけど、お姫様抱っこを間近で見た…
オリビアさん間違いなく世界的には超が沢山着くすごい人何だけどそろそろ香織は親友とかマブダチ名乗って良いんじゃねえかなぁ!?周りからしたら大分凄いぞやってる事だって教主とダブルデートしてるんだぞ
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