表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2133/2396

香織とオリビアとのデート㉒



 香織が思考を巡らせていたタイミングで、オリビアもまた目の前に見える文字に悩んでいた。


(……これは、どうするべきでしょうか? 少なくとも、私の想定には無かった事態です。ボートに乗って景色を見るという形式故、以前にミヤマカイト様と共に乗ったボートと似たような形になるのだろうと思い込んでいましたが、このような形式とは予想外でした。己の未熟さを思い知りますね)


 オリビアは事前にしっかりと計画を立てて行動するタイプであり、それは香織に見せた重厚な計画書からも伺い知ることができる。

 今回のボートでの観光に関しても事前に調べ、予約も行っていたが……唯一デートコースにおける船が、通常とは異なるものであるというのが誤算だった。


(肩を抱くという行為に関しては、参考文献などで知識は得ていますが……今回のデートの計画には織り込んでいません。肩を抱くことや抱擁といった肉体的接触の多い行為に関しては、数度のデートを繰り返したのちに発展するものであり、初めてのデートにおいて行うべきものではないと判断しました。それに仮に織り込むとしても、夕方に予定している景色のいい場所で夕陽を見るという工程の際に織り込む可能性が高い)


 演劇の際に行った恋人繋ぎに関しても事前に予定に組み込んでいたわけではないが、アレに関してはもしどこかしらで可能であれば行うべきと考えていたこともあり、事前にある程度のイメージは固めていた。

 しかし、今回のシチュエーションはオリビアの想定外であり、どう行動すべきかを悩んでいた。


(行為に順列を付ける意味はありませんが、肉体的接触という点だけをあげるなら抱擁よりは下……でしょうか? ですが、それでも未熟な私には強すぎる刺激となることは間違いないでしょう。抱擁であれだけ無様を晒したわけですし、ミヤマカイト様に肩を抱かれた場合、未熟な私はまた情けない姿を晒すことに……いえ、もちろん忌避感があるというわけではありません。ミヤマカイト様が私の肩を抱いて引き寄せ……引き寄せ……ま、また雑念が……落ち着きなさい、思い浮かべただけで無様を晒すなどあってはいけません)


 そもそもの問題として肩を抱くという行為自体は、快人が望むのであればオリビアはすぐに受け入れるだろう。彼女自身としても、そうなった場合は幸せに感じるのは間違いない。もちろんハグの時のように意識が彼方に飛んでしまう可能性も十分あり得るのだが、拒否というのはありえない。


(……いえ、そもそも私が思い悩むこと自体が間違いなのではないでしょうか? この場合における行動の決定権はミヤマカイト様にあります。ミヤマカイト様が肩を抱く行為を是とするのであればそれが正しいですし、いまはその時でないと判断されるのならそれが最善なのでしょう。そこに私の意見が介在する余地はありません。となれば、私が行うべきなのはミヤマカイト様が出された結論を受け入れること……)


 奇しくもオリビアは最終的に香織と似たような結論に達した。肩を抱くかどうかの判断は快人に委ねて、自分はただその決定を待つ……これは決して自分では判断できぬことを快人に丸投げした逃げの守りではない。快人の出す答えを全て余すことなく受け入れるという、絶対的な信仰心があるからこその待ちの姿勢であり、いわば攻めの守りである。

 そう自分自身にい聞かせつつ、オリビアは快人の決定を待つことにした。


(……違います。あくまで決定権はミヤマカイト様にあって、私の意見を介在させるべきではないという判断によるものなのです。私の心に淡い期待のような感情があるのは、あまりにも浅ましい愚かな思考であり、心の中で肩を抱かれることを期待しているなどというのは……などというのは……心の中であろうと、ミヤマカイト様の関わる事態に虚偽を思い浮かべるわけにはいきませんので、そういった気持ちが僅かながらでもあるというのは否定しません。それに関しては後の荒行を持って己を戒めるとして、いまは静かにミヤマカイト様の判断を待ちましょう)


 こうして、香織とオリビアが共に待ちの姿勢となったことで、必然的にというべきか……肩を抱くか否かの決定権は快人に委ねられる形となった。

 そして委ねられた方の快人はというと……こちらもこちらで、そこそこ困っていた。


(……え? ど、どうしよう? 正直さすがに書いてあるからと言って肩を抱いたりってのはやりすぎだろって思ったし、無視するつもりだったけど……なんか、オリビアさんと香織さんから期待するような感情が伝わってくるんだけど……え? これ、やるべきなのか?)


 そう、快人は当初書かれているオススメの文字を読んだ時点では、さすがに恋人同士というわけでもないふたりの肩を抱いたりというのもおかしいし、オリビアが先程のようにテンパったりする可能性もあるので、とりあえず普通に景色を楽しもうと考えていた。


 だが、快人の持つ感応魔法が……香織とオリビアの、淡い期待のような感情を読み取った結果、判断に迷う事態になっていた。

 これが大きな期待のような感情であれば、まだ判断しやすかったのかもしれないが……あくまで伝わってくる期待の感情は大きくない。大きくはないが、間違いなく期待する思いは伝わってくるので、どうするべきか頭を悩ませることになっていた。




シリアス先輩「待て、快人! さすがに早すぎる、そこはステイ、ステイだ!!」

???「シリアス先輩がそういうってことは……」

シリアス先輩「いやな察し方しないでくれる!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 前回での香織さんは快人さんになら強引にされるのは嫌じゃないけど、確認とかとられると恥ずかしすぎるから拒否する感じで待機状態か。  オリビアさんはいつも通りに予想外の展開に動揺しているけど、最終的な…
誰よりも先輩がフラグを立てるのはそういう星の元に産まれたからだね
カイトくん ごーっ シリアス先輩がフラグを立てた。これは乗るっきゃないでしょこの砂糖ウェーブに!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ